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パナソニック、還流ダイオードを一体化したSiCパワートランジスタを開発

2011-12-22

インバータの小型化・省電力化に貢献
世界初※)還流ダイオードを一体化したSiCパワートランジスタを開発

 ※2011年12月19日現在、当社調べ。


【要旨】
 パナソニック株式会社は、高耐圧の次世代パワーデバイスとして期待されているSiC(炭化ケイ素)パワーデバイス[1]において、モータなどをインバータ[2]で駆動する場合、エネルギ放出のために必須であった外付けダイオード(還流ダイオード[3])を一体化したSiCパワートランジスタを開発しました。本開発により、SiCパワーデバイスインバータを構成するとき、部品点数を半減することができ、小型化、低コスト化が可能となります。


【効果】
 SiCパワーデバイスは高耐圧が要求される領域で使用され、機器の低消費電力化が可能でした。本開発により、従来構造のSiCパワートランジスタでは外付されていた還流ダイオードを、新構造のSiCパワートランジスタに一体化しました。これにより電気自動車(EV)や産業用機器など様々な機器で使用されるインバータの小型化を実現します。更に現在課題となっている高価なSiC基板の材料コストを半減し、低コスト化を加速します。


【特長】
 本開発は以下の特長を有しています。

 還流ダイオードをSiCパワートランジスタに一体化させることにより、部品点数およびサイズの半減が可能。


【内容】
 本技術開発は以下の新規要素技術により実現しました。

 (1)従来のSiCパワートランジスタの構造に、還流ダイオードの機能を実現する、極薄で高濃度の特殊な層(SiCエピタキシャル層[4])を追加し、逆方向電流の立上り電圧を世界最高レベルの0.5Vまで低電圧化する半導体成膜技術
 (2)パワートランジスタの特性を確保するように基板(ボディ領域[5])の濃度を最適化する半導体プロセス技術。


【従来例】
 従来のSiCパワートランジスタの構造では、逆方向の立上り電圧が2.5Vと高く、還流ダイオードを一体化することができなかった。


【特許】
 国内 20件、外国 14件(出願中含む)


【備考】
 本開発の一部は、2011年12月7日に米国 ワシントンD.C.で開催のIEDM2011で発表いたしました。


【内容の詳細説明】

(1)従来のSiCパワートランジスタの構造に、還流ダイオードの機能を実現する、極薄で高濃度の特殊な層(SiCエピタキシャル層[4])を追加し、逆方向電流の立上り電圧を世界最高レベルの0.5Vまで低電圧化する半導体成膜技術
 一般的にSiCパワートランジスタに内蔵している寄生ダイオードは電流の立上り電圧が約2.5Vと高く、外付けダイオード素子の機能を代替することはできません。我々は、従来からSiCパワートランジスタのチャネル層として開発してきた薄い高濃度エピタキシャル層の成長技術を発展させることで、約0.5Vの立上り電圧特性を有する逆方向電流をこのチャネル層に流せることを発見しました。これにより還流ダイオードの機能をパワートランジスタに一体化することが可能になりました。そして、通常インバータモジュールではパワートランジスタと外付けの還流ダイオードが一対で構成されますので、パワートランジスタに還流ダイオードの機能を一体化したことで部品点数が半減し、インバータモジュールのサイズが約半分に小型化されます。また、素子数を半減することで高価なSiC基板の材料コストが約半分になり、低コスト化が図れます。

(2)パワートランジスタの特性を確保するように基板(ボディ領域[5])の濃度を最適化する半導体プロセス技術。
 チャネル層に高濃度エピタキシャル層を適用することで逆方向電流の立上り電圧を下げることが可能になりますが、それだけではパワートランジスタの閾値電圧も下がってしまい、通常使用されるノーマリ・オフ[6]型のパワートランジスタを実現することが困難になります。
 我々は極薄・高濃度チャネル層と高濃度ボディ領域の最適な組合せ設計により、約2.8Vのトランジスタの閾値電圧[7]と約0.5Vの還流ダイオード立上り電圧が同時に得られるパワートランジスタを実現しました。具体的には、標準的な設計に比べチャネル層の濃度は約200倍の高濃度に、厚みは約1/3に薄膜化し、そしてボディ領域の濃度は約10倍の高濃度に設計しております。


【用語の説明】

[1]SiC(炭化ケイ素)パワーデバイス
 炭化ケイ素を材料とする半導体素子であって、高耐圧に使用される。
[2]インバータ
 直流を交流に変換する回路。モータの駆動などに広く使われている。
[3]還流ダイオード:
 モータなどをインバータで駆動する場合、誘導性負荷に蓄えられたエネルギによって発生する高電圧からトランジスタを守るためにエネルギを放出するダイオードであり、従来はSiCパワートランジスタに外付けされていました。
[4]SiCエピタキシャル層:
 原料ガスの反応によりSiC結晶を成長させて得られた層。
[5]ボディ領域:
 トランジスタにおいてチャネル層の下に位置し、チャネル層と逆導電型の領域。
[6]ノーマリ・オフ:
 トランジスタがオフ状態では電流が流れない。
[7]閾値電圧:
 トランジスタがオンする電圧。

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