イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

帝国データバンク、2012年1月〜6月の全国企業倒産集計を発表

2012-07-12

倒産集計
<2012年上半期報>
 2012年(平成24年)1月〜6月

 倒産件数は5760件、3年連続の前年同期比減少
 負債総額は1兆9982億9700万円、3年ぶりの前年同期比増加

 倒産件数:5760件
 負債総額:1兆9982億9700万円

 前年同期比  件数 ▲1.5%      2011年上半期          5846件
          負債 +23.0%      2011年上半期 1兆6248億5800万円

 前期比     件数 +4.3%      2011年下半期          5523件
           負債 +8.7%      2011年下半期 1兆8388億7500万円



〔件数・負債総額の推移〕

 ※グラフ資料は添付の関連資料を参照



■件数

・ポイント 3年連続の前年同期比減少
 2012年上半期の倒産件数は5760件と、前年同期の5846件に比べ1.5%減少し、3年連続で前年同期を下回った。四半期ベースでは、2012年第2四半期(2793件、前年同期比5.2%減)は2期ぶりに前年同期比減少となった。

・要因・背景
 1.業種別では建設業(1377件)、製造業(742件)がともに前年同期比2ケタの減少
 2.各種金融支援策や復興需要を受け、東北(166件)が前年同期比32.5%の大幅減少


■負債総額

・ポイント 3年ぶりの前年同期比増加
 2012年上半期の負債総額は1兆9982億9700万円と、3年ぶりの前年同期比増加となった。四半期ベースでは、2010年第4四半期以降5期連続の前年同期比減少を記録した後、2012年第1四半期には増加に転じていたが、第2四半期は再び減少となった。

・要因・背景
 1.負債トップは、エルピーダメモリ(株)(2月、会社更生法、東京都)の4480億3300万円
 2.負債100億円以上の大型倒産は18件(前年同期14件)と3年ぶりに前年同期比増加


■業種別

・ポイント 7業種中3業種で前年同期比減少
 業種別に見ると、7業種中3業種で前年同期を下回った。なかでも建設業(1377件、前年同期比10.3%減)と製造業(742件、同12.6%減)は前年同期比2ケタの大幅減少となった。一方、卸売業(883件、同7.8%増)、小売業(1093件、同5.1%増)など4業種では前年同期を上回った。

・要因・背景
 1.建設業…東北(35件、前年同期比54.5%減)を中心に大幅減少
 2.製造業…金型などの機械製造業(88件、前年同期比32.3%減)で減少目立つ
 3.小売業…外食(376件、前年同期比6.5%増)が過去10年で最多


■主因別

・ポイント 「不況型倒産」の構成比は83.5%、7期連続で80%台の高水準
 主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は4812件となった。構成比は83.5%となり、前年同期を0.4ポイント、前期も1.3ポイント下回ったものの、80%台の高水準となった。

・要因・背景
 1.円高関連倒産は51件(前年同期24件)判明、うち為替デリバティブ損失関連は16件
 2.円滑化法利用後倒産は145件(前年同期68件)判明、半期ベースで過去最多を記録


■規模別

・ポイント 負債100億円以上の大型倒産、3年ぶりに前年同期比増加
 負債額別に見ると、負債5000万円未満の小規模倒産は3014件と、年半期ベースでは過去10年で初めて3000件を上回った。一方、負債100億円以上の大型倒産は18件(前年同期14件)と、3年ぶりに前年同期を上回った。

・要因・背景
 1.負債100億円以上の大型倒産18件中、製造業だけで7件を数える
 2.2010年6月の改正貸金業法完全施行後、零細企業の資金調達環境が悪化したこともあり、負債5000万円未満の倒産は増加基調をたどっている 


■地域別

・9地域中5地域で前年同期比減少
 地域別に見ると、関東(2223件)、中部(755件)など5地域で前年同期を下回った。なかでも東北(166件)は前年同期比32.5%の大幅減で、年半期ベースでは過去10年で最少となった。一方、九州(398件)、北海道(205件)など4地域は前年同期を上回った。

・要因・背景
 1.東北は、県別では宮城(29件)、業種別では建設(35件)で大幅減少
 2.九州(前年同期比10.9%増)や北海道(同9.0%増)では、消費低迷による小売・サービス業などの倒産増加が目立つ


■態様別

・ポイント 破産の構成比が93.1%、高水準で推移
 態様別に見ると、破産は5361件(前年同期5423件)と前年同期比1.1%の減少となったものの、構成比は93.1%を占め高水準が続いた。このほか、特別清算(140件)と民事再生法(249件)も前年同期を下回った一方、会社更生法(10件)は唯一前年同期を上回った。

・要因・背景
 1.再建型手続きが困難な中小零細企業の構成比が高まり、破産が高水準で推移
 2.民事再生法は、4期連続で250件以下と低水準が続いている


■業歴別

・ポイント 業歴30年以上の構成比が30.0%
 業歴別に見ると、業歴3年未満の倒産は165件(前年同期177件)発生、構成比は2.9%(前年同期3.0%)となり、前年同期を0.1ポイント下回った。一方、業歴30年以上の倒産は1728件(前年同期1806件)発生。構成比は30.0%(前年同期30.9%)で、前年同期を0.9ポイント下回ったものの、30%以上の高水準となった。

・要因・背景
 1.業歴30年以上の構成比、建設業が24.1%で全業種中トップ
 2.業歴30年以上の倒産は4期連続で構成比30%以上の高水準が続く


■上場企業倒産

 2012年上半期の上場企業倒産は、東証1部上場のエルピーダメモリ(株)(会社更生法、2月)など3件にとどまり、前年同期(2件)を上回ったものの低水準となった。


■大型倒産

 2012年上半期の負債額トップは、エルピーダメモリ(株)(会社更生法、2月)の4480億3300万円。負債1000億円以上の倒産は、同社と(株)太平洋クラブ(民事再生法、1月)の2件にとどまる。

 負債100億円以上の大型倒産は18件(前年同期14件)と、3年ぶりに前年同期を上回った。


■注目の倒産動向

・円高関連倒産 51件判明、うち為替デリバティブ損失関連は16件
 円高の影響を受けた倒産は2012年上半期に51件判明し、前年同期(24件)の2.1倍に急増した。このうち、為替デリバティブの損失による倒産は16件(前年同期11件)を数えた。歴史的な円高水準が続いており、今後も中小零細企業を中心に円高関連倒産の増加が懸念される。

・円滑化法利用後倒産 145件判明、半期ベースで過去最多
 「中小企業金融円滑化法」利用後に倒産に至ったケースは、2012年上半期に145件判明し、半期ベースで過去最多となった。1月に月間最多の32件を記録した後も高水準が続い ている。今後は2013年3月末という同法の期限をにらみ、金融機関が徐々に企業選別の動きを強めていくと予想され、円滑化法利用後倒産はさらなる増加が見込まれる。



<今後の見通し>

■倒産件数は3年連続で前年同期比減少、負債総額は3年ぶりの前年同期比増加
 2012年上半期の倒産は5760件で、前期を4.3%上回ったものの前年同期を1.5%下回り、3年連続で前年同期比減少となった。建設業と製造業で前年同期比2ケタの減少となったのが大きい。しかし、外食が376件(前年同期比6.5%増)となり過去10年間で最多を記録するなど、業種によって明暗が分かれた。一方、負債総額は1兆9982億9700万円で、前期比、前年同期比ともに増加となった。エルピーダメモリが負債4480億3300万円で製造業では過去最大の倒産となったほか、太平洋クラブ(ゴルフ場経営、負債1260億円)、NISグループ(事業者金融、同508億2300万円)など大型倒産が散発したことから負債総額が押し上げられた。

■件数は単月で減少するも、一時的要因か
 2012年6月の倒産件数は896件となり、2ヵ月ぶりに前年同月比減少となった。これは、建設業が前年同月比30.2%の減少(88件減)で8ヵ月連続の前年同月比減少となったことに起因する。なかでも東北では13ヵ月連続前年同月比減少を記録したほか、関東でも6月は前年同月比39.4%の大幅減少となった。しかし、これらは東日本大震災から復興需要効果が表れてきているといういわば特殊要因に基づく倒産減少である。仮に建設業が例年並みの倒産件数であれば、今月も前年同月比増加を記録していた可能性もある。「中小企業を取り巻く環境が改善している」と見るのではなく、「一時的に特殊要因が影響した」と見るべきだろう。

■消費税増税、増税分価格転嫁できるかが焦点
 消費税率が2014年4月に8%へ、2015年10月には10%まで引き上げられる見通しとなった。消費税(3%)が導入された89年はバブル景気の最中で、根強い個人消費に支えられ企業倒産は前年比28.5%減と、消費税導入の影響は表れなかった。一方、消費税率が5%に引き上げられた97年は、金融不安などから貸し渋りが問題化していたなか増税が消費不振に輪をかけ、倒産は前年比12.5%の大幅増加を記録した。現在は、各種倒産抑制策により倒産件数が抑えられている状況。それでも、増税分の価格転嫁交渉が難航すると予想される卸売業、小売業、サービス業の2012年上半期の倒産件数は前期、前年同期をともに上回っている。これらの業者が価格転嫁に失敗した場合、さらなる倒産増加の要因となる。もちろん、増税前までは高額商品を中心として駆け込み需要が見込め、企業の業績向上に寄与するだろうが、それは需要の先食い。駆け込み需要が一段落した後、一層厳しい経営状況に追い込まれる企業は多いであろう。

■先行き不透明な経済・政治情勢は2012年下半期も続く
 中小企業金融円滑化法の期限切れを控え、金融庁は5月17日、監督指針の一部改正を行った。これは、政府が4月20日に公表した「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」に基づくもの。その中で、従来年間300件台であった中小企業再生支援協議会による再生計画策定支援を「2012年度においては3000件程度を目指す」としている。もちろん、支援目標件数を増やしても返済条件の変更にとどまる再生計画では効果は薄く、抜本的な再生計画を策定できるかどうかが重要であり、すべてがうまくいくとは限らない。2012年下半期は、東日本大震災の影響や円高、各種公共料金の値上げといった上半期から続く倒産増加要因に加え、この夏の電力不足懸念、住宅エコポイント・エコカー補助金終了後の需要急減のほか、政局不安により予算執行の遅れがみられるような行政機能の低下が新たな懸念材料となる。経済分野でも政治分野でも、先行きの不透明感が払拭されないなか、金融円滑化法の期限切れは刻々と近づいてくる。こうした状況下、上半期は1.5%とわずかに前年同期を下回った倒産件数だが、前述の通り不安要素は多く、下半期も倒産件数は一進一退を繰り返しながら増加していく可能性が高い。



*詳細は添付の関連資料「オリジナルリリース」を参照

この記事に関連するキーワード

中小零細企業 デリバティブ 会社更生法 民事再生法

Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版