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産総研、フレキシブルなカーボンナノチューブ透明導電フィルムを開発

2013-01-30

フレキシブルなカーボンナノチューブ透明導電フィルム
−酸化インジウムスズ(ITO)膜を代替する材料に−



【ポイント】
 ・室温・大気中で成膜できる溶液プロセスで透明導電フィルムを作製
 ・世界最高レベルの透明性と導電性を示し、耐屈曲性、耐衝撃性に優れ、折りたたみも可能
 ・タッチパネル、太陽電池、有機ELディスプレイなど幅広い応用に期待


<概要>
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)電子光技術研究部門【研究部門長 原市 聡】メゾ構造制御グループ Kim Yeji 協力研究員(日本学術振興会特別研究員 RPD)、阿澄 玲子 研究グループ長、近松 真之 主任研究員らは、基材フィルム上にカーボンナノチューブ(CNT)インクを塗布または印刷して作製できる、高い透過率と導電性を持つ透明導電フィルムを開発した。

 今回開発したCNT透明導電フィルムは、真空や高温プロセスを必要とせず、省資源、省エネ、かつ室温で成膜できる溶液プロセスで作製できる。この透明導電フィルムは、基材フィルムの透過率に対して89〜98%の透過率のとき、表面抵抗率68〜240Ω/□という、ウェットコーティング法による透明導電フィルムとしてこれまでに報告されたものと比較して世界最高レベルの透明性と導電性を持つ。また、CNT特有の屈曲性や密着性により、耐屈曲性、耐衝撃性に優れ、折りたたむことができる。

 この成果は2013年1月25日付のApplied Physics Express誌(電子版)に掲載される。また、2013年1月30日〜2月1日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「nanotech 2013第12回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」と同時開催される「プリンタブルエレクトロニクス2013展」にて展示される。

 〔プラスチック基材上に作製したCNT透明導電フィルム〕

  ※画像は添付の関連資料「添付画像」を参照


<開発の社会的背景>
 現在、モバイル情報端末やタッチパネル式PCには、透明電極フィルムとして主に酸化インジウムスズ(ITO)膜が使用されている。しかしITO膜は、入力動作の繰り返しによって微小な割れが生じやすく、曲げにも弱いという問題点がある。また、ITO膜の製造に必要な蒸着やスパッタリングなどの真空プロセスは多大な設備投資を必要とし、大面積化も困難である。さらに、希少金属であるインジウムを用いているため、資源の枯渇や国際情勢による安定供給の不安が心配される材料である。このため、これらの問題を解決できる代替透明導電材料が求められている。


<研究の経緯>
 産総研では、CNTに関する基礎研究や応用について取り組んできた。特に、高品質薄膜の作製法については、CNTの配向膜(AIST Today 2002年10月号掲載(*1))や、生体ポリマー(2005年2月22日 産総研プレス発表(*2))やセルロースなどとの混合による光学特性に優れたCNT薄膜を開発してきた。一方で、産総研 ナノチューブ応用研究センター(*3) 斎藤 毅 研究チーム長らは、CNTの量産、高品質化、直径制御などが可能なeDIPS法を開発している(2006年5月11日 産総研プレス発表(*4))。今回開発したフィルムには、eDIPS法により作製した高品質の単層カーボンナノチューブ(SWNT)を用いた。また、産総研 フレキシブルエレクトロニクス研究センター(*5)では、フレキシブル圧力センサー(2012年6月8日 産総研プレス発表(*6))の開発を進めており、今回は印刷エレクトロニクスデバイスチーム 植村 聖 研究員、渡邉 雄一 協力研究員(日本学術振興会特別研究員PD)らと共同で、CNT透明導電フィルムを用いてフレキシブルタッチパネルを試作した。

 なお、本研究開発の一部は、独立行政法人 日本学術振興会のRPD事業による支援を受けて実施した。

 *1 AIST Today 2002年10月号掲載
    http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol02_10/vol02_10_main.html#b
 *2 2005年2月22日 産総研プレス発表
    http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2005/pr20050222/pr20050222.html
 *3 ナノチューブ応用研究センター 
    http://unit.aist.go.jp/ntrc/ci/index.html
 *4 2006年5月11日 産総研プレス発表
    http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2006/pr20060511/pr20060511.html
 *5 フレキシブルエレクトロニクス研究センター
    http://unit.aist.go.jp/flec/index.html
 *6 2012年6月8日 産総研プレス発表
    http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120608/pr20120608.html



※以下、「研究の内容」などリリースの詳細は添付の関連資料を参照


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