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東北大、血管内皮細胞での炎症反応を抑制することで老化を遅らせ寿命を伸ばすことに成功

2012-03-10

抗老化・長寿マウスの作製に成功
アンチエイジング療法に応用性〜



 東北大学大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンター・片桐秀樹教授、糖尿病代謝科・長谷川豊助教らのグループは、血管内皮細胞での炎症反応を抑制することにより、マウスの老化を遅らせ寿命を伸ばすことに成功しました。
 本研究成果は、米国専門誌Circulation誌(IF 14.4)(米国時間3月6日号)に掲載予定です。

 肥満になると、程度は軽いものの慢性的な炎症が持続することが知られています。このことが、インスリンの効きを悪くし(インスリン抵抗性)、糖尿病やメタボリックシンドロームの様々な病態につながると考えられています。さらに、昨年同グループにより、血管部位での炎症が動脈硬化の発症機序として重要であることが解明されました(*1)。そこで本研究では、血管の中でも、血液と接する一層を形成する血管内皮細胞に着目し、この細胞層でのみ炎症反応を起こりにくくしたマウスを作製しました。
 細胞が炎症反応を起こすときは、NFκB(*2)と呼ばれる転写因子が活性化され、炎症物質が産生されます。そこで、同グループでは、マウスの血管内皮細胞においてNFκBの活性化を起こしにくくするタンパクを発現させました。このマウスを肥満にしたところ、肥満に特徴的な慢性炎症は抑えられ、インスリン抵抗性も抑制されました。このことから、肥満の際の慢性炎症に、血管内皮細胞が重要な役割を果たしていることが明らかとなりました。
 血管内皮細胞における炎症抑制は、このような肥満の病態を改善しただけでなく、標準飼育(肥満させない)状況下においても大きな改善をもたらしました。このマウスは、老化の進展が抑制され、活発に活動しつつ寿命が有意に長くなりました。長寿に関係するとされてきた遺伝子サーチュインの発現も増強していました。本研究成果は、血管内皮細胞での炎症反応が、老化の進展や寿命の長さを規定していることを初めて証明したものであり、それを調節することにより、老化を防ぎ健康的に長寿となるアンチエイジング療法の開発につながることが期待されます。


<語句説明・参考>
*1:2011年8月2日東北大学大学院医学系研究科プレスリリース「動脈硬化の新たな分子機序を解明 ―心筋梗塞・脳梗塞などの予防・治療に応用性―」
 http://www.med.tohoku.ac.jp/index.php/article/show/id/1079

*2:NFκB(エヌエフカッパービー:nuclear factor−kappa B)転写因子として働くタンパク質複合体。ストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激により活性化され、炎症反応において中心的役割を果たすものの一つ。

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