イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

理化学研究所、モノマーを高度に立体制御した共重合体の合成に成功

2011-10-19

複数の異なるモノマーの精密共重合を希土類重合触媒の組み合わせで実現
−幅広い高性能高分子材料の開発に新しい道を拓く−


◇ポイント◇
 ●2つの異なるモノマーを高度に立体制御できる新触媒系の構築に成功
 ●スチレン、イソプレン、ブタジエンをそれぞれ立体制御した三元共重合体を初めて実現
 ●従来の触媒では合成困難な新しい高分子材料の開発に期待

 独立行政法人理化学研究所野依良治理事長)は、高分子材料を構成する基本単位物質(モノマー)であるスチレンとイソプレン、ブタジエンそれぞれに対して、高い選択性を示す2種類の希土類(※1)重合触媒とチェーンシャトリング(※2)試剤を組み合わせ、全てのモノマーを高度に立体制御した共重合体の合成に世界で初めて成功しました。これは理研基幹研究所(玉尾皓平所長)侯有機金属化学研究室の侯召民主任研究員、西浦正芳専任研究員、潘莉特別研究員、張坤玉特別研究員らによる研究成果です。

 高分子材料の性能は、その組成や立体構造に大きく依存します。従って、モノマーを多数つなげて高分子材料(ポリマー)を合成する(重合)には、立体構造を精密に制御することが極めて重要です。また、性質の異なる複数のモノマーの共重合によって得られる高分子材料は、単一のモノマーからできる材料にはない特異な複合機能を持つことが期待できます。例えば、硬質なポリマーであるシンジオタクチックポリスチレン(※3)と、柔軟な特性を利用してゴムなどによく利用されている、イソプレンやブタジエンを材料とした共役ジエンポリマー構造を有する共重合体を合成できると、硬軟両方の性質を兼ね備えた新たな機能性材料が期待できます。しかし、1つの触媒を用いて共重合させる従来法では、それぞれのモノマーであるスチレンとイソプレン、ブタジエンそれぞれを同時に立体制御することは困難でした。

 研究グループは、これら3つのモノマーそれぞれに対して高い立体選択性を示す2種類の触媒を組み合わせ、さらに2つの触媒間でポリマー成長鎖を自由に行き来させることができるチェーンシャトリング試剤を用いて、どのモノマーでも高度に立体制御された、シンジオタクチックポリスチレン、シス−1,4−ポリイソプレン(※4)、シス−1,4−ポリブタジエン(※5)構造を有する「三元共重合体」の合成に初めて成功しました。

 この成果は、性質の異なる複数のモノマーの共重合における立体制御に新しい手法を提供し、従来の触媒系では合成困難な新しい高分子材料の開発に貢献するものと期待できます。

 本研究成果は、ドイツの化学会誌『Angewandte Chemie International Edition』オンライン版に近日掲載されます。


1.背景
 プラスチックや合成ゴムに代表される高分子(ポリマー)材料は、私たちの身の回りで数多く使われています。それらの機能は構成単位物資(モノマー)の組成や立体構造に大きく依存します。従って、新たな機能を有する高分子材料を合成するため、現在でもモノマーの組成や立体構造を精密に制御できる触媒の研究が大変活発に行われています。特に、性質の異なる複数のモノマーを多数つなげて高分子材料を合成する(共重合)と、単一のモノマーからなる材料にはない特異な機械物性や物理物性を持たせることが期待できます。しかし、1つの触媒を用いて共重合させる従来の手法では、1つのモノマーの立体的配置を制御することは可能ですが、複数のモノマーの立体的配置を同時に制御することは非常に困難です。
 プラスチックの原材料としてよく利用されるスチレンの単独重合によって得られるポリマーのうち、立体的に制御されたシンジオタクチックポリスチレンは、結晶性が高く耐熱性に優れた硬質なポリマーです。一方、ゴムやタイヤの原材料として利用されるイソプレンやブタジエンからなるポリマーのうち、二重結合を軸として同じ側に2個の置換基が配列したポリマー(シス−1,4−ポリイソプレン、シス−1,4−ポリブタジエン)は、弾性に富んだ柔軟な高分子材料です。この硬軟両方の性質を兼ね備えた材料は、耐熱性やゴム弾性を有する新たな機能性材料として期待されていますが、スチレン、イソプレン、ブタジエンのそれぞれを同時に立体的に制御して共重合させることは難しく、その合成を可能にする触媒の開発が強く求められていました。
 2004年に研究グループは、スチレン重合に高いシンジオタクチック選択性を示し、シンジオタクチックポリスチレンを合成できる希土類重合触媒1を開発しました(図1、左)。また2009年には、より小さな配位子(有機化合物)を有し、イソプレンやブタジエンの重合に高いシス−1,4選択性を示す希土類重合触媒2を開発し(図1、中)、これがイソプレンやブタジエンの1,4−シス選択性重合触媒として機能することを見いだしました。しかし、これらの触媒単独では、スチレンとイソプレン、ブタジエンの立体構造を制御し共重合させることはできませんでした。そこで、触媒1と2を組み合わせてそれぞれの長所を生かし、3つのモノマーの立体構造を制御した共重合反応に挑みました。


2.研究手法と成果
 まず研究グループは、触媒1と触媒2を組み合わせて、スチレンとイソプレンの共重合を検討しました。しかしこの組み合わせでは、イソプレンの単独重合体とスチレン−イソプレン共重合体の混合物が得られただけでした。そこで、2つの触媒間でポリマー成長鎖を自由に行き来させることができるチェーンシャトリング試剤としてトリイソブチルアルミニウムを用いたところ、全てのモノマーにおいて立体構造を制御しながら共重合反応を進行させ、シンジオタクチックポリスチレンとシス−1,4−ポリイソプレン構造の両方を有する共重合体の合成に成功しました(図2、上)。また、この触媒系にスチレン、イソプレン、ブタジエンを反応させると、3つのモノマーが高度に立体的に制御された、シンジオタクチックポリスチレン、シス−1,4−ポリイソプレンおよびシス−1,4−ポリブタジエン構造を有する「三元共重合体」の合成に成功しました(図2、中)。さらに触媒1とイソプレン重合に高い3,4−選択性を示す触媒3(図1、右)を組み合わせて、スチレンとイソプレンを反応させたところ、シンジオタクチックポリスチレンと3,4−ポリイソプレン構造を有する共重合体も得られました(図2、下)。


3.今後の期待
 今回、活性や選択性の異なる2種類の触媒を組み合わせ、適切なチェーンシャトリング試剤を用いることにより、性質の異なる複数のモノマーの立体構造を制御した立体選択的な共重合を実現しました。今後、共重合体の立体選択的な合成手法としてさまざまな展開が期待できます。考え得るモノマーや触媒の組み合わせは多数あるため、新たな機能を有する高分子材料の開発に貢献すると期待できます。


原論文情報
 Li Pan, Kunyu Zhang, Masayoshi Nishiura, and Zhaomin Hou, “Chain Shuttling Polymerization at Two Different Scandium Sites: Regio−and Stereospecific “One−Pot” Block Copolymerization of Styrene, Isoprene and Butadiene.” Angewandte Chemie International Edition, 2011, doi:10.1002/anie.201104011.


※補足説明などは、添付の関連資料を参照

Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版