東京商工リサーチ、上場８１３社の２０１０年９月中間期決算「為替差損」調査結果を発表

上場会社８１３社２０１０年９月中間期決算

〜為替差損合計は差益合計の約７．５倍の２，６９５億円〜


　２０１０年３月末に１米ドル＝９３．４５円だった為替レートは、１０月２９日終値で８０．３８円と円高を強めている。こうしたなか１０月２９日までに２０１０年９月中間期決算短信を発表した上場会社８１３社（全産業）のうち、約７割の上場企業が営業利益、経常利益を伸ばした。しかし、為替差損合計が為替差益合計の約７．５倍に膨らみ、円高が収益の足かせ感を強め、企業業績に影響を及ぼしていることがわかった。
　３１業種のうち、２００９年９月中間期に比べ為替差益が増加したのは証券・商品先物、電気機器など４業種、２１業種で差益が減少した。一方、差損が膨らんだのは２１業種で、減少したのは医薬品、食料品、繊維製品の３業種だった。（本調査は東証など全株式市場の上場企業で、１０月２９日までに決算短信が確認された企業を対象に実施した）


◇約７割の上場企業が営業利益、経常利益で増益に
　８１３社の２０１０年９月中間期の売上合計は１３１兆７６１億円（前年同期比１２．３％増）だった。収益も大きく回復し、営業利益９兆１，１６１億円（同８５．５％増）、経常利益８兆２，２９４億円（同１１７．５％増）、当期純利益４兆６，８４９億円（同１４２．４％増）とほぼ倍増した。厳しい経済環境でも上場企業は需要回復に加え、経費削減などのリストラ効果が収益改善に寄与した。
　２０１０年９月中間期に営業利益が前年を上回った企業は８１３社中５７３社（構成比７０．４％）だった。また、経常利益が前年同期を上回ったのは５７０社（同７０．１％）で、約７割以上の上場企業が営業利益、または経常利益が前年同期を上回った。営業利益と経常利益がそろって前年同期を上回ったのは５５１社（同６７．７％）。
　業種別で為替差益が増加したのは「証券・商品先物」、「電気機器」、「小売業」、「卸売業」の４業種で、輸入メリットがでた格好となった。

◇円高進行により為替への影響も徐々に表面化
　２００９年４月〜９月は１米ドル＝８９円〜９８円で推移していたが、２０１０年４月〜９月は１米ドル＝８３円〜９３円と円高が進行、２０１０年６月以降は１米ドル＝８０円台で円高が顕著となっている。
　８１３社のうち、決算短信で為替差益を計上したのは５４社（構成比６．６％）、為替差益の合計は３５５億円だった。前年同期は１０７社、差益合計４５０億円だったことから、前年同期より社数では５３社（４９．５％）減と半減、差益合計では９４億円（２０．９％）減少した。
　一方、為替差損を計上したのは３２３社で、為替差損の合計は２，６９５億円だった。社数では前年同期の２２４社より９９社（４４．１％）増加し、差損合計では前年同期の１，１７６億円より１，５１８億円（１２９．０％）増と倍増、２０１０年９月中間期の為替差損合計は為替差益合計の約７．５倍に達した。輸出産業を中心に円高の影響が深刻さを増していることを裏付けた格好だ。東証１部・２部に上場する主要製造業では８４．８％の企業が２０１０年度（２０１１年３月期）の想定為替レートを９０円に設定していた。今後、想定レートを８０円〜８５円レンジに変更しても、円相場の動向が不透明なだけに長びく円高が企業の収益悪化に拍車をかけることが懸念される。

◇為替差損計上は３２３社９割以上が経常黒字
　為替差損が判明した３２３社のうち、最も多額だったのは任天堂の６２１億円。当初、１米ドル＝９５円、１ユーロ＝１２０円で設定していたが、為替相場が想定を上回る円高進行で為替差損６２１億円を計上。２０１０年９月中間期の経常利益は黒字予想から一転、大幅赤字を計上した。三菱重工業は為替差損１４０億円を計上したが、増収効果で為替差損を吸収、経常利益と当期純利益は前年同期を上回った。富士通は為替差損１０２億円を計上、コストダウンなどで営業収益が大幅に改善し収益への影響を抑えた。


　２０１０年９月中間決算で為替差損が収益悪化に直接影響した企業もあるが、為替差損を計上した３２３社のうち、営業利益及び経常利益ともに黒字だった企業は２７９社（構成比８６．３％）だった。円が１米ドル＝８０円台に突入したのは６月以降で、為替差損が収益に大きく影響した企業は９月中間期では限定的にとどまった。
　だが、一段の円高進行は売上高や収益への影響が懸念される。さらに、長引く為替相場の高止まりは国内産業の疲弊に加え、欧米やアジアなどでの国際競争力の低下に直結する。国内企業の為替対応が遅れると２０１１年３月期決算に与える影響だけでなく、中小企業の業績にも波及しかねないだけに為替動向には目を離せない。


　※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照