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コンビと京都府立大、乳酸菌の免疫刺激の詳しいメカニズムを解明
コンビと京都府立大、乳酸菌の免疫刺激の詳しいメカニズムを解明
『免疫調節に重要な物質IL−12産生に関わる主要成分を特定』
〜乳酸菌由来RNAの核酸医療への応用や、有益な乳酸菌探索の進展に期待〜
コンビ株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役社長:五嶋啓伸)ファンクショナルフーズ事業部と京都府公立大学法人 京都府立大学(所在地:京都府京都市、理事長:荒巻禎一)生命環境科学研究科動物機能学研究室の井上亮講師、牛田一成教授らは、共同研究で、乳酸菌の免疫刺激によるインターロイキン12(IL−12)(※1)産生に関わる主要成分を明らかにしましたのでお知らせします。
乳酸菌による免疫刺激については、腸内で生きた乳酸菌が働くだけでなく、腸壁の免疫器官(パイエル版)から乳酸菌が体内組織に取り込まれて免疫系が刺激される作用が知られています。
我々は乳酸菌の免疫刺激において菌体成分そのものが重要であると考えて殺菌した乳酸菌に着目し、2011年にマウスで乳酸菌の核酸(DNA・RNA(※2))が免疫刺激に関与していることを報告しました(※3)。
今回の研究では、ヒトの免疫刺激における乳酸菌の核酸の寄与、そして核酸のなかでもどの分子が主要な成分であるかを、ヒトの免疫細胞を用いて検証しました。
その結果、乳酸菌の核酸がヒトの免疫刺激に深く関係していること、核酸のなかでも「一本鎖RNA」が主要な成分であることがわかり、さらに乳酸菌の一本鎖RNAが認識される受容体に関する知見も得ることができました。
この結果は乳酸菌と免疫の研究分野において大変意義のある成果であり、「乳酸菌由来RNA」の核酸医療への応用や、有益な新規乳酸菌の探索などに一層の進展が期待されます。
なお、本研究に関する論文は2015年6月17日(米国時間)に米国のオンライン学術誌「PLOS ONE」(プロスワン)に掲載され、本研究に関する特許も日米両国で取得しています。
・当該論文掲載URL:
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0129806
<研究概要>
コンビが独自に分離した乳酸菌Enterococcus faecalis EC−12の一本鎖RNA、二本鎖RNAまたはDNAを分解してヒト免疫細胞と共培養した結果、「一本鎖RNA」を分解した際に、細胞から産生される免疫物質IL−12の顕著な減少が認められました(図1)。
また、他の乳酸桿菌、ビフィズス菌(Lactobacillus gasseri JCM5344、Bifidobacterium breve JCM1192)に対しても同様の結果でした。
・図1は添付の関連資料を参照
この結果から乳酸菌内にある「一本鎖RNA」が乳酸菌の免疫刺激メカニズムの一端を担う主要な成分であることが示唆されました。
さらに、E.faecalis EC−12をモデル株として詳細なメカニズムを解析した結果、23S rRNAと16S rRNA(※4)が免疫刺激における主要な成分であり、ヒト免疫細胞のトル様受容体8(※5)を刺激することで免疫システムを活性化していることも解明しました。
※1:免疫細胞から分泌されるタンパク質でNK細胞やT細胞の増殖・分化に関わる。
※2:DNAは主に核の中で情報の蓄積・保存を担い、RNAはその情報からタンパク質を作るときの仲介役として働く。
※3:FEMS Immunol Med Microbiol.2011 Feb;61(1):94−102.
※4:リボソームを構成するRNAであり、RNAとしては生体内でもっとも大量に存在している。
※5:外敵の侵入を感知する受容体。トル様受容体8は一本鎖RNAを認識すると言われている。