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理化学研究所とJST、ヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に成功

2012-03-29

ヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に初めて成功
−電荷が分かれた構造は分子の結合論・反応論の総合的理解に貢献−

本研究成果のポイント
○ケトンの炭素をゲルマニウムに置換したヘビー級ケトン「ゲルマノン」を初めて合成
○ケトンとは反応しない二酸化炭素が、ゲルマノンとは反応して環状化合物を生成
○新しい化学反応・触媒反応の開拓と新たな機能性物質デザインの可能性を開く



 独立行政法人理化学研究所野依良治理事長)は、安定な有機化合物であるケトン(※1)の炭素原子をゲルマニウム(Ge)に置換したヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に初めて成功し、ケトンにはない反応性を見いだしました。これは理研基幹研究所(玉尾皓平所長)機能性有機元素化学特別研究ユニットの玉尾皓平ユニットリーダー、松尾司副ユニットリーダー(JST さきがけ「新物質科学と元素戦略」研究者)、李良春(リ・リアンチュン)特別研究員らと、先端技術基盤部門物質評価チームの橋爪大輔専任研究員、京都大学大学院工学研究科分子工学専攻の田中一義教授、笛野博之助教の研究グループによる成果です。

 ケトン(R2C=O(*1)、Rは炭素置換基)は化学工業や生態系で中心的な役割を果たす有機化合物で、炭素原子と酸素原子との間に安定した二重結合を形成しています。この炭素(原子量 12.01)を、元素周期表上で同じ列(14族)に属している重い元素のケイ素(Si、原子量28.09)やゲルマニウム(Ge、原子量72.64)に置き換えると、ヘビー級ケトン「シラノン(R2Si=O(*2))」や「ゲルマノン(R2Ge=O(*3))」になります。これらは、化学結合の仕組みを探る基礎科学の面だけでなく、実用化の面でも多くの知見を与えると期待されてきました。しかし、ケイ素やゲルマニウムの不飽和結合(※2)が不安定かつ他分子と反応しやすいため、これまでに合成・単離した例はありませんでした。
 *1〜3の正式表記は添付の関連資料を参照

 研究グループは、「Eind(イーインド)(※3)」と名付けた立体的に大きな(かさ高い)保護基を独自に開発し、ゲルマニウムと酸素との二重結合を覆った結果、ゲルマノンを合成・単離することに初めて成功しました。ゲルマニウムと酸素の二重結合は、炭素と酸素の二重結合より電荷が分離しており、ゲルマニウムがプラス、酸素原子がマイナスの性質が強いこと、その結果、通常ケトンとは反応しない二酸化炭素が、ゲルマノンとは室温、1気圧で速やかに反応して、環状化合物を生成することを発見しました。
 大きく電荷分離したゲルマノンが示す特性は、分子の結合論、反応論に関する基礎的な知見を与えるとともに、ゲルマニウムを用いた小分子の活性化、新たな酸・塩基反応を含む多様な化学反応・触媒反応、機能性物質のデザインなど、幅広い分野に貢献すると期待できます。
 本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金特別推進研究「革新的な汎用性立体保護基の導入による新奇な有機元素化合物の構築と機能開発(研究代表者:玉尾皓平、研究分担者:松尾司、田中一義)」の一環として行われ、科学雑誌『Nature Chemistry』オンライン版(3月25日付け:日本時間3月26日)に掲載されます。


 *以下、リリース詳細は添付の関連資料を参照

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