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MIIAと日立、40%の低濃度バイオエタノールを用いた発電システムを試作

2016-02-11

40%の低濃度バイオエタノールを用いた発電システムを試作
40kW発電システムで45%の動力変換効率を確認


 一般社団法人宮古島新産業推進機構(代表理事:奥島 憲二/以下、MIIA)と、株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)は、40%の低濃度バイオエタノール燃料で発電する高効率な発電システムを試作しました。発電システムの発電機に搭載したエンジンは、排熱を利用して低濃度バイオエタノール燃料から水素を発生させ、低濃度バイオエタノールと水素を燃焼して動かすことで、動力変換効率(*1)を高めています。40kWの発電システムで実証実験を行ったところ、45%の動力変換効率が得られることを確認しました。また、燃料に用いたバイオエタノールは、40%と低濃度であり、危険物として扱う必要がなく、安全性を確保したものです。宮古島産のサトウキビ由来の廃糖蜜(*2)を原生酵母(*3)で発酵させた後、蒸留を行って効率的に製造し、従来方法(*4)で低濃度バイオエタノールを製造する場合に比べ、約40%のエネルギー削減を達成しています。
 今回の成果は、これまで主に自動車燃料に利用されてきたバイオエタノールの用途を発電分野へと広げるものです。今後CO2排出量の削減効果が大きな地域分散型発電の実用化をめざし、研究開発を進めていきます。

 CO2排出量削減に向けた再生可能エネルギー導入の動きが世界中で加速しています。サトウキビやトウモロコシを原料とするバイオエタノール燃料は、大気中のCO2総量に影響を与えないカーボンニュートラル(*5)な燃料であり、米国、ブラジル、欧州、東南アジア諸国等で自動車ガソリン混合用の燃料として利用されています。現在、自動車向けに使われているのは、農作物を発酵させた後に蒸留、脱水、濃縮の工程を繰り返して生成される濃度90%以上のバイオエタノール燃料です。今後、バイオエタノール燃料の用途を拡大していくためには、危険物として扱う必要がなく安全性を確保した60%未満の低濃度のバイオエタノールで稼働するエンジン技術と、燃料となる低濃度バイオエタノールを効率的に製造する技術の開発が求められていました。

 そこでMIIAと日立は、低濃度バイオエタノールを用いた発電システムの開発に取り組みました。本取り組みでは、日立が40%の低濃度バイオエタノールを用いて発電する高効率なエンジン技術を、MIIAがこれに用いるバイオエタノールを効率的に製造する技術を開発しました。
 開発した技術の特長は以下の通りです。


1. 低濃度エタノール燃料と排熱を利用した高効率なエンジン技術
 水を大量に含む低濃度バイオエタノールを350〜450℃の高温下で触媒(*6)と接触させて水素を発生させ、低濃度バイオエタノールと混合して燃焼させることで、効率的に動力を生み出すエンジン技術を開発しました。一般的に発電機に搭載されているエンジンでは、全体の約40%に相当する熱エネルギーが使われずに排気されています。日立はこの点に注目し、エンジンの排気管部に低濃度バイオエタノールエタノール水溶液)と触媒を反応させる反応室を設けました。反応室は排熱で高温環境となり、触媒と反応した低濃度バイオエタノールから効率的に水素を発生させることが可能となります。発生した水素と反応室を通過しない低濃度バイオエタノールを圧力の高い状態で燃焼させることで、濃度の低い燃料で高い動力変換効率が得られます。今回試作した40kW発電システムを用いて実証実験を行った結果、40%の濃度バイオエタノール燃料を用いて、45%の動力変換効率が得られることを確認しました。

2. 低濃度バイオエタノール燃料を省エネルギーで製造する技術
 塩類濃度が高く、発酵効率が低いとされてきた宮古島産サトウキビ由来の廃糖蜜を原料として、耐熱性、耐塩性、高活性を特長とする宮古島原生酵母(MY17)を利用し、発酵条件を最適化することにより、10g/Lh(1時間で、発酵液1リットル当たり10グラム)以上のバイオエタノールを生産可能な製造技術を開発しました。MY17を用いた発酵温度は40℃で、温度制御の冷却に冷凍機が不要となり、水道水を利用することが可能です。
 さらに、40%の濃度を得るのに適した蒸留プロセスとして、単蒸留(*7)に蒸気圧縮方式(*8)を採用することにより、従来のバイオエタノール製造で多く利用されてきた蒸留塔方式(*9)で低濃度バイオエタノールを製造する場合に比べて蒸留に要するエネルギーを約60%削減しました。
 発酵と蒸留プロセスそれぞれの効率化により、従来方法で低濃度バイオエタノールを製造する場合に比べ、約40%のエネルギーを削減できる見通しを得ました。

 今後は、CO2排出量の削減効果が大きい地域分散型発電をめざし、発電システムの大規模化をはじめ、バイオエタノール製造の残渣物を肥料や飼料として地元で利用するなど、循環型システム構築に向けた検討を推進します。

 なお、本研究開発の一部は、2014年に採択された環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(低濃度エタノール燃料使用高効率改質エンジン等革新的バイオエタノール利用技術の開発)」によるものです。


 ・低濃度バイオエタノール燃料製造から発電までの流れ

  ※参考資料は添付の関連資料を参照


 *1 動力変換効率:(エンジン出力)/(投入エタノールエネルギー)で定義
 *2 廃糖蜜:サトウキビなどの搾汁糖液から,砂糖を結晶させたあとに残る液
 *3 原生酵母:その土地の自然界に住んでいる品種改良していない酵母
 *4 従来方法:ここでは、蒸留塔方式をさす
 *5 カーボンニュートラル:排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である状態
 *6 触媒:特定の化学反応の反応速度を速める物質
 *7 蒸留酒等を製造する蒸留器
 *8 蒸気圧縮方式:蒸気を断熱状態で圧縮すると凝縮温度が上昇する原理を利用して、発生蒸気の圧力を上げ自己の蒸発に要する熱の熱源に用いる方式
 *9 蒸留塔方式:混合物を塔状の装置内で一度蒸発させ後に凝縮させることで、沸点の異なる成分を分離濃縮する方式


以上



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