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NTT、光パスとIPの統合制御によりダイナミックに仮想ネットワークを構成する技術を開発技術を開発

2010-11-16

光パスとIPの統合制御によりダイナミックに
仮想ネットワークを構成する技術を開発
〜多種多様な通信サービスの迅速な提供を可能に〜



 日本電信電話株式会社(以下NTT、東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺)は、光パス(*1)とIPの制御を統合的に行うことで、一つの物理ネットワーク上に複数の仮想ネットワークをダイナミックに構築する技術を開発し、広域実験ネットワーク上で実際に、仮想ネットワークを同時に運用することに成功しました。
 本成果は、性質の異なる様々な通信サービスを共通の物理ネットワーク上で実現することで、利用者のニーズに合わせた新しいサービスを迅速に提供することを可能にするものです。
 また、2010年11月13日から米国ニューオリンズで開催されるSC10(*2)では、展示会場と日本の試験環境とを国際回線を用いて接続し、日米間で本成果の公開実験を実施する予定です。


【背景】
 近年、IP電話やIPTV、インターネットアクセスなどの異なるサービスが1つのIPネットワーク上で提供されるようになりました。しかし、今後、ギガビットクラスの広帯域が必要な映像サービスやデータセンタネットワーク、数キロビット程度の通信ながら膨大な端末数の接続に対応することが必要なICタグを利用した通信などが普及することにより、将来のネットワークはさらに高度で多様な通信サービスを提供することが期待されています。
 NTTでは、通信速度や性質が大きく異なる多種多様な通信サービスを共通のIPネットワーク上で提供していくことは困難になっていくと考え、ネットワークのより効率的な利用を実現する技術の開発に取り組んできました。


【今回の成果】
 現在はIP技術が進歩し、様々な通信サービスの情報をそれぞれIPパケット化して伝送することにより、1つのIPネットワーク上で多様なサービスを提供しています。しかし、今後新たな大容量サービスなどを開始した場合、1つのIPネットワーク上でサービスを提供すると、特定のサービスが回線の通信容量の大部分を占有してしまうことが問題となります。この問題を解決するためには、サービスごとに新たな物理ネットワークを構築する必要がありますが、ネットワークの構築には長い期間が必要であり、利用者のニーズに合わせたサービスを短期間で開始することは困難となります。
 今回開発した技術は、光パスとIPの組合せによる仮想的なIPネットワークをダイナミックに構築するものです(図1)。例えば、通信速度の大きいサービスには光信号のまま情報を伝達する大容量の光パスを占有的に割り当てるなど、光パスとIPの統合制御により、IPネットワークを迅速に構築することができるようになります。さらに、物理ネットワーク資源を自動的に把握し、複数の通信サービスへの配分を管理することによって、共通の物理ネットワーク上に複数のIPネットワークを仮想ネットワークとして実現することを可能としました(図2)。
 本成果の実証にあたっては、テストベッドネットワーク「JGN2plus(*3)」を用いて構築した広域実験ネットワーク上に本技術を適用し、毎秒約6ギガビットの超高精細映像を伝送する大容量の仮想ネットワークや、サービスを中断することなく光パスの構成を変更する仮想ネットワークなどを同時に運用することに成功しました。


【技術の特徴】

(1)光パスとIPの統合制御
 IPルータ間を光パスで接続し、それをIPリンク(*4)として利用可能な状態にする設定を行います。そのIPリンクを組み合わせることでIPネットワークを構成します。従来、光パスとIPの制御は別々のシステムで制御していましたが、必要なIPネットワークの構成に応じた光パスの経路計算を行い、光パスの設定と同時にIPリンクとしての設定を行うなど、両者の統合的な制御を実現することで、IPネットワークを迅速に構築することが可能となります。

(2)ネットワーク資源の配分管理
 光ファイバや光クロスコネクト(*1)など、光パスを設定するための物理ネットワークの資源をサーバが自動的に把握し、物理ネットワーク管理者の操作によって、資源に対する各仮想ネットワークの利用権を設定します。各サービスの管理者は、それぞれが利用権(専有/共有)を持つ資源の配分を受け、それぞれにおいて前述の光パスとIPの統合制御を行う、自由度の高い運用を行うことができます。資源の配分は運用中に変更することが可能なので、例えば需要の変動に対応して共有資源から一時的に配分を追加して通信容量を拡大するなどの柔軟な運用を行うことができます。

(3)標準化技術の利用
 資源の把握、及び光パスの設定用サーバやネットワーク機器間の連携には標準プロトコル(GMPLS(*5)等)を利用しているため、これに対応した市販製品で構成された物理ネットワークであれば本技術の適用が可能です。例えば大規模なデータセンタ内のアプリケーションや利用企業ごとに仮想ネットワークを実現することで、通信パターンの変動に合わせてネットワークを柔軟に変更する、新しい利用者へのサービス開始を迅速化するなどの効果が期待できます。


【今後の展望】
 本成果の実用化に向け、テストベッド実験を重ねることにより、実運用に必要な機能の拡充や実証を進めていきます。本成果の実用化により、キャリアのネットワークや企業ネットワークの効率的な運用につながるものと期待されます。


<用語解説>
*1 光パスと光クロスコネクト
 通常のIPパケット転送では、ネットワークを構成するIPルータにおいて、到着したIPパケットの宛先情報を電気的に処理し次の転送先を決定する。これに対し、光クロスコネクトでは波長ごとに次の転送先を予め設定しておき、IPパケットごとに電気信号に変換することなく、光信号のまま転送する。1つまたは複数の光クロスコネクトに予め波長ごとの転送先を決めておくことで生成した通信路を「光パス」と呼ぶ。

*2 SC10
 高速コンピューティング及びネットワーキングに関する世界有数の国際会議。2010年11月13日から19日まで、米国ルイジアナ州ニューオリンズで開催予定。
 http://sc10.supercomputing.org/

*3 JGN2plus
 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が運用する超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク。
 http://www.jgn.nict.go.jp/

*4 IPリンク
 IPルータ間を接続し、IPパケットを伝送する回線。IPルータ間が光クロスコネクトなどの伝送装置を介在して接続する場合でも、IPパケットの転送処理だけに着目すればIPルータ間が直接接続されているように捉えることができ、この接続のことをIPリンクと呼ぶ。

*5 GMPLS(Generalized Multi−Protocol Label Switching)
 IPネットワーク上に論理的なパケットスイッチネットワークを構成するMPLS技術を応用し、従来のMPLSラベル(識別標識)に加えて光波長などをラベルとしたスイッチネットワークを構成することで、標準的なネットワーク制御を可能にする通信技術。装置間の接続構成や帯域等の資源情報の交換や、装置間の信号制御によるパス(光パスを含む)の設定を行う手順等を定義している。IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化が行われ、多くのベンダ装置への実装が進んでいる。


※図1・2は、添付の関連資料を参照

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