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基礎生物学研究所、新世界ザルのマーモセットの大脳皮質での眼優位性カラムの存在を確認

2013-05-15

「新世界ザルのマーモセットの大脳皮質での眼優位性カラムの存在を確認」



 私達ヒトは右眼と左眼の二つの眼を使って、立体視などの高度な視覚を実現しています。右眼と左眼から入力された情報は、大脳の1次視覚野に送られますが、右眼からの情報と左眼からの情報はそれぞれ隣接する領域に入力されることが知られており、この一次視覚野における構造は「眼優位性カラム」と呼ばれています。この眼優位性カラムは、ヒトの他、類人猿やマカクザル、ネコなどの脳に存在することがわかっています。今回、基礎生物学研究所 脳生物学研究部門の仲神友貴と山森哲雄教授らの研究グループは、新たなモデル生物として注目されている新世界ザルに属する小型のサル、マーモセットの大脳皮質にも、眼優位性カラムが存在することの確証を得ました。これは、視覚情報処理研究における新世界ザル・マーモセットの霊長類としての特質と有用性を示す成果です。この成果は2013年4月9日に脳科学専門誌Frontiers in Neural Circuitsに掲載されました。


<はじめに>

 ヒトなど、高度な立体視をする生物では、右眼から入力された情報と左眼から入力された情報は、大脳皮質の1次視覚野と呼ばれる部分の隣り合った領域に配信され、高度な情報処理が行われます。つまり、一次視覚野では、右眼からの入力を処理する部分と左眼からの入力を処理する部分とが交互に存在し、縞模様を形成しているように見えます。この縞の構造は「眼優位性カラム」と呼ばれています(図1)。

 霊長類は、原猿と真猿に大きく分けられ、真猿はさらに新世界ザルと、ヒトやチンパンジーなどが属する旧世界ザルとに分類されます。原猿や旧世界ザルは、眼優位性カラムの構造をもつことが知られていますが、新世界ザルでは眼優位性カラムの有無はサルの種によるといわれています。最近、新たなモデル生物として注目される小型のサル、マーモセットは、新世界ザルに属します。これまでマーモセットの眼優位性カラムは、幼若な頃には存在する事がわかっていましたが、成体では消失するとする説や、成体でも個体によっては確認できるという説など、確定していませんでした。


<研究の成果>

 今回、仲神友貴研究員らは、片方の眼にナトリウムチャンネル阻害剤であるテトロドトキシンを注入して、網膜の活動を数日間停止させた状態で、2日間暗闇で飼育した後、光を照射して、一次視覚野の網膜活動依存的な遺伝子活動の様子を観察するという方法を用いて、マーモセットの成体の1次視覚野に「眼優位性カラム」が存在することを、全例で確証しました(図2)。これは、視覚情報処理研究における新世界ザル・マーモセットの霊長類としての特質と有用性を示す成果です。


※図1・2は、添付の関連資料を参照


論文情報:

 Frontiers in Neural Circuits 4月9日掲載

 論文タイトル
  Monocular inhibition reveals temporal and spatial changes in gene expression in the primary visual cortex of marmoset

 著者:Yuki Nakagami, Akiya Watakabe and Tetsuo Yamamori


研究サポート:
 この研究は、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」の一環として、また、科学研究費補助金 新学術領域「神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築」のサポートにより実施されました。

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