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富士経済、バイオビジネス市場調査結果を発表
医療やアグリ(農業)など、国内6分野のバイオビジネス市場を調査
★2015年の国内バイオビジネス市場予測★
10年比1.5倍の2兆8,531億円 ―バイオ医薬を中心とした医療市場が牽引し年率8%強で推移―
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界 03−3664−5811)は、医療をはじめ、アグリ(農業)、化粧品、研究支援、エネルギー、食品といった6分野におけるバイオ技術を利用した製品/システムやサービス、バイオ技術を利用して生産された商品(生産された成分等を配合した商品)の国内市場を調査した。その結果を報告書「2011 バイオビジネス市場」にまとめた。
<調査結果の概要>
―国内バイオビジネス市場 ―
分野 2010年 前年比 2015年予測 2010年比
医療市場 1兆140億円 115.4% 1兆7,572億円 173.3%
アグリ市場 5,229億円 102.2% 6,441億円 123.2%
化粧品市場 1,566億円 107.4% 1,871億円 119.5%
研究支援市場 1,127億円 100.4% 1,218億円 108.1%
エネルギー市場 531億円 203.4% 982億円 184.9%
食品市場 466億円 118.9% 448億円 96.1%
合計 1兆9,059億円 111.2% 2兆8,531億円 149.7%
注:四捨五入して億円単位にしているため、各分野市場を足し上げても必ずしも合計とは一致しません。
国内バイオビジネス市場は、2008年は大きなウエイトを占める医療市場とアグリ市場が共に伸び拡大した。特に穀物価格の高騰によりアグリ市場が大幅に伸びたことから、前年比20%以上の伸びを示した。2009年は穀物価格が一転して急落したことによりアグリ市場が大幅に縮小したが、医療市場が順調に伸びたため、前年比マイナス10%にとどまった。2010年は再び拡大し、前年比11.2%増の1兆9,059億円となった。医療市場が53%、アグリ市場が27%を占める。
今後市場はバイオ医薬を中心とした医療市場の伸びによって年率8%強の伸びが期待でき、2015年には2兆8,531億円になると予測される。
■医療市場
医療市場はバイオ医薬市場、診断市場、その他に分類される。医療市場の8割を占めるバイオ医薬市場は、成長市場として注目されており、世界レベルで製薬企業の多くがバイオ医薬品の開発競争を繰り広げている。疾患や病態の保険適用範囲は限定されるが、その有効性から高薬価のものが多く、また製品も増加していることから市場が拡大している。
診断市場ではモノクローナル抗体市場と感染症の遺伝子診断市場が成熟している。一方で、ヒト遺伝子の遺伝子診断市場や、テーラーメード医療、予知診断の市場が成長を続けているが、診断市場に与える影響は軽微である。
その他は、バイオセンサーと再生医療の市場である。再生医療市場は2009年に立ち上がったが、2015年時点でもまだ小規模に留まると見られる。
■アグリ市場
アグリ市場は穀物市場(遺伝子組み換え穀物)、果樹・花卉市場、植物工場市場を対象としている。穀物市場が圧倒的なウエイトを占める。穀物市場は遺伝子組み換え穀物が増えていることや、バイオ燃料原料としての需要増で価格が上昇していることなどから拡大している。 特に2007年〜2008年は価格が急騰したことにより大幅に拡大した。
果樹・花卉市場ではサントリーフラワーズが青いバラ「ブルーローズ アプローズ」の販売を開始し注目を集めている。
■化粧品市場
化粧品市場はバイオ技術を活用して得た成分を配合した化粧品を対象としている。バイオリアクター技術を活用した成分が中心であり、その他技術を活用した成分は一部に留まる。市場は圧倒的な販売規模を誇るヒアルロン酸配合化粧品が牽引し拡大を続けている。ヒアルロン酸は保湿成分として認知度が高く、今後も追随するブランドの投入が予測され、拡大すると見られる。近年はアスタキサンチン配合が台頭している。その他成分でも注力度の高いブランドの伸長が続くと予想される。
■研究支援市場
研究支援市場は研究機器・試薬市場、受託サービス市場を対象としており、横ばいから微増で推移している。これは国のバイオ関連予算の削減により基礎研究が減少したことが要因である。
研究機器・試薬市場は、2009年に警察庁の特需と新型インフルエンザによって10%近い伸びを示したが、2010年はほとんど伸びなかった。特に基礎研究がひと段落した遺伝子関連の研究機器や試薬が落ち込んでいる。伸びている品目はセルイメージング装置、細胞分離試薬等の細胞関連の試薬・機器である。
受託サービス市場は価格競争が激しく、ペプチド合成、遺伝子診断サービス以外は縮小している。
■エネルギー市場
エネルギー市場はバイオエネルギー市場、バイオマス関連プラント市場を対象としている。バイオエタノールとバイオディーゼルで構成されるバイオエネルギー市場が順調に伸びている。特に、2010年はバイオエタノールを含むバイオガソリンの本格発売で急拡大している。
バイオマス関連プラント市場はプラントで発電した電力市場である。市場は直接燃焼発電のウエイトが高い。原油価格により増減するが、製材工場などで導入が進んでおり、一定の需要が断続的に存在している。バイオマス関連プラント市場は東日本大震災後に分散型電源への関心が高まっていることから、将来的な拡大が期待される。
■食品市場
食品市場はバイオ技術を活用して得た成分を配合した機能性甘味料、機能性食品を対象としている。バイオリアクターを活用した成分が広く採用されている。これらの成分はヒット商品の登場とその反動により増減を繰り返す傾向が強い。2000年代半ばはコエンザイムQ10やギャバに注目が集まったが、以降は反動により市場縮小が続いた。
2010年の市場はオルニチン配合商品が一斉に投入されたことで拡大した。食品市場は商品改廃が激しく実績維持が難しいことから、ヒット商品がでない限り2012年にはマイナスへ転じると予想される。ただし、根強い需要をもつ既存品や需要開拓の余地があることから微減に留まると予想される。
<注目市場>
1.抗体医薬品、分子標的医薬品【医療市場】
2010年 前年比 2015年予測 2010年比
抗体医薬品 2,913億円 130.9% 6,448億円 221.4%
分子標的医薬品 1,010億円 125.3% 3,512億円 347.7%
抗体医薬品とは、抗体を主成分とした医薬品の総称である。抗体が標的とする疾患関連物質やがん細胞など(抗原)に、特異的に結合することから高い治療効果を得ることができる。副作用の少ない効果的な治療薬として注目されている。
「レミケード」(田辺三菱製薬)や「エンブレル」(ファイザー−武田薬品工業)などは抗リウマチ剤として、治療効果の高さから処方が増加している。また、抗がん剤領域では「アバスチン」(中外製薬)や「ベクティビックス」(武田薬品工業)などが適応拡大(適応症の追加承認)しており、新規成分の開発品も多く、数年内に多数の新製品の発売が見込まれる。更に、自己免疫疾患領域でも抗体医薬品の開発が進んでいる。
「レミケード」や「アバスチン」、「エンブレル」といった上位製品が順調に実績を伸ばす中、「ベクティビックス」や「ヒュミラ」(アボットジャパン−エーザイ)、「ルセンティス」(ノバルティスファーマ)といった製品が投入され、2007年に1,043億円の市場は、2010年には2,913億円に拡大している。
今後も市場は拡大すると見られるが、2015年頃にはバイオシミラー(バイオ医薬品のジェネリック)の発売が予想され、分子標的医薬品の開発も進んでいることから、それらとの競合により伸びは鈍化すると予想される。
分子標的医薬品は、疾患に関連する遺伝子をターゲットとして、特異的に作用することで高い治療効果と低い副作用リスクが期待できる。抗がん剤は副作用が非常に強いものが多いため、特にがん領域での開発が進んでいる。
ここでは分子標的医薬品の抗がん剤を対象としている。市場は2010年に1,000億円を突破した。2010年のトップシェアは「グリベック」(ノバルティスファーマ)である。2001年に発売され、2003年、2007年に適応拡大しており、2010年は薬価マイナス改定の影響を受けたが、慢性骨髄性白血病の第一選択薬としての地位を確立している。また「イレッサ」(アストラゼネカ)は非小細胞肺がんでの評価が高く、「ネクサバール」(バイエル薬品)は肝細胞がんに対する第一選択薬として、順調に伸びている。
2.細胞分離試薬、セルイメージング装置【研究支援市場】
2010年 前年比 2015年予測 2010年比
細胞分離試薬 20.0億円 109.3% 32.0億円 160.0%
セルイメージング装置 13.4億円 106.3% 17.3億円 129.1%
細胞分離試薬は細胞の表面抗原にモノクローナル抗体を利用して、特定の細胞だけを分離・濃縮する試薬である。主に、再生医療研究やがん研究、創薬研究の細胞内シグナル(情報伝達)の研究などで使用されている。細胞内シグナルの研究は盛んで、今後も市場は年率10%程度の伸びが予測される。
セルイメージング装置は、細胞を生きたまま観察できる装置である。再生医療研究や創薬研究などで生きたままの細胞を利用した研究(細胞内シグナルの研究など)が今後一層活発化し、市場を伸ばすと見られる。フローサイトメーター(細胞分析装置)の市場を侵食する可能性があり、市場拡大が期待される。ただ、今までは大型のハイエンドシステムが中心であったが、今後は小型の低価格装置がメインになると見られる。
<調査対象>
アグリ市場
穀物、果樹・花卉、植物工場
食品市場
※バイオ技術を活用して得た成分を配合した機能性甘味料、機能性食品
化粧品市場
※バイオ技術を活用して得た成分を配合した化粧品
医療市場
遺伝子組み換え・組織培養医薬品、抗体医薬品、分子標的医薬品、遺伝子診断(臨床用遺伝子診断薬)、モノクローナル抗体、予知診断、テーラーメード医療、バイオセンサー、再生医療
研究支援市場
制限酵素・修飾酵素、PCR試薬・機器、リアルタイムPCR試薬・機器、DNAシーケンサー、DNAチップ・解析装置、ラブオンチップ・解析装置、DNA抽出装置、DNA・RNA抽出試薬、RNAi関連試薬、プロテインチップシステム、質量分析装置、物質間相互作用解析装置、細胞分離試薬、セルシグナル試薬、フローサイトメーター、セルイメージング装置、細胞培養器材、細胞、細胞培養培地、オリゴ合成、ペプチド合成サービス、シーケンス解析サービス、遺伝子発現・変異・多型解析サービス、プロテオーム解析サービス、遺伝子診断サービス
エネルギー市場
バイオエネルギー、バイオマス関連プラント
<調査方法>
富士経済専門調査員による調査対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査及び関連文献を併用
<調査期間>
2011年7月〜10月
以上
資料タイトル:「2011 バイオビジネス市場」
体裁:A4判 251頁
価格:130,000円(税込み136,500円)
調査・編集:富士経済 東京マーケティング本部 第ニ事業部
TEL:03−3664−5821 FAX:03−3661−9514
発行所:株式会社 富士経済
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