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帝国データバンク、政策支援終了による企業への影響に関する調査結果を発表
政策支援終了による企業への影響調査
政策支援の終了、企業の22.7%に影響
〜影響がある企業のうち、7割超は影響が半年以上続くと予想〜
2009年6月19日から申請受付が開始されたエコカー補助金制度が2010年9月7日に終了した。また、住宅購入資金にかかる生前贈与の贈与税非課税枠の拡大は2010年12月、家電エコポイント制度や中小企業金融等円滑化法は2011年3月に期限切れを迎えるなど、今後、相次いで政策支援が終了する予定となっている。
そこで帝国データバンクでは、政策支援終了による企業への影響について調査を実施した。調査期間は2010年9月16日〜30日。調査対象は全国2万2,707社で、有効回答企業数は1万1,349社(回答率50.0%)。
政策支援の終了、企業の22.7%が「影響はある」
エコカー補助金制度や家電エコポイント制度、贈与税の非課税枠の拡大などの政府による政策支援の終了が自社に影響を及ぼすことになるか尋ねたところ、「影響はある」とした企業は1万1,349社中2,581社、構成比22.7%となり、2割超の企業で影響があると回答した。他方、「影響はない」は同59.2%(6,717社)となった。
「影響はある」を業界別にみると、『運輸・倉庫』(同32.2%、134社)が最も高く、『製造』(同27.0%、878社)が続いた(『その他』を除く)。とりわけエコカー補助金終了の影響を直接受ける自動車関連で高く、「輸送用機械・器具製造」が同63.6%(68社)となったほか、「自動車・同部品小売」は同82.5%(47社)と8割を超え51業種中で最も高かった(3ページ参考表(1)参照)。
地域別でみると、『東海』が同33.9%(420社)で最も高く、『北関東』(同28.9%、206社)が続いた。最も低い『北海道』(同13.6%、78社)と比べて『東海』は20.3ポイント高く、各地域の産業構造の違いが如実に表れる結果となった。
政策支援の終了は2割超の企業に影響を及ぼす。特に、エコカー補助金の終了は生産波及の大きい自動車関連で大きく影響を受けることになり、経済全体への悪影響が懸念される。
政策支援終了による反動、企業の29.6%が「1割」減少、27.5%が「2割」減少
自社に「影響はある」企業2,581社に対して、政策支援によりこれまで底上げがなされていた関連する製品・サービスについてどれほどの反動減が予想されるか、メーカーについては生産量の減産幅、メーカー以外の業界については売り上げ(収入)の減少幅を尋ねたところ、「1割」が同29.6%(765社)で最多となった。さらに、「2割」が同27.5%(710社)で続き、自社に影響がある企業の57.1%が1〜2割の減少を見込んでいる。また、「0割(反動減はない)」は同4.3%(110社)にとどまった。
特に、「輸送用機械・器具製造」では、生産量が2割以上の大幅減産になると予想する企業は同66.2%(45社)にのぼる(3ページ参考表(2)参照)。また、「自動車・同部品小売」は売り上げが2割以上の大幅減収になると予想する企業が同78.7%(37社)に達する。
政策支援終了による反動が各社の減産・減収をもたらすことを予想する企業は多い。リーマン・ショック後にさまざまな景気対策が実施されてきたが、終了時における影響を緩和するようなソフトランディングを図ることも重要になる。
企業の27.5%は政策支援終了の影響が1年間続くと想定、半年間も27.4%
自社に「影響はある」と回答した企業2,581社に対して、影響がどのくらいの期間続くと想定しているか尋ねたところ、「1年」が同27.5%(710社)で最多、次いで「半年」が同27.4%(708社)となった。さらに、「1年超」とする企業も同16.0%(414社)あり、7割を超える企業が半年以上にわたり影響は続くと想定していることが明らかとなった。特に「1年超」では、『小規模企業』(同21.1%、95社)は2割超となり、『大企業』(同12.0%、79社)を9.1ポイント上回るなど、規模が小さい企業ほど長期化するとみている(3ページ参考表(3)参照)。一方、「2〜3カ月」(同10.1%、260社)と考える企業は1割程度だった。
企業からは、「一時は減産するが、数カ月後は通常の生産になる」(2〜3カ月。出版・印刷、埼玉県)など、影響は短期間で終わると想定する企業がある一方、「やはりエコカー減税・補助金は景気の下支えに貢献していた。市場に出る廃車の台数が極端に相違している」(1年。再生資源卸売、熊本県)や「次なる政策が打たれなければ1年程度続く」(1年。男子服卸売、大阪府)、「無理して高額商品を購入した消費者心理の低下は数カ月では回復しない」(1年。成人男子少年服製造、広島県)、「強烈な駆け込みムードで、補助金対象以外も売れた特需であったことを忘れてはいけない」(1年超。自動車・同部品小売、岐阜県)といった、政策支援の効果が大きかったことで反動も長期化するという意見もみられた。また、「住宅に関しては贈与税の非課税枠拡大による効果が大きく、政策支援がなくなれば、日本経済がV字回復しないかぎり1年以上の影響が出てもおかしくない」(1年超。不動産、石川県)など、日本経済の回復がなければ長期化するという指摘もあった。
政策支援終了後の影響が2〜3カ月で収束すると想定する企業は1割程度である。一方で、半数超の企業が半年から1年程度続くと考えており、1割超の企業はさらに長期化するとみている。
政策支援終了への対応策、「新規販売先の開拓」が約5割で最多
自社に「影響はある」と回答した企業2,581社に対して、どのような対応策を立てているか尋ねたところ、「新規販売先の開拓」が同47.8%(1,234社)で最多となった(複数回答、以下同)。次いで「コストの見直し」(同36.5%、941社)、「自社独自の販促支援」(同23.4%、605社)となった。
具体的には、「1社あたりの売り上げ増が見込めないため、得意先開拓は不可欠」(機械工具卸売、埼玉県)や「新規事業の立ち上げを積極的に進める」(一般機械修理、愛知県)など、事業や得意先の新規開拓を強化するという意見が多い。また、「既存技術を応用した新ジャンル製品の開発」(自動車車体製造、愛知県)や「内製比率を上昇させ、仕事量の減少に対応する」(建設、兵庫県)といった声も挙がった。
総じて、政策支援による下支えで未曾有の経済悪化を乗り切った企業においても、政策支援終了後は新規の得意先や事業の開拓に乗り出すという傾向が表れている。
※ 詳細はオリジナルリリース参照