ノバルティス、クリオピリン関連周期性症候群治療薬「イラリス皮下注用１５０ｍｇ」を発売

クリオピリン関連周期性症候群（ＣＡＰＳ）治療薬

「イラリス（Ｒ）皮下注用１５０ｍｇ」新発売

−ＣＡＰＳの適応を取得した国内で初めての治療薬−


　ノバルティス　ファーマ株式会社（代表取締役社長：三谷宏幸）は、１２月７日、クリオピリン関連周期性症候群（以下、ＣＡＰＳ　：ｃｒｙｏｐｙｒｉｎ−ａｓｓｏｃｉａｔｅｄ　ｐｅｒｉｏｄｉｃ　ｓｙｎｄｒｏｍｅ）の国内初の治療薬として「イラリス（Ｒ）皮下注用１５０ｍｇ（一般名：カナキヌマブ［遺伝子組換え］）」（以下、「イラリス」）を新発売します。「イラリス」は、８週間ごとに皮下投与する注射剤です。

　ＣＡＰＳは、「家族性寒冷自己炎症症候群（ＦＣＡＳ）」、「マックル・ウェルズ症候群（ＭＷＳ）」、および最も重症な「新生児期発症多臓器系炎症性疾患（ＮＯＭＩＤ）」の総称で、インターロイキン（ＩＬ）−１βが過剰に産生されることで炎症反応などが引き起こされる慢性自己炎症疾患群です。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて、発熱、関節痛、蕁麻疹様皮疹、頭痛、疲労感、結膜炎などの様々な症状が繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性があります。

　ＣＡＰＳは、世界的には１００万人に１人の頻度で発症するとされており（＊１）、国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多くいると言われています（＊２），（＊３），（＊４）。国内の患者数は３０名未満と報告されています（＊５），（＊６）。

　国内で初めてＣＡＰＳの適応を取得した「イラリス」は、ＩＬ−１βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンＧ１（ＩｇＧ１）モノクローナル抗体で、ＣＡＰＳの諸症状を増悪させる炎症性サイトカインのＩＬ−１βに対する高い選択性を示し、その活性を中和することで、ＣＡＰＳの様々な炎症症状を速やかに寛解させます（＊７），（＊８），（＊９），（＊１０）。

　「イラリス」の国内臨床試験では、２４週以内に完全寛解した患者さんの割合は９４．７％で、投与４８週以内に完全寛解した割合は１００％でした（＊１１）。その効果が不十分又は再燃時には、増量又は投与間隔を短縮して投与を継続することで、長期にわたり炎症症状の改善と再燃抑制効果を示しました。また、国内臨床試験において、主な副作用は鼻咽頭炎（１５．８％）、口内炎（１０．５％）などでした１１。「イラリス」は、上気道感染等の感染症が高頻度に報告されており、重篤な感染症も報告されているため、本剤投与中は感染症の発現、再発及び増悪に十分注意する必要があります。

　ノバルティス　ファーマ株式会社　代表取締役社長　三谷宏幸は「イラリス」の発売にあたり、次のように述べています。「これまで、国内ではＣＡＰＳを適応症とした治療薬はなく、非常にアンメット・メディカル・ニーズの高い病気でした。このたび『イラリス』を発売することで、患者さん、ご家族、そして医療従事者の方々の切なる思いにお応えすることができ、非常に嬉しく思います。ノバルティス　ファーマは今後も、このような希少疾患に対する薬剤の開発にも注力することで、日本の医療に貢献していく所存です」

　ノバルティス　ファーマは、２００９年１０月より国内で「イラリス」のＣＡＰＳに対する臨床試験を開始し、その後、２０１０年「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」（＊）での評価に基づき厚生労働省より開発要請を受けました。また、２０１０年８月には希少疾病用医薬品（オーファンドラッグ）に指定されています。

　「イラリス」は、米国、スイス、欧州連合（ＥＵ）など５０以上の国と地域で承認を取得し、２００９年８月にスイスで発売以来、米国を含めて現在２１の国と地域で発売しています（２０１１年７月現在）。カナキヌマブは、ＩＬ−１βが重要な役割を果たす炎症性の疾患である「心筋梗塞後患者における心血管イベントのリスク軽減」についても開発を進めており、国内では臨床第ＩＩＩ相試験を実施中です。

　（＊）医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議：欧米では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品や適応について、医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や、承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業による「未承認薬・適応外薬」の開発促進に資することを目的として設置された会議です。


参考資料

（＊１）．ＮＯＭＩＤ　Ａｌｌｉａｎｃｅ　（２００８）：ＣＡＰＳ　Ｃｒｙｏｐｙｒｉｎ　Ａｓｓｏｃｉａｔｅｄ　Ｐｅｒｉｏｄｉｃ　Ｓｙｎｄｒｏｍｅｓ　（Ｉｎｔｅｒｎｅｔ）．（Ａｃｃｅｓｓｅｄ：２４　Ｆｅｂ　２０１０）
（＊２）．Ｋａｓｈｉｗａｇｉ　Ｙ，Ｋａｗａｓｈｉｍａ　Ｈ，Ｎｉｓｈｉｍａｔａ　Ｓ，ｅｔ　ａｌ．（２００８）：Ｅｘｔｒｅｍｅ　ｅｆｆｉｃａｃｙ　ｏｆ　ａｎｔｉ−ｉｎｔｅｒｌｅｕｋｉｎ　１
ａｇｅｎｔ（ａｎａｋｉｎｒａ）ｉｎ　ａ　Ｊａｐａｎｅｓｅ　ｃａｓｅ　ｏｆ　ＣＩＮＣＡ　ｓｙｎｄｒｏｍｅ．Ｃｌｉｎ　Ｒｈｅｕｍａｔｏｌ；２７：２７７−９．
（＊３）．Ｋａｎｅｇａｎｅ　Ｈ，Ｉｔａｚａｗａ　Ｔ，Ｓａｉｔｏ　Ｍ，ｅｔ　ａｌ．（２００８）：Ａ　ＣＩＡＳ１　ｍｕｔａｔｉｏｎ　ｉｎ　ａ　Ｊａｐａｎｅｓｅ　ｇｉｒｌ　ｗｉｔｈ　ｆａｍｉｌｉａｌ　ｃｏｌｄ　ａｕｔｏｉｎｆｌａｍｍａｔｏｒｙ　ｓｙｎｄｒｏｍｅ．Ｅｕｒ　Ｊ　Ｐｅｄｉａｔｒ；１６７：２４５−７．
（＊４）．Ｋａｇａｍｉ　Ｓ，Ｓａｅｋｉ　Ｈ，Ｋｕｗａｎｏ　Ｙ，ｅｔ　ａｌ．（２００６）：Ａ　ｐｒｏｂａｂｌｅ　ｃａｓｅ　ｏｆ　Ｍｕｃｌｅ−Ｗｅｌｌｓ　ｓｙｎｄｒｏｍｅ．Ｊ
Ｄｅｒｍａｔｏｌ；２：１１８−２１．
（＊５）．上松一永（２００７）：自己炎症疾患の臨床像．日本臨床免疫学会会誌；　３０：６３−７．
（＊６）．狩野博嗣（２００７）：自己炎症疾患．小児内科；３９：８０３−１２．
（＊７）．Ａｌｔｅｎ，Ｒ．ｅｔ　ａｌ．：Ｔｈｅ　ｈｕｍａｎ　ａｎｔｉ−ＩＬ−１β　ｍｏｎｏｃｌｏｎａｌ　ａｎｔｉｂｏｄｙ　ＡＣＺ８８５　ｉｓ　ｅｆｆｅｃｔｉｖｅ　ｉｎ　ｊｏｉｎｔ　ｉｎｆｌａｍｍａｔｉｏｎ　ｍｏｄｅｌｓ　ｉｎ　ｍｉｃｅ　ａｎｄ　ｉｎ　ａ　ｐｒｏｏｆ−ｏｆ−ｃｏｎｃｅｐｔ　ｓｔｕｄｙ　ｉｎ　ｐａｔｉｅｎｔｓ　ｗｉｔｈ　ｒｈｅｕｍａｔｏｉｄ　ａｒｔｈｒｉｔｉｓ．Ａｒｔｈｒｉｔｉｓ．Ｒｅｓ．Ｔｈｅｒ．１０（３），Ｒ６７，２００８
（＊８）．Ｃｈｕｒｃｈ，Ｌ．Ｄ．ｅｔ　ａｌ．：Ｃａｎａｋｉｎｕｍａｂ，ａ　ｆｕｌｌｙ−ｈｕｍａｎ　ｍＡｂ　ａｇａｉｎｓｔ　ＩＬ−１β　ｆｏｒ　ｔｈｅ　ｐｏｔｅｎｔｉａｌ　ｔｒｅａｔｍｅｎｔ　ｏｆ　ｉｎ¬ａｍｍａｔｏｒｙ　ｄｉｓｏｒｄｅｒｓ．Ｃｕｒｒ．Ｏｐｉｎ．Ｍｏｌ．Ｔｈｅｒ．１１（１），８１−８９，２００９
（＊９）．社内資料：ヒトＩＬ−１βに対する結合親和〔ＩＬＡＵ００００３〕
（＊１０）．社内資料：ＩＬ−１βの受容体との結合に対する阻害作用〔ＩＬＡＵ００００４〕
（＊１１）．Ｉｍａｇａｗａ，Ｔ．ｅｔ　ａｌ．：Ｃｌｉｎ．Ｅｘｐ．Ｒｈｅｕｍａｔｏ．（投稿中）


ノバルティス　ファーマ株式会社について
　ノバルティス　ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダー、ノバルティスの医薬品部門の日本法人です。ノバルティス　グループ全体の２０１０年の売上高は５０６億米ドル、研究開発費は９１億米ドル（減損・償却費用を除くと８１億米ドル）でした。スイス・バーゼル市に本拠を置くノバルティスは、約１２１，０００人の社員を擁しており、世界１４０カ国以上で製品が販売されています。詳細はインターネットをご覧下さい。ｈｔｔｐ：／／ｗｗｗ．ｎｏｖａｒｔｉｓ．ｃｏ．ｊｐ


以上
３／３


＜参考資料＞
イラリス（Ｒ）の製品概要

　製品名：イラリス（Ｒ）皮下注用１５０ｍｇ【ＩＬＡＲＩＳ　Ｒ　ｆｏｒ　ｓ．ｃ．　ｉｎｊｅｃｔｉｏｎ　１５０ｍｇ】

　一般名：カナキヌマブ（遺伝子組換え）【Ｃａｎａｋｉｎｕｍａｂ（Ｇｅｎｅｔｉｃａｌ　Ｒｅｃｏｍｂｉｎａｔｉｏｎ）】

　効能又は効果：以下のクリオピリン関連周期性症候群
　　・家族性寒冷自己炎症症候群
　　・マックル・ウェルズ症候群
　　・新生児期発症多臓器系炎症性疾患

　用法及び用量：通常、体重４０ｋｇ以下の患者にはカナキヌマブ（遺伝子組換え）として１回２ｍｇ／ｋｇを、体重４０ｋｇを超える患者には１回１５０ｍｇを８週毎に皮下投与する。
　　十分な臨床的効果（皮疹及び炎症症状の寛解）がみられない場合には適宜漸増するが、１回最高用量は体重４０ｋｇ以下の患者では８ｍｇ／ｋｇ、体重４０ｋｇを超える患者では６００ｍｇとする。
　　最高用量まで増量し、８週以内に再燃がみられた場合には、投与間隔を４週間まで短縮できる。
　　なお、症状に応じて１回投与量の増減を検討すること。

　承認日：２０１１年９月２６日

　薬価基準収載日：２０１１年１１月２５日

　薬価：１５０ｍｇ　１瓶　１，４３５，８８０円

　発売開始日：２０１１年１２月７日

　製造販売：ノバルティス　ファーマ株式会社


※　製品画像は、関連資料参照