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富士フイルム、肌の保湿成分「ヒト型セラミド」の新機能を発見

2014-12-03

肌の保湿成分「ヒト型セラミド」の新機能を発見
肌のバリア機能(※1)を担う、角層細胞外壁のタンパク質産生を促進
「ヒト型セラミド」をナノ分散することにより、促進効果が2倍に向上することも確認


 富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、肌の保湿成分「ヒト型セラミド」に、肌のバリア機能を担う角層細胞の外壁(以下「CE」(※2))を形成するタンパク質の産生を促進する効果があることを発見しました。さらにこの効果は、「ヒト型セラミド」をナノ分散することで2倍に高まることを確認しました。また、肌内部でのセラミドの生成において重要な役割を担う、セラミド合成酵素の産生も促進することが分かりました。これらの結果から、「ヒト型セラミド」は角層細胞間のラメラ構造(※3)を補強するだけでなく、ラメラ構造形成の土台となるCEを強化し、さらに肌自身のセラミド産生力も高めることで、肌のバリア機能の改善に寄与することが期待されます。当社は今後、この結果を化粧品開発に応用していきます。
 なお、当社は、本日開催の「第75回SCCJ(日本化粧品技術者会)研究討論会」にて本研究成果を発表いたします。


<研究の背景>
 当社はこれまで、「ヒト型セラミド」を独自のナノテクノロジーにより世界最小(※4)20nmのサイズで高濃度に分散した「ヒト型ナノセラミド」を開発し、角層への浸透性を高め、肌のバリア機能を改善させることに成功してきました。また、セラミドは角層細胞間脂質成分としてラメラ構造を形成するだけでなく、細胞に働きかけ、細胞の増殖や分化などの生理的作用に関与する信号(シグナル)伝達物質としての役割もあることが最近明らかとなってきました。そこで、当社は、セラミドのシグナル伝達物質としての機能に着目し、「ヒト型ナノセラミド」が、CEを形成するタンパク質「インボルクリン」(以下、「INV」)、「トランスグルタミナーゼ」(以下、「TGase」)やセラミド合成酵素「セリンパルミトイルトランスフェラーゼ」(以下、「SPT」)の発現に与える影響について解析することとしました(【図1】参照)。


<研究の結果>
 1.三次元培養皮膚モデルを用いた実験において、(1)「ヒト型セラミド」にタンパク質産生促進効果があることを確認しました。さらに、(2)「ヒト型ナノセラミド」は、ナノ分散していない「ヒト型セラミド」と比較し、CEを形成するタンパク質INVについては約2倍(【図2】参照)、TGaseについては約2.5倍(【図3】参照)の産生促進効果があることを確認しました。また、三次元培養皮膚モデルのTGaseを染色し、表皮層〜角層において発現が増加していることを観察しました(【図4】参照)。
  これらの結果から、ナノ分散によって「ヒト型セラミド」の浸透が高まったことでより多くのセラミドが肌内部へ浸透し、効果が高まったと推察しています。

 *図1は添付の関連資料を参照

 2.「ヒト型セラミド」を、正常ヒト表皮細胞に添加すると、セラミド合成酵素であるSPTの産生が約1.7倍促進されることを確認しました(【図5】参照)。

 *図2・3は添付の関連資料を参照

■実験方法
 三次元培養皮膚モデルの角層側から水、1%ヒト型セラミド、1%ヒト型ナノセラミドをそれぞれ50μL(※5)ずつ添加し、3日後、INV、TGaseのタンパク量をそれぞれ測定した。水を添加した時に産生する各タンパク量を100%とし、相対量(%)で示した。

■実験結果
 「ヒト型セラミド」を添加すると、INV量は水を添加したものに対し約1.1倍に増加した。また、「ヒト型ナノセラミド」を添加すると、「ヒト型セラミド」と比較して、約2倍の効果が得られることを確認した(【図2】参照)。
 「ヒト型セラミド」を添加すると、TGase量は水を添加したものに対し約1.5倍に増加した。また、「ヒト型ナノセラミド」を添加すると、「ヒト型セラミド」と比較して、約2.5倍の効果が得られることを確認した(【図3】参照)。

 *図4は添付の関連資料を参照

■実験方法
 三次元培養皮膚モデルの角層側から「ヒト型ナノセラミド」、水を添加し、3日後にINVを蛍光染色し、蛍光顕微鏡で観察した。

■実験結果
 三次元培養皮膚モデル(写真上段)について、INVを緑、細胞の核を青で染色した。核がない上層部が角層を示している。INVは「ヒト型ナノセラミド」を添加した場合、水と比較して、角層より深部の表皮層で発現が増加していることを確認した。

 *図5は添付の関連資料を参照

■実験方法
 正常ヒト表皮細胞に、溶媒(※6)に溶かした「ヒト型セラミド」(濃度10μM(※7))を添加し、2日後、SPTのタンパク量を測定した。
 「ヒト型セラミド」を溶かしていない場合に産生するタンパク量を100%とし、相対量(%)で示した。

■実験結果
 10μMの「ヒト型セラミド」を添加した場合、SPT量は約1.7倍に増加した。


<「ヒト型セラミド」とは>
 セラミドは、肌の最表面にある角層の細胞間脂質を構成する成分であり、ラメラ構造を形成することで、角層細胞とともに肌のバリア機能を実現しています。加齢によりバリア機能が低下した肌ではセラミドが減少していることが知られており、肌本来の角層状態に戻し、バリア機能を維持するためにはヒトと同じ型のセラミド補給することが重要です。「ヒト型セラミド」は、セラミドと同一の基本構造をもち、かつ同一の光学異性体であるものを言います。
 セラミドは加齢により減少するため、積極的に「ヒト型セラミド」を肌に補う必要があります。しかし、「ヒト型セラミド」は結晶化しやすく、従来の技術では「ヒト型セラミド」を高濃度に分散することができませんでした。
 当社は、独自の技術により、世界最小20nmサイズでセラミドを高濃度に、かつ安定に分散した「ヒト型ナノセラミド」を開発することに成功しました。従来のセラミド分散液に比べ、「ヒト型ナノセラミド」の角層浸透性は約9倍も高く、肌のバリア機能を迅速に回復することも確認しています。


タンパク質「INV」、「TGase」とは>
 肌のバリア機能は主に角層が担っており、角層細胞とセラミドを含む細胞間脂質とで構成されています。角層細胞は多数のタンパク質が結合した外壁(CE)で囲まれています。その強固な構造がセラミドなどの細胞間脂質が形成するラメラ構造の土台となり、肌のバリア機能に寄与していることが知られています。インボルクリン(INV)はCEを構成する代表的なタンパク質の一つです。トランスグルタミナーゼ(TGase)はインボルクリンなどのCEを構成するタンパク質同士を結合させる酵素の一つです。INVとTGaseの量が増えると、強固な構造のCEの形成が期待できます。


セラミド合成酵素「SPT」とは>
 表皮細胞中で、セラミドの生成反応を促進する重要な酵素です。セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)の産生が促進されることで、皮膚におけるセラミドの生合成が促されることが期待できます。


 ※1:角層への外界からの異物の侵入を阻止し、体内から体外への水分透過蒸散を抑制する効果。
 ※2:Cornified Envelopeの略。多数のタンパク質が結合した角層細胞の外壁のこと。
 ※3:「セラミドを主とする脂質」と「水」とが層状に重なり合った構造のこと。
 ※4:2014年11月時点。当社調べ。
 ※5:マイクロリッター。1μLは、1000分の1ml。
 ※6:本実験では、DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒として使用。
 ※7:マイクロモーラー。1μMは、100万分の1M。



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