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住友大阪セメント、地盤沈下や液状化による地盤空洞に充填できる軽量充填材を販売
震災・液状化による空洞充填に最適な新しい軽量充填材
『フィルコンライト All in One プレミクス』を販売開始
住友大阪セメント株式会社(社長:関根福一、本社:東京都千代田区)は、地盤沈下、液状化等によって生じた地盤空洞等を簡易に充填できる新しい軽量充填材『フィルコンライト All in One プレミクス』の販売を開始しました。
【新製品の概要】
1)震災や液状化による道路・構造物下の空洞充填に用いる注入材料である。
2)特に,点在する小規模=数m3程度の空洞充填に抜群の効率と機動性を発揮する。
3)『水と混ぜるだけの簡単エアモルタル』で,発泡機等の従来工法で要したプラント設備が不要
4)数時間で硬化する速硬性材料で,早期開放,工期短縮が可能
5)比重0.6程度と軽量で,地盤や構造物に負荷(死荷重)がかからない
6)1m3あたり10kg/袋×28袋で,一般的注入材(25kg/袋×75袋)に比べ大幅に作業負担が少ない
【どのようなニーズに応えるか】
昨年3月11日に発生した東日本大震災は各地に大きな被害をもたらし,今なおその爪跡は多く残っています。地震による液状化や地盤変動で道路・構造物下に発生した空洞は,1箇所が数十〜数百m3の大規模空洞よりもずっと小規模,つまり1箇所数m3程度のものが幅広い地域に点在していることが特徴的であると当社では考えています。
従来の空洞充填では,支持地盤への荷重的負担を考慮し,軽量なエアモルタルが使用されてきました。その工事の大部分は一箇所あたり数十〜数千m3規模の充填量で,定置式プラントで製造し,ポンプで充填箇所まで圧送するという方式の『大規模プラント』です。
このような状況を踏まえると,空洞充填に軽量なエアモルタルを使いたいが,従来の大規模プラント方式では点在する小規模空洞の充填にはコスト・効率面で対応できない,もっと手軽で機動的にできる材料・施工方法は無いか?というニーズが現れることがわかります。当社では実際に被災地の充填現場からもこのような要請を受け,これにいち早く応えるべく開発を行いました。
『フィルコン』シリーズは当社の充填・注入材料の商標ブランドであり,今回”軽量”と”水と混ぜるだけの手軽さ”を表す”All in Oneプレミクス”という名称で上市に至ったものであります。
【開発のポイント】
●水と練り混ぜるだけのAll in Oneプレミクスにする
10kg/袋に対し水も10kgと分かり易い配合です。バケツとハンドミキサー,または高速グラウトミキサで2分間練り混ぜるだけで約30〜36Lの均質なエアモルタルが製造できます。
●気泡骨格を安定・保持するため速硬性にする
従来エアモルタルは発泡機という専用の機械からムース状の気泡を供給し,これをモルタルに混入するという方式です。これに対しAll in Oneプレミクスでは発泡剤をセメント粉末に予め混合し,これを攪拌することで”セメント+砂+水=モルタル”の混合と”モルタル+気泡”の混合を一度に行います。
この時,普通セメントのように硬化がゆっくり進む(日単位で硬化する)セメントだと気泡が抜けてしまい,安定した気泡骨格を保持できないため,エアモルタルになりません。そこで,当社独自の速硬性セメントを利用します。即ち気泡が抜ける前に固めてしまうことで,均質な気泡骨格を保持したエアモルタルを得ることができるのです。
またムース状気泡を添加するのではなく,攪拌によって気泡を生成させる,即ち『泡立てる』ことによってエアモルタルとするため,気泡量が一定にならないのではないか?という懸念があります。この課題に対しても,粉末と起泡剤のベストな組み合わせを見出すことによって,概ね0.6程度の比重を安定して得ることが可能となっています。
●軽量性と速硬性の相乗効果を発揮させる
(軽量性の相乗効果)
本製品を水と練り混ぜた時の比重は約0.6であり,一般的充填材の1/4です。軽量=粉体材料の量が少ないので充填材コストが下がり,輸送費も低減できます。また通常25kg/袋の一般的な充填用プレミクスモルタル(例:無収縮モルタル等)を水と練り混ぜると概ね13〜20Lの充填材が製造できますが,この製品の場合10kg/袋で30L以上の充填材が製造できるので,混練作業量が大幅に低減します。
(速硬性の相乗効果)
速く固まるということは工期短縮に繋がります。本製品の場合,約5時間で車道下の交通開放目安である100〜130kN/m2の一軸圧縮強さ(20℃)を発現し,施工当日に次工程に移行できる他,交通開放も早まるため,素早い復旧に寄与できます。
速く固まる性能を持つ一方で,注水から30分程度の可使時間=流動性を保つ時間も維持させており,ポンプ閉塞事故などの支障が出ないよう配慮された設計になっています。
【販売方針】
●被災地復旧への寄与
当社では昨年4月1日より『復旧・耐震プロジェクトチーム』を設置しており,被災地を管轄する東北ならびに東京支店と協力して現地の復旧営業を進めて参りました。本製品も,その営業活動の中から創出されたものです。本格的な復旧が始まった現在,プロジェクトと支店への増員を行い,本製品を戦略商品とした幅広い営業活動を展開し,被災地の復旧に寄与して参ります。
●被災地以外への販売
特に液状化による構造物下,背面空洞等への調査と対策意識の高まりがあり,本製品の上市後は関西・中国・九州地区からも問い合わせを頂く機会がありました。このため,当社では本製品を被災地に限らず全国的な視野から営業して行く計画です。また,小規模の流し込みによる地盤補強材料,例えば埋設構造物周囲への充填による地盤の補強・沈下防止等にも利用可能です。
●販売計画
本製品のメーカー希望価格についてはリリース当日にご報告致しますが,上市初年度であるH24度売上で約1億円/年の販売を見込んでいます。
【その他の情報】
●本製品はNEXCO様のFCB工法設計・施工要領(H19.1)における上部路床部規格1000kN/m2を発現するように設計されており,道路下空洞への充填も可能です。
●本製品の材料,設計技術,製法について特許出願済みです。
●本製品に関するカタログ,MSDS,規格表,動画説明等は以下の専門サイトに紹介されています。
http://29049.jp