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東北大など、2億1500万年前の地層から巨大隕石衝突の証拠を発見

2012-11-12

2億1500万年前の地層から巨大隕石衝突の証拠を発見
〜隕石衝突と生物大量絶滅の関連性の解明に期待〜


◎共同発表者の氏名(所属)
 尾上哲治・佐藤峰南・根建心具(鹿児島大学
 中村智樹(東北大学)
 野口高明(茨城大学)
 日高義浩・白井直樹・海老原充(首都大学東京
 大澤崇人・初川雄一・藤暢輔・小泉光生・原田秀郎(日本原子力研究開発機構)


◎研究成果のポイント
 ・三畳紀後期(約2億1500万年前)の地層から巨大隕石衝突の証拠を発見.
 ・この隕石衝突によりカナダのマニクアガンクレーターが形成.
 ・隕石衝突による絶滅は海洋プランクトンにはみられない.しかし北米の動植物は絶滅の影響を受けた可能性が高い.


◎研究成果の概要
 鹿児島大学,東北大学,茨城大学,首都大学東京,日本原子力研究開発機構の研究グループは,岐阜県坂祝(さかほぎ)町の木曽川河床から採取された岩石試料について,ICP質量分析装置(注1)や多重ガンマ線検出装置(注2)等を用いた分析を行いました.その結果,今から約2億1500万年前の三畳紀後期(注3)という時代に巨大な隕石衝突が起こった証拠を発見しました.
 三畳紀後期にはいくつかの生物絶滅イベントが知られています.その原因のひとつとして隕石衝突が考えられてきましたが,これまで世界各国の研究者が20年以上にわたり隕石衝突の証拠を探してきたのにも関わらず,今まで不明でした.本研究は隕石衝突の明らかな証拠を世界で初めて見いだしました.本成果は11月5日(日本時間11月6日午前5:00以降)の週に米国科学アカデミー紀要(オンライン版)にて発表されます.


◎研究の背景
 三畳紀後期という時代には,幾度かの生物絶滅イベントが知られています.従来の研究では,恐竜の絶滅で有名な白亜紀/古第三紀境界の隕石衝突イベントのように,三畳紀後期の絶滅イベントもまた隕石衝突に関連性があるのではないかと考えられてきました.しかし,これまで隕石衝突により形成された地層であるイジェクタ層(注4)は,海底で堆積した化石を含む地層からみつかっていません.そのため隕石衝突と絶滅の関連性について議論することができませんでした.


◎研究の経緯・手法
 研究グループは,三畳紀後期の隕石衝突の証拠を探す目的で2009年4月に研究を始めました.研究対象は,岐阜県坂祝町の木曽川河床にみられるチャート(注5)という岩石です.2010年には,チャートの間に挟まれた粘土層(図1)から,隕石衝突により形成されたと考えられる直径1mm以下のスフェルール(図2)とよばれる球状粒子を発見しました.この粒子については,隕石衝突に由来する物質であるかどうかを確かめるために,放射光X線回折分析(注6)や,電子線マイクロアナライザ(注7)などの機器分析を行いました.さらに粘土層については,地球外物質の混入を調べる目的で,ICP質量分析装置や多重ガンマ線分析装置を用いて詳細な元素分析を行ないました.


◎研究の成果
 元素分析の結果から,地球表層には一般に極めて微量にしか存在しない白金族元素(注8)が,岐阜県坂祝町の粘土層中に異常に高い濃度で含まれることが明らかになりました(図3).これは地球上の火山活動などのプロセスでは説明できないほど過剰なものです.隕石との元素濃度の比較から,粘土層に含まれる白金族元素は巨大な隕石の衝突によりもたらされたものと結論づけられました.また粘土岩に含まれるスフェルールには,白亜紀/古第三紀境界からもみつかっている「ニッケルに富むマグネタイト」と呼ばれる鉱物が含まれていました.これも隕石衝突に起源をもつ粒子であると考えられます.
 チャートには,大きさ1mm以下の微小な化石(放散虫とコノドント)が含まれています.これらの微化石が示す年代から,この隕石衝突が今から約2億1500万年前の三畳紀後期に起こったことが明らかになりました.この時期に形成された巨大なクレーターとしてカナダケベック州マニクアガンクレーター(図4)が知られています.みつかったイジェクタ層はこのクレーター由来の堆積物と考えられます.
 また微化石の検討から,海洋プランクトンの多くの種が,この隕石衝突イベントを生き延びたことが明らかになりました.しかし同時期の北米の地層からは,アンモナイトや陸上の動植物の絶滅が認められます.これらは白亜紀/古第三紀境界とは質的に異なる絶滅パターンと考えられ、地球史における隕石衝突と生物の絶滅の多様性を示唆するものです.


◎今後の展開
 今回の研究では,三畳紀後期に起こった隕石衝突が北米の動植物の絶滅の原因となった可能性を示唆していますが,海洋プランクトンはその影響を受けず多くの種が生き延びたことを明らかにしました.そこで,今後はこの隕石衝突によりどのような生物が絶滅の影響を受けたのか(絶滅の選択性)について研究を行なう予定です.そのため,世界各地の三畳紀後期の地層から同様のイジェクタ層を探索します.そして,隕石衝突が地球環境に与えた影響(例えば寒冷化や酸性雨など)についても,地球化学的な視点から研究を発展させていく予定です.


◎発表論文の概要
 論文名:Deep−sea record of impact apparently unrelated to mass extinction in the Late Triassic
 著者名:Tetsuji Onoue, Honami Sato, Tomoki Nakamura, Takaaki Noguchi, Yoshihiro Hidaka,Naoki Shirai, Mitsuru Ebihara, Takahito Osawa, Yuichi Hatsukawa, Yosuke Toh,Mitsuo Koizumi, Hideo Harada, Michael J. Orchard and Munetomo Nedachi
 雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
 公表日時:2012年11月5日の週(オンライン先行出版)


※用語解説・図表などは、添付の関連資料「参考資料」を参照

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