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高輝度光科学研究センターなど、アンチモンがDVDの記録情報の書換えを加速することを解明

2012-03-24

アンチモンがDVDの記録情報の書換えを加速する!
−光ディスク材料開発において元素選択に新たな指針を開拓−(プレスリリース

<公開日>
 2012年03月19日

 ・BL02B1(単結晶構造解析)
 ・BL04B2(高エネルギーX線回折)

 高輝度光科学研究センター、理化学研究所、パナソニック株式会社の研究グループは、ハンガリー科学院、山形大学と共同で、光ディスクの記録情報が長期保存でき、かつ、高速で書換えができるミクロな仕組みの解明に取り組み、DVD材料を対象として、その“元素別の役割”を原子レベルで解明することに世界で初めて成功しました。


 高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所、パナソニック株式会社の研究グループは、ハンガリー科学院、山形大学と共同で、光ディスクの記録情報が長期保存でき、かつ、高速で書換えができるミクロな仕組みの解明に取り組み、DVD材料を対象として、その“元素別の役割”を原子レベルで解明することに世界で初めて成功しました。

 現在、デジタルハイビジョン放送やデジタルビデオカメラの高画質映像を記録し長期保存する記録媒体としてBlu−ray Disc(TM)(BD)の普及が進んでいます。一方、社会ではデジタルデータ量の爆発的増大が深刻な課題となりつつあり、より大容量・高速・長期保存を実現する記録材料を目指した開発が行われています。既に実用化されているDVD、BDでは、数10ナノ秒というごく短いレーザー照射により瞬時に記録相(状態)と消去相(状態)とが切り換わり情報の記録・書換えが行われます。一方、記録相は室温では数10年、或いはそれ以上、安定に保持されます。これまで、大型放射光施設SPring−8(※1)では、DVD、BDの光記録の際に原子配列が高速で変化する様子を明らかにすることに成功していました。しかし、記録情報を長期保存し、かつ書換え速度を高速化するために必要な、「元素が持つ固有の役割」については不明でした。各構成元素の役割が明らかになれば、性能向上や安価な材料での代替等、重要な元素選択の開発指針が得られます。

 本研究グループは、DVD、BDの記録材料を構成する母体材料に使われている「ゲルマニウム・アンチモン・テルル化合物(Ge2Sb2Te5(*1))」を構成するゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)の各元素の役割を、SPring−8の高輝度X線を用いてアンチモンとその周辺に注目した測定を行いました。次いで、得られたデータをフィンランドのタンペレ工科大学の研究グループが行ったコンピュータシミュレーション結果と対比して、3次元構造を可視化することに成功しました。その結果、ゲルマニウムとテルルの作るネットワーク構造が記録情報の長期保存を可能にしていることが分かりました。さらに、ゲルマニウムとテルルだけで構成される化合物「GeTe」よりもアンチモンを加えた「Ge2Sb2Te5」の方が、より高速に書換えることが可能な原因がアンチモンとテルルの作るネットワーク構造にあることを世界で初めて明らかにしました。

 *ゲルマニウム・アンチモン・テルル化合物の化学記号の正式表記は添付の関連資料を参照


 今回の成果により、DVD、BDなどに用いられる記録材料において、構成元素を選択し、元素別の原子配列をデザインする材料設計が可能となり、ポストBDを目指す高機能な記録材料・記録媒体の開発に寄与するものと期待されます。

 本研究成果は、JASRIの小原真司主幹研究員、尾原幸治協力研究員、理化学研究所の高田昌樹主任研究員、パナソニック株式会社の松永利之主任技師、山田昇博士らの研究グループによるもので、2012年3月16日に科学誌「Advanced Functional Materials」のオンライン速報版で公開されました。


(論文)
 "The roles of the Ge−Te core network and the Sb−Te pseudo network during rapid nucleation−dominated crystallization of amorphous Ge2Sb2Te5"
 アモルファスGe2Sb2Te5の結晶核支配型高速結晶化過程におけるGe−Te基幹ネットワークとSb−Te疑似ネットワークの役割)
  http://dx.doi.org/10.1002/adfm.201102940


 尾原幸治、Laszlo Temleitner(*2)、杉本邦久、小原真司、松永利之、Laszlo Pusztai、伊藤真義、大隅寛幸、児島理恵、山田昇、臼杵毅、藤原明比古、高田昌樹
 *2の人名の正式表記は添付の関連資料を参照


 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
  戦略的国際科学技術協力推進事業 日本−フィンランド研究交流
  研究領域:「機能性材料」
  研究課題名:大規模分子動力学シミュレーションと放射光X線を用いた高速相変化材料の構造解析および新規材料設計
  研究代表者:小原 真司(財団法人高輝度光科学研究センター 主幹研究員)
  研究期間:2009年4月〜2012年3月
 JSTはこの領域で、「機能性材料」分野における日本とフィンランドとの研究交流を強化することにより、革新的な科学技術につながる国際的な研究成果を実現することを目指しています。上記研究課題では大型放射光施設SPring−8の高輝度放射光X線回折実験と大規模分子動力学シミュレーションを用いて、高速相変化記憶材料の動作メカニズムを明らかにし、得られた知見を新規材料開発にフィードバックさせることに取り組んでいます。

  戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
  研究領域:「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」
  (研究総括:田中通義 東北大学 名誉教授)
  研究課題名:反応現象のX線ピンポイント構造計測
  研究代表者:高田 昌樹(理化学研究所 主任研究員)
  研究期間:2004年10月〜2010年3月
 JSTはこの領域で、物質や材料に関する科学技術の発展の原動力である新原理の探索、新現象の発見と解明に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指しています。上記研究課題では大型放射光施設SPring−8の高輝度放射光X線を用いた時分割構造ピンポイント計測技術の開発とその物質現象の解明に取り組んできました。

  科研費特別研究員奨励費(21・09813)
  研究課題名:DVDおよび高機能電池材料の局所構造解析
  研究代表者:小原 真司
  研究期間:2009年10月〜2011年9月


*以下、研究の詳細は添付の関連資料を参照

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