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東京商工リサーチ、「厚生年金基金」の解散に伴う倒産事例についての調査結果を発表
「厚生年金基金」の解散に伴う倒産事例
〜「兵庫県乗用自動車厚生年金基金」の場合〜
多くの中小企業が加入する企業年金で、国から預かった厚生年金の代行部分が毀損(代行割れ)した「総合型厚生年金基金」が続出している。そんななか、神戸では厚生年金基金の解散に伴い代行割れ部分の穴埋めが負担になり、14社が倒産、1社が事業を停止する事態に陥っている。
単独で企業年金を持たない中小企業が同業や地域単位で集まって作る「総合型厚生年金基金」は、基礎年金や厚生年金に上乗せする形で企業が任意に設けた年金である。低金利や不景気で運用利回りが低下し、当初の約束利回りを給付できない指定基金が81基金ある。国に代行して運用してきた厚生年金部分が赤字になると、解散する場合、代行部分に相当する最低責任準備金を一括か分納で返納する。だが、代行を返上しようにも穴埋めできず、返上できない基金も多い。
「総合型」の加入企業は業歴の長く、繊維、建設、印刷など斜陽産業も多い。構造的に若い従業員が少なく、掛金を払う加入者と年金受給者の逆ピラミッド化が進むことが危惧されている。
2006年1月、兵庫県乗用自動車厚生年金基金が解散した。最低責任準備金137億円に対し、残余財産は66億円。約71億円の積立不足を抱えていた。手厚い年金給付と加入者の高齢化で支出額が増大し、これ以上基金を維持しても現状の掛金では追いつかないことから解散を選択した。
基金を解散するには、厚生年金の代行部分を国(企業年金連合会)に返上しなければならない。
この不足分は基金に加入する企業が相応に負担するが、資金負担が大きいため一括納付ができない場合、10年の分割納付が認められた。このケースでは会員50社のうち29社がこの分割に応募、分割納付すべき負担金合計は52億5000万円(一括納付分を除く)だった。各社とも売上高は2億円〜3億円程度と小規模で、業績も低迷していた。ここに負担金が1社当たり平均1億8000万円近く振り分けられ、資金繰りへの負担が増すことになった。
負担金を分担した企業が倒産すると、倒産した会社の負担金分は残った加入企業に振り分けられる。倒産する企業が増えると、残った企業は「返しても返しても負担金が増える」状況に陥る。
兵庫県乗用自動車厚生年金基金のように積立不足を抱えた基金が解散し、その負担金の分割弁済が選択された場合、倒産した他の加入企業の未払い負担分は残った企業で連帯責任を負う義務が課せられている。基金のメンバーが負担に耐えられず倒産すると、負担金は残された企業にどんどん積み上る。負担金の穴埋めが重荷となる年金倒産は、決して他人事ではない。
<「兵庫県乗用自動車厚生年金基金」の解散に伴う関連倒産一覧(倒産集計順)>
※添付の関連資料「関連倒産一覧」を参照