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理化学研究所、植物の生命活動に必須なポリアミンの輸送体「RMV1タンパク質」を発見

2012-04-09

植物の生命活動に必須なポリアミンの輸送体を発見
−謎だったポリアミン輸送体は「RMV1タンパク質」と判明−



本研究成果のポイント
 ○理研BRCが保有するシロイヌナズナ野生系統と交雑種を用いて7カ月で遺伝子を同定
 ○細胞膜に局在するRMV1タンパク質の増加で、ポリアミンの取り込みが増加
 ○ポリアミン濃度の調節が、ストレス耐性の付与や作物の増産につながると期待


 理化学研究所野依良治理事長)は、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、生命活動に必須な生理活性物質ポリアミン(※1)の輸送体がRMV1タンパク質であることを発見しました。これは理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)機能開発研究グループの篠崎一雄グループディレクター、藤田美紀研究員と、国際農林水産業研究センターの藤田泰成主任研究員ら、東京大学大学院農学生命科学研究科の篠崎和子教授ら、理研バイオリソースセンター(BRC)実験植物開発室の井内聖専任研究員、小林佑理子訪問研究員(現岐阜大学)らによる研究成果です。
 ポリアミンは、ウイルスからヒトに至るまで、あらゆる生物に含まれる生理活性物質です。哺乳動物では、膵臓(すいぞう)・乳腺細胞やがん細胞など、分泌や増殖活性の高い細胞に多く存在しています。植物では、形態形成や花芽の分化、老化抑制、ストレス応答などの生理機能に関わることが知られています。しかし、その作用機構は不明な点が多く、特に輸送メカニズムに関する知見はほとんど得られていません。
 研究グループは、外部ストレスを受けて細胞内に過剰な活性酸素を生じる酸化ストレス(※2)に対して、植物がどう防御するのかを明らかにするため、除草剤の成分で酸化ストレス誘導薬剤であるメチルビオロゲン(※3)の関連遺伝子を探索してきました。シロイヌナズナ野生系統(※4)25系統の薬剤耐性を野生型と比較した結果、関連遺伝子RMV1を同定しました。RMV1遺伝子を破壊するとメチルビオロゲン吸収能を失ったことから、RMV1タンパク質はメチルビオロゲンの輸送体であることを突き止めました。さらに、メチルビオロゲンとポリアミンの構造が似ていることに着目し、RMV1遺伝子を過剰発現させてポリアミンの吸収を調べたところ、約3倍のポリアミンが取り込まれたことから、RMV1タンパク質がポリアミン輸送体であると分かりました。これは、理研バイオリソースセンターが保有する野生系統とその交雑種を用いたアソシエーション解析(関連解析)(※5)の結果で、従来法では何年もかかる原因遺伝子の特定に7カ月という短期間で成功しました。
 今後ポリアミン研究が発展し、人為的に細胞内ポリアミン濃度を調節できると、ストレス耐性の付与や作物の増産などが可能になると期待できます。
 本研究成果の一部は、生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)イノベーション創出基礎的研究推進事業の課題の1つ「植物の水利用効率に関わるストレス感知機構解明と分子育種への応用」として行われ、米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA』オンライン版に4月2日の週に掲載されます。


※1:ポリアミン
 アミノ基が2つ以上結合した直鎖型の脂肪族炭化水素の総称。高塩基性の低分子物質で、ウイルスからヒトに至るまであらゆる生物に存在する。核酸やタンパク質の合成に関与する成長因子としての機能をはじめ、さまざまな生理活性があることが報告されている。動植物に存在する主なポリアミンとして、スペルミン、スペルミジン、プトレスシンが知られている。

※2:酸化ストレス
 細胞内に過剰に生じた活性酸素種によって、細胞がダメージを受ける有害な作用のこと。植物においては強光や乾燥、低温などの劣悪な環境条件や有害金属の蓄積などさまざまな要因により生じる。

※3:メチルビオロゲン
 細胞内で活性酸素種を発生させ、酸化ストレスを引き起こす薬剤。細胞にダメージを与え、成長を抑制する作用を持つ。除草剤パラコートなどの主成分。

※4:シロイヌナズナ野生系統
 モデル植物であるシロイヌナズナの中で、最もよく研究に使われている野生系統はCol−0系統だが、シロイヌナズナにはこのほかに数千にも及ぶ野生系統が世界各地で単離されており、それぞれの生育してきた環境などの影響で、多様な遺伝型や表現型を示す。リソースの整備と遺伝子配列や形質情報の充実により、さまざまな系統が研究材料として広く用いられている。

※5:アソシエーション解析(関連解析)
 自然集団の中に見いだされる表現型などの形質変異とゲノムの塩基配列上の変異との対応の程度から、形質変異に関与する遺伝的変異を予測する解析方法。


 ※以下、リリースの詳細、補足説明は添付の関連資料を参照

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