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慶大、マウスの皮膚を温めると紫外線によるシワが防げることを発見

2012-08-11

マウスの皮膚を温めると紫外線によるシワが防げることを発見



 慶應義塾大学薬学部の水島徹教授らは、慶應義塾大学熊本大学名古屋大学、(株)再春館製薬所の共同研究により、マウスの皮膚をお湯につけることでシワが防げることを発見しました。またこの仕組みを解析し、熱によって体内で増える熱ショックタンパク質70(HSP70)が重要な役割を果たしていることを発見しました。この成果は、皮膚科学の分野で最も権威のある米国科学雑誌Journal of Investigative Dermatologyに掲載されるとともに、9月19日からイタリアで開催される、欧州研究皮膚科学会で発表されます。

<研究の背景>
 シミと並んでお肌の主な悩みになっているシワの原因は、皮膚にあるコラーゲン層の減少、劣化です。肌のクッションの役割を果たしているのがコラーゲン層で、クッションが薄くなったり、弾力がなくなったりするとシワが出来ると考えれば理解しやすいと思います。シワの最大の原因は紫外線で、コラーゲンの質を劣化させたり、コラーゲンの生産を減らしたり、コラーゲンを分解する酵素を増やしたりすることでシワを起こします。
 一方、熱ショックタンパク質(HSP)は細胞が熱などのストレスを受けると細胞の中で作られるタンパク質です。熱以外にも、毒物や紫外線など様々なストレスを受けると増え、細胞をストレスに強くすることが知られています。HSPには様々な種類がありますが、HSP70は細胞を保護する作用の最も強いHSPとして注目されています。研究グループでは以前から、皮膚におけるHSP70の働きを研究し、紫外線による皮膚の傷害を抑えたり、紫外線によるシミ(メラニンの過剰な生産)を抑えたりすることを発見してきました。この結果は、HSP70を増やす物質が理想的な抗シミ化粧品になることを示しています(メラニンは紫外線から皮膚を守る働きをしているため、単にメラニンの生産を抑えるだけの抗シミ化粧品は紫外線による皮膚傷害を悪化させてしまいます)。実際に研究グループでは、HSP70を増やす天然物を検索し、ヤバツイやアルニカという植物の成分が安全にHSP70を増やすことを発見し、これらを配合した化粧品を再春館製薬所から発売しています。一方、これまでHSPとシワに関しては全く研究されていませんでしたが、今回研究を行い、以下の成果を挙げました。

<今回の研究成果>
 まずマウスの皮膚を42度のお湯に5分間つけると、HSP70などのHSPが増えることを発見しました。次に、42度のお湯に5分間つけてHSPを増やした後に紫外線を当てるという処理を10週間継続しシワの形成を調べました。37度のお湯に5分間つけた対照グループのマウスでははっきりとしたシワが出来ましたが、42度で温熱処理をしてから紫外線を当てたグループではシワがほとんど出来ませんでした。HSP70を常に生産している遺伝子改変マウスでも同様のシワの抑制が見られました。この結果は、HSP70が紫外線によるシワを防ぐことを示しています。またこのメカニズムを検討したところ、HSP70がコラーゲンを分解するタンパク質を減らすことを発見しました。なお、HSPには、コラーゲンの生産を助け、コラーゲンの質を高めるHSP47というタンパク質もあります。研究グループでは、温熱によるシワの抑制には、HSP70だけでなく、HSP47も働いていると考え、現在研究を進めています。
 42度というのは、ちょうど熱めのお風呂の温度です。人間でも紫外線を浴びる前にお風呂に入ると、マウスと同様にシワを防ぐことができる可能性があり、今後の応用研究が期待されます。


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