イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

パナソニック、タイミングデバイスの小型化・低消費電力化に貢献する低電圧駆動MEMS共振器を開発

2010-12-11

タイミングデバイスの小型化・低消費電力化に貢献

業界最高※Q値、低電圧駆動MEMS共振器を開発
※2010年12月7日現在、当社調べ


【要 旨】
 パナソニック株式会社はimec(ベルギー)[1]との共同開発により、振動部からのエネルギー損失が少ないねじり振動モード[2]で振動する単結晶シリコン(Si)の三角柱形状の振動部と、これをシリコンゲルマニウム(SiGe)薄膜で真空封止するウエハレベルパッケージ技術を開発することにより、業界最高Q値[3]、低電圧駆動を可能とするMEMS[4]共振器を実現しました。


【効 果】
 本技術は、家電機器や車載機器など様々な機器で使用されるタイミングデバイスの小型化、低消費電力化に貢献します。将来的には、さらに厳しい周波数安定度が要求される通信機器用途や、共振周波数変化を利用した高感度力学量センサなどへの展開が期待できます。


【特 長】
 今回開発したMEMS共振器技術は、以下の特長を有しています。

 単結晶Siの異方性エッチング[5]により形成した三角柱形状の振動部と、ねじりモーメントを効率的に与える独自の電極配置、振動エネルギー損失が小さいねじり振動モードを採用することで、共振周波数20MHz帯において業界最高のQ値220,000のMEMS共振器を実現しています。チップサイズは0.4mm×0.4mmまで小型化が可能です。また、振動部と電極とのギャップを130nmまで狭小化することで、1.8Vでの低電圧駆動が可能となり、発振回路ICで従来必要であった昇圧回路が不要となります。
 低温プロセスに対応したSiGe薄膜を用いたウエハレベル薄膜真空パッケージ技術により、振動部の機械的振動が阻害されないように形成された空洞部内の圧力を10Pa以下で真空保持し、−40℃〜+140℃の広い温度範囲で安定した共振器特性を実現しています。また、空洞部サイズを極小化することで、4μm厚さのSiGe薄膜で10MPaの耐圧性を実現し、樹脂モールド工法にも対応することが可能です。

【従来例】
 MEMS共振器は、水晶振動子に比べCMOSプロセスとの親和性が高く、小型化が実現できますが、Q値が小さく、弾性振動を励振するための駆動電圧が高いといった課題がありました。


【特 許】
 国内 13件、外国 5件(出願中含む)

【備 考】
 本開発の一部は、2010年12月6日に米国 サンフランシスコで開催のIEDM 2010で発表いたしました。


【特長の詳細説明】

1.ねじり振動モードMEMS共振器
 ねじり振動モードは、振動部の両端が固定され中央部に振動が集中し振動エネルギー損失が小さいため、高いQ値を実現することができます。本技術では、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いた単結晶Siの異方性エッチングにより形成された高さ3μm、長さ約100μmの三角柱形状の振動部と、一定のギャップを介して振動部の三角柱斜面に沿って配置された多結晶Siからなる電極とによりMEMS共振器を構成しています。ねじりモーメントが最大となるように励振電極の高さを振動部高さの1/2に設定することで、従来にない高いQ値(220,000、f・Q積は約4.3×1012Hz、当社従来比2倍)を実現できます。また、振動部と電極とのギャップを130nmまで狭小化することで低電圧(1.8V、当社従来比1/4)での駆動を実現できます。

2.薄膜真空パッケージ
 MEMS共振器を効率よく振動させるには、空洞部を真空状態に保持する必要があります。本技術では、460℃以下の低温プロセスに対応したSiGe薄膜を用いたウエハレベル薄膜真空パッケージ技術により、空洞部の圧力を真空保持しています。気相フッ酸(HF)により酸化膜犠牲層をエッチングした後、アルミニウム(Al)薄膜により開口部が封止されるため、空洞部内をAl成膜時の雰囲気である10Pa以下で真空保持することが可能で、真空封止されたMEMS共振器は、−40℃から+140℃までの広い温度範囲において安定した共振器特性を実現しています。また、空洞部サイズを極小化することで、4μm厚さのSiGe薄膜パッケージで10MPaの耐圧性を実現し、半導体チップの実装で広く使用される樹脂モールド工法にも対応することができます。なお、薄膜真空パッケージはimecとの共同開発による成果です。


【用語の説明】

[1]imec:
 ナノエレクトロニクス研究開発に関する世界有数のコンソーシアム。本部所在地はベルギー フランダース州 ルーベン市、研究スタッフは約1800人。

[2]ねじり振動モード:
 両持ち梁の振動部中央部がねじれるように変位する振動モードで、固定端からの振動エネルギーの損失が小さいため高いQ値を実現できます。

[3]Q値:
 共振の尖鋭度を示す共振器の性能指標の一つで、Q値が大きいほど振動が安定します。

[4]MEMS(Micro Electro Mechanical System):
 Siを微細加工することにより、微小な可動部を形成し、種々の機能を実現するデバイス、システム。

[5]異方性エッチング
 単結晶の特定の結晶面に対してエッチングが進まないようにする手法です。


【図】ねじり振動モードの模式図とMEMS共振器の断面構造
 ※添付の関連資料を参照

この記事に関連するキーワード

ゲルマニウム アンモニウム エッチング ベルギー 高Q

Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版