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京大、アルマ望遠鏡を用いて銀河に含まれる窒素が放射する電波を検出することに成功
124億光年彼方の銀河の「成分調査」
〜アルマ望遠鏡で迫る進化途上の銀河の正体〜
本学およびケンブリッジ大学を中心とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて124億光年彼方の「サブミリ波銀河」と呼ばれる種類の銀河を観測し、この銀河に含まれる窒素が放射する電波を検出することに成功しました。サブミリ波銀河とは、進化途上にあり激しい星形成活動を起こしている種類の銀河で、可視光を遮る大量の塵に覆われているためにすばる望遠鏡などの光学望遠鏡では詳細な観測が困難でした。アルマ望遠鏡は、大量の塵にも遮られることのないミリ波での観測が可能であり、かつ微かな電波をもキャッチできる驚異的な感度を持っています。このアルマ望遠鏡の特徴を活かして検出した電波の性質をモデル計算と比較することで、宇宙誕生後わずか13億年しかたっていない初期宇宙にあるこの銀河での元素組成が、すでに現在の宇宙の元素組成に近いことが明らかになりました。この結果は、初期宇宙において、激しい星形成活動が起こったことを物語っています。
なお、この研究成果は、欧州の天文学専門誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジクス」のレター部門に掲載されました。これは我が国の研究者が代表を務める研究としてはアルマ望遠鏡の共同利用観測に基づく最初の成果であり、これまでにアルマ望遠鏡が見た最も遠方の宇宙に関する観測成果です。
<研究の背景>
数千億もの星々からなる銀河は、宇宙の歴史の中でいつ頃、どのように生まれ育ってきたのでしょうか。我々が住む太陽系の中心にある太陽も、ある一つの銀河に含まれる無数の恒星のうちの一つにすぎません。つまり我々の住む世界を理解するためには、銀河の進化の理解が必要だといえます。
この銀河進化を調べる有効な手段に、銀河の「成分調査」があります。つまり、銀河を構成する物質がどのような元素からできているかを調べるのです。天文学では、遠方の銀河を観測することは、昔の宇宙における銀河を調査することに対応しています(注1)。実際にこれまでのすばる望遠鏡などを使った遠方銀河に対する可視光観測により、宇宙の様々な時代における銀河の成分調査が進められてきています(注2)。
しかし、激しく星を生成している途中の段階にある銀河は大量の塵に覆われており、そうした塵は可視光を遮ってしまいます。また、こうした銀河は初期宇宙に多く存在しますが、その観測のためには極めて遠方の宇宙にある非常に暗い銀河を調べる必要があります。そのため、従来の可視光による観測では、遠方にある活発な星形成活動をしている銀河の成分調査が困難だということが問題になっていました。
※以下、「今回の研究の着想」などリリースの詳細は添付の関連資料を参照