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塩野義製薬、新規注射用シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬の非臨床試験成績を発表
新規注射用セファロスポリン系抗菌薬S−649266の
多剤耐性菌を含むグラム陰性菌に対する非臨床試験成績の発表について
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木功、以下「塩野義製薬」)は、米国フィラデルフィアで開催中の米国感染症学会週間Infectious DiseaseWeek 2014(以下「IDWeek 2014」)において、塩野義製薬が創製した新規注射用シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬S−649266の多剤耐性菌を含むグラム陰性菌に対する非臨床試験の良好な成績を発表しましたので、お知らせいたします。
薬剤耐性菌は抗菌薬の化学構造の一部を分解する酵素(*)を産生することで、既存の薬剤に耐性を示しますが、その数は年々増加しており、特に多剤耐性を示す緑膿菌やアシネトバクター、肺炎桿菌等のグラム陰性菌を原因菌とする院内感染や重症感染症は近年重大な社会問題となっています。今回のIDWeek 2014で発表された非臨床試験成績では、カルバペネム系を含む複数の抗菌薬に対して耐性を示すβ−ラクタマーゼ産生グラム陰性菌、特にカルバペネム分解酵素(カルバペネマーゼ)産生肺炎桿菌に対するS−649266の高い抗菌活性が報告されています。
*代表的なものにβ−ラクタマーゼがあり、β−ラクタム環構造を持つペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系などの抗菌薬を分解する。現在4つの種類に分類されており、そのうちの一つがカルバペネマーゼ。
S−649266は、9月にワシントンD.C.で開催された第54回Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy(ICAAC)において、口頭発表演題に選出され、“トロイの木馬”と称されるユニークな菌体内への取り込み機序とともに、多剤耐性緑膿菌および多剤耐性アシネトバクター等に対する良好な抗菌作用が示されたことから、多剤耐性菌に対する新しい治療選択肢になりうる抗菌薬として高い関心がもたれています(詳細は9月9日にお知らせしたリリース文(http://www.shionogi.co.jp/company/news/2014/qdv9fu000000jysf-att/140909.pdf)をご参照ください)。
今回、IDWeek 2014において、新たにカルバペネマーゼ産生肺炎桿菌に対する強い抗菌作用を示すことが報告されたことにより、S−649266に対する臨床に携わる先生方の関心が一層高まるものと考えております。S−649266は現在、第2相臨床試験の段階にあり、2015年中には第3相臨床試験を開始する予定です。
塩野義製薬は、感染症治療薬の国内トップメーカーとして、細菌感染症やウイルス感染症を中心とするグローバルにおける感染症治療に貢献し続けるため、今後も質の高い自社開発品の創製と迅速なグローバル開発の推進に注力してまいります。
なお、IDWeek 2014において発表しました試験成績の概要は、次のとおりです。
・ヒトにおける感染を模倣した条件下で培養した臨床分離株に対するin vitro薬効評価試験において、S−649266は多剤耐性菌を含むグラム陰性菌(緑膿菌、アシネトバクターおよび腸内細菌)に対し、既存のセファロスポリン系やカルバペネム系薬剤と比較して強力な抗菌活性を示しました。特に、カルバペネマーゼ産生菌に対してはセフェピムやメロペネムよりも強力な抗菌活性が確認されました。
・カルバペネマーゼに対する安定性に関して、S−649266は既存のセフタジジム、セフェピムおよびメロペネムと比較して10〜1,000倍の安定性を示しました。
・カルバペネム耐性を示す肺炎桿菌を肺に感染させたラットにおいて、S−649266のヒト静脈内投与試験時(1回2g、1日3回、3時間点滴/回)における血漿中薬物濃度推移を再現して投与したところ、S−649266は強力な抗菌活性を示しました。
以上
【ご参考】
<米国感染症学会週間(Infectious Disease(ID)Week 2014)について>
米国感染症学会(IDSA:Infectious.Diseases Society of America)、米国医療疫学学会(SHEA:Society for Healthcare Epidemiology of America)、米国HIV学会(HIVMA:HIV Medical Association)、および米国小児感染症学会(PIDS:Pediatric Infectious Diseases Society)の、感染症に関する4つの主要な学会の合同年会であり、感染症の予防・診断・治療・疫学における専門家が結集する総会です。
<塩野義製薬の感染症治療における取り組み>
塩野義製薬は50年以上にわたり革新的な感染症治療薬の研究開発ならびに販売をおこなっています。持続性サルファ剤スルファメトキサゾールは当社が創製し、1959年に「シノミン」として日本で発売した薬剤です。1982年には、世界初のオキサセフェム(第3世代セフェム)系抗菌薬となるシオマリン(ラタモキセフ)が、肺炎や化膿性髄膜炎などの適応症で日本において上市されました。また、当社が創製したカルバペネム系抗菌薬フィニバックス(ドリペネム)は現在、日本や米国等の世界各国で販売されています。さらに抗ウイルス薬に関しましても、当社が創製し、ViiV Healthcare Ltd.との共同開発で製品化されたHIV感染症治療薬テビケイ(ドルテグラビル)が、米国食品医薬品局(FDA)と欧州委員会(EC)から、それぞれ2013年8月と2014年1月に承認を取得し、各国で順次発売されています。テビケイは日本においても承認後、2014年4月に薬価収載され、同日付でヴィーブヘルスケア社と当社によるコ・プロモーションを通じて、医療関係者ならびに患者さまにお届けし、HIV治療にお役立ていただいています。