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東京商工リサーチ、東証1部・2部上場メーカー145社の「想定為替レート」調査結果を発表
東証1部・2部上場メーカー145社
「想定為替レート」調査(2013年3月期決算業績見通し)
〜1ドル=80円1ユーロ=105円の想定が最多〜
東証1部、2部に上場するメーカー145社のうち、全体の3割にあたる45社(構成比31.0%)で期初の想定為替レートを1ドル=75円から79円とした。また、欧州債務危機を反映したユーロ高から1ユーロ=105円とする企業が最多を占めた。外国為替市場では、歴史的な円高水準が続き、輸出産業では業績の下振れリスクが深刻さを増している。
※本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月本決算企業)のうち、2013年3月期決算の業績見通しで想定為替レートが判明した145社を対象に調査した。資料は2012年3月期決算の決算短信、業績予想等に基づく。
<2013年3月期決算の想定為替レート1ドル=80円の企業が6割>
東京証券取引所1部、2部に上場するメーカー145社のうち、2013年3月期決算(本決算)の業績見通しで期初の対ドル想定レートを1ドル=80円と設定した企業が91社(構成比62.7%)と最も多かった。
次いで、75円が14社、77円と78円が各12社、79円と82円が各5社と続く。75円から79円は合計45社(構成比31.0%)と全体の3割を占め、想定レートの最安値は83円だった。
<1年前とのレート比較4社に1社が1ドル=80円台から70円台へ変更>
1年前との期初想定為替レートの比較では、想定レートを1年前と同水準の「80円」とした企業が39社(構成比26.8%)で最も多かった。次いで、「85円から80円」に変更が13社、「82円から80円」と「83円から80円」に変更が各12社、「80円から75円」に変更が8社と続く。
また1ドル=80円台から70円台へ変更した企業が36社(構成比24.8%)を数えた。
<円相場の変動に揺れ動く企業>
円の対ドル相場は、2011年10月31日に1ドル=75円32銭の戦後最高値を更新した。各企業ではこの歴史的な円高水準を反映した想定為替レートを設定した。2年前(2011年3月期の業績見通し)の期初想定レートでは、1ドル=90円の企業が最も多かったのと比べて、多くの企業では当時より10円以上も為替レートで円高が進行した。1円の円高でも業績への影響が大きいだけに輸出企業の受ける打撃は深刻さを増している。ただし、今年2月14日に日銀が追加金融緩和を決定したことを契機に、円相場は一時円安・ドル高に振れ、3月15日には1ドル=84円台で取引され、昨年4月以来の水準となった。こうした変動が様子見機運を高め、多くの企業が想定為替レートを1年前と同じ1ドル=「80円」に設定する要因になったことがうかがえる。
<対ユーロ想定為替レート1ユーロ=105円が最多>
上場メーカー145社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した98社をみると、2013年3月期決算の業績見通しで期初の対ユーロ想定レートで最も多かったのは、1ユーロ=105円の60社(構成比61.2%)だった。次に、100円が14社(同14.2%)と続き、最安値は110円の4社(同4.0%)だった。1年前では、1ユーロ=115円とする企業が最も多かったが、欧州の債務危機への警戒感を反映して、今年1月16日の外国為替市場では、1ユーロ=97円04銭と約11年ぶりの円高・ユーロ安となり、大幅に想定為替レートを円高に変更した企業が続出した。こうしたなか、1ユーロ=90円台としたのは1社だけで想定為替レートは「98円」だった。
東証上場の主なメーカーでは、2013年3月期決算の業績見通しにおいて歴史的な円高に対応して想定為替レートを全体としては前年同様か、より高めに設定した。だが、欧州の政治状況が混迷の度を深めるなかで、欧州債務危機の先行きは一段と不透明になっている。
この影響から投機マネーが安全資産として円に流入し、円高が再び進行している。円高の進展は、輸出産業には業績の下振れリスクを高める。また、一服状態にある中小企業の「円高関連」倒産の今後の増加も懸念される。
*以下のグラフ資料は添付の関連資料「添付資料」を参照
・主な東証1部、2部上場メーカー145社 2012年3月期決算 期初想定ドル為替レート分布
・主な東証1部、2部上場メーカー145社 2013年3月期決算 前年同期の期初との想定ドル為替レート変更状況
・主な東証1部、2部上場メーカー98社 2013年3月期決算 期初想定ユーロ為替レート分布