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浜松ホトニクス、高出力半導体レーザーを8分の1の狭スペクトル幅で発振に成功

2015-04-21

LDを8分の1以下の狭いスペクトル幅で発振する
レーザー共振器の開発に、世界で初めて成功
全固体レーザーの出力を向上する励起用LD光源の開発に期待


 当社は、高出力半導体レーザー(以下LD)スタック2個を、ストライプミラーと単一面型VBG(Volume Bragg Grating)を用いて同時に波長制御し、8分の1以下の狭いスペクトル幅で発振する、安定したレーザー共振器の開発に世界で初めて成功しました。これにより、全固体レーザーの出力を向上する励起用LD光源の開発が期待できます。
 本成果は、応用物理学会誌の「アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express(APEX)Online)5月号」に掲載予定で、4月14日に電子版に掲載されました。また、4月23日(木)にパシフィコ横浜・会議センターで開催される、レーザーに関する国際会議「OPIC(OPTICS&PHOTONICS International Congress)2015」で口頭発表する予定です。

 *VBG:光誘起屈折率(フォトリフラクティブ)効果があるガラスの内部で、わずかな屈折率が周期的に変化し、特定の方向に光が強く回折する格子を形成した光学素子。特定の角度では強い光の反射が起こるが、その角度以外ではほとんど光を反射しない。LDの縦横モードを改善できるため、波長安定と狭帯域が実現する。


<開発技術の概要>
 本技術は、ストライプミラーと1枚の単一面型のVBGを用いた外部共振器構造を構成することにより、2個のLDスタックのスペクトル幅を0.31nm以下と8分の1以下まで狭くし、高効率で高強度を実現すると同時に、駆動電流や動作温度の影響を受けない安定動作を実現するものです。これは、LDバーのビームをストライプミラーに効率よく入射させるために、コリメートレンズをLDバーに接着するときに、ビームがストライプに対応して平行になるように微調整を行うことで実現しました。これにより、LDバーごとにVBGを取り付けることなく1枚のVBGでLDスタックに対応できるようになりました。
 当社は、2004年にLDバーにVBGを取り付ける技術を開発し特許化しました。本技術は、VBGを1枚の単一面型にすることで、製造コストの大幅な削減にも貢献します。また、ストライプミラーを用いて2個のLDスタックを合波することで出力も倍増します。
 これにより、全固体レーザーをはじめアルカリ蒸気レーザーなどのガスレーザーの励起用LD光源の高効率化と高性能化による大出力化が期待されます。当社は今後、発振波長885nm帯のLDスタックを開発することで、固体レーザーの高効率化と高性能化を図り、大出力レーザーの開発を進めます。
 実験では、共振に最適設計したVBGを用いて、LDの駆動電流が100Aの時、合波したLDスタックのスペクトル幅が2.59nmから0.31nm(8.4分の1)に減少し、出力効率は80.4%でピークパワーは581Wでした。また、スペクトル幅が狭くなったことにより、スペクトルパワー密度は279W/nmから1874W/nmまで6.7倍に増大しました。さらに、駆動電流の全範囲において、LDスタックの中心波長の変化はほとんど見られず、安定なスペクトルが得られました。


<開発の背景>
 近年、全固体レーザーに用いる励起用LDを高性能化する研究が盛んに行われています。
 LDは、励起用フラッシュランプに比べるとスペクトル幅が非常に狭いのが特長です。しかしながら、全固体レーザーの励起光源としては、スペクトル幅(2nm〜4nm)がまだ広いため、例えばNd:YAGレーザー(1064nm)では、吸収係数が高く、スペクトル帯域が広い808nm帯で励起していました。ところが、固体レーザーの発振波長と励起光源との差は、熱になってしまうため、効率を良くするために、固体レーザーの発振波長に近い波長帯の励起光源が求められています。Nd:YAGには、885nm帯にも吸収スペクトルがありますが、808nm帯と比べて吸収係数が低く、スペクトル帯域が狭いため、これまでは利用できていませんでした。
 また、高出力を得るには大電流を印加しますが、その大電流や動作温度により中心波長が長波長に移動してしまうため、効率が下がってしまうという難点がありました。
 これらを解決するため、LDバーにVBGを取り付けたLDスタック製品があり、スペクトル幅は0.7nmまで改善していました。しかしながら、LDバーごとに取り付けるため、部品点数が多く構造が複雑になり、製造コストが掛かっていました。
 レーザー核融合や10kWを超えるレーザー加工機では、この効率の改善がコスト低減や加工性能の改善に役立つことが分かってきて、にわかに研究開発が盛んになっていました。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照


<実験内容>
1、実験システムの構成
 LD素子のビームは、発光点から垂直方向に30°から40°、水平方向に7°から10°に広がってしまうため、通常は集光レンズを用いて制御することが必要となる。
 実験では、LDスタック1の各発光点から出射するビームの垂直方向の広がり角度をコリメートレンズで0.34°に、同2を0.44°にした。両スタックに配置された5段のLDバーそれぞれのビームを、コリメートレンズの接着位置を調整することでほぼ平行光に制御し、ストライプミラーにより合波して、広がり角度1.01°を得た。
 そのビームを1枚の単一面型VBGに照射し、LDビームがVBGで効率よく反射され、出射したLDバーに戻る外部共振器構造を形成した。


 ※実験結果などリリース詳細は添付の関連資料を参照




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