SARSウイルスの巧みな戦略 −プロテアーゼの特殊な基質認識− ■要旨  理化学研究所(理研)構造生物学研究室の村松知成研究員と横山茂之上席研究員らの研究チーム(※)は、「重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス[1]」の主要なペプチド結合加水分解酵素「3CLプロテアーゼ[2]」が基質(酵素が作用する物質)を認識する際に示す新たなアミノ酸配列特異性を発見しました。  SARSコロナウイルスはヒトの細胞に感染すると、自己複製のために必要なさまざまなタンパク質を合成します。その中には2種類の巨大なポリタンパク質があり、それぞれ1本のポリペプチド鎖(アミノ酸がペプチド結合でつながったもの)の中に...