帝国データバンク、韓国企業による日本企業への出資実態調査結果を発表

特別企画：　韓国企業による日本企業への出資実態調査

韓国出資の日本企業は３８５社、５年前に比べ３割増加
〜　業種別では、「ゴルフ場」　が２倍に　〜


■はじめに
　１１月１１日、１２日の２日間、韓国ソウルで主要２０ヵ国・地域（Ｇ２０）首脳会議（サミット）が開かれる。リーマン・ショック後の金融危機からいち早く立ち直り、自動車、電機、ＩＴなどの分野を中心に好調な韓国経済。ここにきて景気回復にやや陰りが見られるものの、依然として拡大局面が続いており、世界経済における韓国企業の存在感が各産業で増している。
　帝国データバンクでは、自社データベース・信用調査報告書ファイル「ＣＣＲ」（１５０万社収録）の中から、韓国企業から出資がある日本企業を抽出し（個人からの出資は原則除く）、社数推移、業種別、資本金別、業歴別に分析を行った。なお、同調査は今回が初めてとなる。


■調査結果（要旨）
１．韓国企業が出資する日本企業は３８５社判明した。５年前の２８８社に比べて３割増となった
２．業種別では「卸売業」が全体の４割でトップ。「サービス業」が３割占め、ソフト開発、オンラインゲーム関連が多く、ゴルフ場は５年前の２倍に増加
３．資本金別では「１億円以上」が１４６社、５年前に比べて１．５倍に増え、出資金額の増加傾向見られる
４．業歴別では「１０年未満」が２３６社（６１．３％）でトップ。全体の６割超は業歴１０年未満の新興企業


１．社数推移　―　５年前に比べ３割増加
　韓国企業が出資する日本企業は、２０１０年１０月の調査時点で３８５社判明した。５年前の２８８社に比べて３３．７％増となり、５年前に比べて３割増となったことが分かった。全体の約３社に２社は、日本進出を目的に韓国企業が過半を出資して子会社を設立するケースであったが、各地のゴルフ場経営会社を韓国企業が買収するケースも目立った。業歴３０年を超えるゴルフ場経営会社は、２００８年に韓国企業が全株を取得して親会社に就任、料金引き下げなどで来場客の増加に取り組んでいる。

２．業種別　―　「ゴルフ場」が５年前の２倍に増加
　業種別にみると、「卸売業」が１６５社（構成比４２．９％）でトップ。サムスンやＬＧなど韓国財閥系企業が１００％子会社を設立するケースを中心に、日韓間を結ぶ貿易会社が全体の４割を占めた。
　次いで「サービス業」（１１７社、構成比　３０．４％）が３割を占めた。このうち電子書籍・セキュリティ関連などのソフト開発（２６社、５年前比▲３．７％）、オンラインゲーム関連（２４社、同＋２６．３％）が目立つ。またゴルフ場（１７社、同＋１１２．５％）は、５年前の２倍に増えた。
　ライブドア（東京都）は、韓国インターネット大手のＮＨＮ　Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎが日本法人を通じて２０１０年５月に株式を取得、同社の傘下に入った。

３．資本金別　―　「１億円以上」が５年前に比べ１．５倍
　資本金別にみると、「１０００万円以上１億円未満」が２２２社（構成比５７．７％）でトップとなり、過半数を占めた。
　一方、資本金１億円以上の合計が１４６社と、５年前に比べて５３．７％増と１．５倍に増えており、近時好調な韓国経済を受けて出資金額の増加傾向がみられる。
　リーディング証券（東京都）は、２００８年の資本業務提携を機に韓国のリーディング投資証券が親会社となり、事業を展開中。

４．業歴別　―　「３０年以上」が５年前に比べ５．５倍
　業歴別にみると、「１０年未満」が２３６社（構成比６１．３％）でトップとなり、全体の６割超が業歴１０年未満の新興企業であることが分かった。
　一方、「３０年以上」が３３社（構成比８．６％）を数え、５年前の６社に比べて４５０．０％増となり、この５年間で５．５倍に増えた。
　業歴４０年の老舗金型メーカーは、２００７年の民事再生法申請後に韓国企業が同社代表を通じて全株を取得、経営再建に取り組んでいる。

５．まとめ
　現時点で日本において、韓国企業による日本企業の買収は各地のゴルフ場が中心だ。このほかでは２０１０年５月のライブドア（東京都）などの事例はあるが、大型の買収案件はほとんど発生していない。しかし、高い経済成長率を背景に、日本企業のもつ独自技術とノウハウの取り込みを狙って韓国企業が積極的なＭ＆Ａに動く可能性は十分ある。
　一部報道によれば、韓国の政府系ベンチャーキャピタルが日本企業に出資する投資ファンドを立ち上げる動きもここにきて出てきている。日本政府も新成長戦略において対日直接投資促進を掲げ、法人税の優遇措置の導入などを検討しており、韓国・中国をはじめとする外国企業の日本進出の動きから当面目が離せない。


　※図表入りの詳細はオリジナルリリースを参照