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NEC、漆器がもつ漆黒を実現した非食用植物原料のバイオプラスチックを開発

2016-08-23

NEC、日本の伝統工芸の漆器がもつ美しさを実現した非食用植物原料のバイオプラスチックを開発
〜最先端の環境材料で和の美「漆ブラック」を実現〜


 NECは、京都工芸繊維大学(学長 古山正雄)、日本を代表する漆芸家の下出祐太郎氏(下出蒔絵司所三代目・京都産業大学教授)と共同で、草や木など非食用植物を原料とした樹脂(セルロース樹脂、注1)を使い、国際的に高い評価を得ている伝統工芸の漆器(注2)がもつ独特の美しい漆黒(漆ブラック)を実現したバイオプラスチックを開発しました。

 現在、プラスチックにおいては、石油資源枯渇や食糧問題への対策から、原料に非食用の植物(わら・木材など)を利用するニーズが高まっています。NECはこれまで、電子機器などの耐久製品向けに、非食用植物を使ったセルロース系など独自のバイオプラスチック(NeCycle(R)、注3)の開発を進めてきました。今回、機能性に加え、装飾性(デザイン性)という新たな付加価値のあるバイオプラスチックを開発しました。

 今回開発したセルロースバイオプラスチックにおいて、着色性や光の反射性を調整する添加成分の配合技術を開発し、高級な漆器の深く艶のある漆ブラックと同等の光学特性(低明度や高光沢度など)を初めて実現しました。本プラスチックは、高い環境調和性と高度な装飾性を両立し、金型を使った通常のプラスチックの成形工程で生産できる様々な形をした製品の量産が可能です。

 NECは、今後、高級自動車の内装部材、装飾性を要する高級建材・電子機器などの耐久製品用途での利用を目指し、パートナー連携を進めていきます。

 NECは、「社会ソリューション事業」に注力しており、地球との共生に貢献する技術として、今後も、バイオプラスチックの研究をはじめとした環境対策技術の開発に取り組んでいきます。

<背景>
 現在、プラスチックにおいては、温暖化防止や石油資源枯渇対策のため、植物を原料にしたバイオプラスチックの量産化が進んでいます。NECはこれまで、とうもろこしなど植物由来のデンプンを原料としたポリ乳酸複合材の開発と製品展開を進めてきました。さらに、将来の食糧不足への懸念から、非食用の植物資源を使った新しいバイオプラスチックのニーズが高まっています。わらや木材など非食用植物の主成分を原料に使ったセルロース樹脂は、文具、玩具、生活用品など一部に利用されていますが、その利用拡大には、環境調和性以外にも、装飾性などの新たな付加価値となる機能の創出が求められています。NECではカシューナッツの殻など非食用植物成分を使ったセルロース系プラスチックの研究を行っていますが、環境調和性や耐久性(耐熱性や耐水性など)といった機能性に加え、この度、高度な装飾性の実現にも取り組みました。

 今回のセルロースバイオプラスチックでは、世界的に高い評価を得ている高級漆器がもつ高度な装飾性(漆ブラック)を実現し、従来の石油系プラスチックにはない独特な美しさ(和の美)と環境調和性を合わせもつプラスチックを初めて開発しました。

 本開発は、NEC、伝統みらい研究(伝統工芸品の科学的解析と先端材料技術への応用)で顕著な実績をもつ京都工芸繊維大学 伝統みらい教育研究センター(センター長 濱田泰以教授)、および日本を代表する漆芸家の下出祐太郎氏(注4)との共同で行いました。
 最初に、下出氏により、最高レベルの漆器が示す高度な光学特性の目標となる漆器モデル(透明樹脂板に漆を手作業で何度も塗布・研磨)が制作され、京都工芸繊維大学において、漆の光反射特性などの科学的解析が行われました。NECはこの評価・解析結果を基に、樹脂の添加成分の最適な配合技術を開発しました。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照

<漆ブラック・バイオプラスチックの特長>
1.安定供給性のある非食用の植物資源を主原料に利用
 非食用部分である草・わら・木材などの主成分であり、石油代替が可能なほど豊富に生産されているセルロースを原料にしたセルロース樹脂を使用。

2.高級漆器がもつ高度な光学特性(漆ブラック)を実現
 上記のセルロース樹脂に対して、着色性や光の反射性を調整する特有な添加成分として、黒色系着色成分や高屈折率の有機成分を混合し、これらを微粒子状に細かく分散させることで、高級な漆器が示す高度な光学特性(低い明度、鏡面レベルの高い光沢度など)を初めて達成。日本を代表する漆芸家の下出祐太郎氏が制作した最高レベルの漆器モデルと同等の深みや温かみ、艶のある漆特有の漆黒(漆ブラック)を実現。

3.通常のプラスチック成形工程により、様々な形状の製品の量産が可能
 従来の漆器では、基材の表面に漆を塗布し磨いて仕上げていたのに対して、本開発のバイオプラスチックは、通常のプラスチックのように加熱して溶融させ、金型(鏡面加工)の中に押し流して成形(射出成形)できる。これにより、様々な形状の製品の量産が可能。

 なお、NECは本技術を、第24回機械材料・材料加工技術講演会(M&P2016、11月25日から26日まで東京・早稲田大学で開催)で発表します。

 NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進ICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。


以上

 (注1)セルロース樹脂:草やわら、木材の主成分であり、人間の食用にも適さないセルロースを使った樹脂。セルロースに対して、酢酸、プロピオン酸等の短鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸などを結合させることで、加熱(200℃程度)によって溶融が可能なったもの。今回は、酢酸とプロピオン酸をセルロースに結合させた短鎖脂肪酸付加セルロース樹脂を使用。

 (注2)漆器:通常は、木製製品の表面に下地工程を施したのち、漆(天然の漆成分と着色剤の組成物)を塗布してから硬化させ、これを手作業で研磨する工程を繰り返して作製する。我が国独自の伝統工芸製品のため、小文字のjapanが蒔絵漆器を表すことがあったなど、国際的に高い評価を得ている。しかし、高級漆器になるほど製造工程に非常に手間がかかるため、工業製品としての量産は難しかった。

 (注3)NeCycle(R)(ニューサイクル):NECが主体となって開発したバイオプラスチック材料のブランド名。

 (注4)漆芸家 下出祐太郎氏:下出蒔絵司所三代目として,伊勢神宮式年遷宮御神宝平文や京都迎賓館の飾り台の蒔絵の制作、高台寺蒔絵の復元的制作などで知られる、我が国を代表する漆芸家。京都産業大学文化学部教授。大学での学術調査や後継者指導も積極的に行い,伝統的な技術を守るだけでなく,発展させる活動を行っている。特に最近は、外務省の依頼で、欧州諸国での講演や著名博物館での招待展示など、国際的にも広く活躍している。
 (*外務省HPでの紹介:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000158375.pdf


■本件に関するお客様からのお問い合わせ先
 NEC 研究企画本部 研究プロモーショングループ
 お問い合わせ
 https://contact.nec.com/http-jpn.nec.com_tb_142rd_4b126d/?fid=4b126d





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