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NTTなど、100Gbps及び40Gbps光通信のプラグアンドプレイを超高速で実現

2011-11-29

世界初、100Gbps及び40Gbps光通信のプラグアンドプレイを超高速で実現

〜デジタルコヒーレント光伝送による超高速自動設定技術を
 敷設ファイバ環境下で実証〜


 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺、以下 NTT)とNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:有馬 彰、以下 NTT Com)は既存の光ファイバを用いた実運用環境下で、NTTが開発した100Gbps及び40Gbps(1Gbpsは毎秒10億ビット容量)の超高速信号の自動設定を50ミリ秒(1ミリ秒は1秒の1000分の1)以下に短縮できるプラグアンドプレイ機能を世界で初めて実証しました。
 従来、設定が難しく時間を要していた100Gbps及び40Gbpsの超高速信号を、家庭のFTTH(Fiber to the Home)で用いられている1Gbpsクラスの信号と同じように容易に自動設定することができ、今後平常時のネットワークの運用の簡素化及び災害時のネットワークの迅速な復旧を飛躍的に改善することが期待されます。
 なお、本研究開発の一部は、総務省委託研究「超高速光伝送システム技術の研究開発(デジタルコヒーレント光送受信技術)」、および独立行政法人情報通信研究機構委託研究「ユニバーサルリンク技術の研究開発」の成果を用いています。


1.研究背景
 近年のFTTHやスマートフォンの普及に伴うブロードバンドアクセスの急速な普及とともに、通信トラヒックは年率約1.2倍で増え続けています。このような増大する通信トラヒックに対応するため、これまでNTTでは、次世代の光ネットワーク大容量化の先端技術として、伝送路容量を飛躍的に拡大させるデジタルコヒーレント技術(*1)及び超高速デジタル信号処理(*2)の研究開発を推進してきました。一方NTT Comでは、常に最先端の光通信技術を世界に先駆けて導入することにより、先進的な基幹光ネットワーク(*3)を実現し、お客様に高信頼で経済的なブロードバンドサービスを提供することに努めてまいりました。


2.実験の概要および役割分担
(1)デジタル既知信号を用いた超高速デジタル信号処理(以下 DSP)による超高速波形ひずみ測定・補正【NTT】(図1参照)
 今回開発した新技術は、光の波の性質(位相(*4)・偏波(*5))にデジタル信号の1と0を対応させて光信号を伝送するデジタルコヒーレント技術を利用します。従来の技術では、光信号のON/OFFをデジタル信号の1と0に対応させて光信号を伝送しますが、毎秒100Gbps及び40Gbpsの超高速信号を伝送させる場合(100Gbpsは2時間のハイビジョン映像を2秒で伝送できる容量)、光信号に加わった波形ひずみを測定し取り除く必要がありました。また、そのためには、通常波形ひずみの測定には数日間を要するとともに、波形ひずみを解消する機器設定にも時間を要していました。
 新技術ではデジタルコヒーレント技術に新しいDSP機能を適用することで超高速信号の高速設定機能を実現しました。新しいDSP機能では、光送信器内で光信号にあらかじめ波形ひずみを測定するデジタル既知信号を挿入し光信号を送信します。次に、光受信器にて光信号からデジタル既知信号を取り出し、デジタル既知信号から波形ひずみの量を高精度で測定し、波形ひずみを取り除きます。新技術により、従来の光信号のON/OFFを用いた光通信では実現が困難であった波形ひずみ量の高速測定ならびに波形ひずみの高速除去が可能となり設定時間の短縮が可能となりました。

(2)フィールド試験環境(*6)の構築【NTT Com】
 DSPを実用の光ネットワークに適用するには、運用環境下で起こりうると想定される波形ひずみに対応できること、及び光信号に加わった波形ひずみの変化速度に対応出来ることが求められます。今回、NTT ComはNTTと協力してこのようなDSPの処理性能をあらゆる伝送環境下で試験し、その応答特性を検証する手法を考案し、580kmにわたるフィールド試験環境(伝送路の平均偏波モード分散(*7)35.5ps:1ps(ピコ秒)は1兆分の1秒)を同社の商用敷設ファイバを用いて構築しました。

(3)実験結果の実証【NTT、NTT Com】(図2、図3参照)
 実験では、1波長あたり100Gbps及び40Gbps容量の信号を11波長伝送し、580kmにわたるフィールド試験環境において1,000種類以上の伝送状態を人工的に作り出し、光信号の疎通状態を試験した結果、全ての状態に対して安定して自動設定できることを確認しました。また、DSPの設定時間を詳細に測定した結果、50ミリ秒以下で自動設定状態が実現できていることが確認でき、DSP性能を実運用環境下で実証しました。


3.今後の展開
 将来の大容量基幹光ネットワークでは、さまざまな経路において瞬時に超高速な光信号を設定することで、ネットワークの運用性を向上できます。また、大規模な災害等による故障・復旧に対しては、迂回ルート等を瞬時に設定することにより信頼性の高いネットワークの構築が可能です。DSPを用いた光通信技術を用いることで、柔軟な運用と高い信頼性を両立できる経済的なネットワークの実現に取り組みます。


*1:デジタルコヒーレント技術
 デジタルコヒーレント技術では、無線の電波と同じように光の波の性質(位相、周波数、偏波)のさまざまな状態にデジタル信号の1と0を対応させて情報を送信します。受信側ではまず、微弱な受信光信号を局発光信号と混合して受信することにより、光の波に乗っていた情報信号をアナログ電気信号として取り出します。その後、アナログ・デジタル変換器により受信したアナログ電気信号をデジタル化し、高速なデジタル信号処理を行うことにより、受信信号に加わっていた雑音やひずみを完全に取り除き、元の情報信号を復元します。従来の強度変調方式に比べて、高感度受信やファイバ伝送中のさまざまなひずみに強い高品質な光通信を実現します。

*2:超高速デジタル信号処理
 光通信では、一般に光ファイバの伝送後に受信する信号は、伝送中に雑音や波形ひずみが付加された連続的な超高速アナログ電気信号です。デジタルコヒーレント技術では、この超高速アナログ受信信号から不要な雑音や波形ひずみを取り除き、元信号を復元するために、フィルタリング等の複雑な信号処理を高速に行います。このため、まず、これらの超高速アナログ電気信号をコンピュータで処理しやすいデジタル信号に変換します。超高速アナログ信号を一定の離散的な時間間隔で読み取るサンプリング処理と、読み取った信号振幅をいくつかの離散的レベルにクラス分けする量子化処理により、受信信号の状態を完全に記述した超高速デジタル信号が生成できます。この超高速デジタル信号を用いて、受信信号に含まれる不要な雑音や波形ひずみを取り除くデジタルフィルタ等を行う専用の信号処理集積回路、あるいは信号処理のことを超高速デジタル処理回路/処理(DSP:Digital Signal Processer/Processing)と呼びます。本回路を用いることで、従来のアナログ信号処理では実現が困難であった実時間での高品質な信号再生が実現でき、遅延が少なく高品質かつ高信頼な超高速光通信を実現できます。

*3:基幹光ネットワーク
 ユーザに近い順番にアクセスネットワーク、メトロネットワーク、ならびにコアネットワークという階層的な構造をもち、上位の階層に進むにつれて、より経済的、効率的に情報を転送するために多重化され、大容量の情報を束で扱うよう構成された光ファイバを用いた広帯域なネットワーク。

*4:位相
 光は電波と同じように波としての性質をもっています。この波の振動するタイミングを位相と呼びます。波は周期的に振動していますので、位相は0〜360度までの自由度をもっています。この自由度を使って、異なる位相(たとえば0度と180度)にデジタルテータの1,0を対応させ受信側でその位相の差を検出することで従来の光のON/OFFのみを使う方式に比べて高感度受信による長距離化や、高効率な通信による大容量化が可能となります。このような通信方式を位相変調と呼び、電気通信では一般的に用いられています。

*5:偏波
 光は電波と同様に、2つの独立な振動方向(X軸とY軸)があります。この独立な軸のことを偏波といい、3D映画ではよくこのような性質を使って、右目と左目に異なる情報を送って立体的映像を実現しています。従来の光通信では、受信側で2つの偏波の向きを安定に検出することが困難であったため、どちらか一方の偏波成分しか利用することができませんでした。DSPを駆使したデジタルコヒーレント技術では、受信側で2つの独立な偏波方向を安定に分けることができるため、各々の偏波に独立な情報を乗せて通信できるようになり効率な大容量伝送が実現できます。

*6:フィールド試験環境
 フィールド環境とは、ネットワークサービスを提供するために用いられている商用試験装置が配置されている局舎設備や光ファイバケーブル設備のことを呼んでいます。敷設された光ファイバケーブルでは、温度や保守者の運用により偏波状態や偏波モード分散等が複雑に変化するため、実験室では再現が難しい環境変動が起こります。デジタルコヒーレント技術はこのような環境変動に適応的に対応する制御を行っているため、高い信頼性を実現するためには、このような実運用環境下での試験が必須となります。上述した実運用と同じ環境下で試験を行う環境をフィールド試験環境と呼んでいます。

*7:偏波モード分散
 光ファイバは髪の毛より細い光ファイバの中心部に配置されたコアとよばれる円形の石英ガラスの部分に光を閉じ込めて長距離伝送します。コアの断面は理想的には真円形状であるため、理想的には光ファイバは、独立な2つの偏波方向によらない均一な特性を有します。しかしながら、製造時の真円形状からのばらつきや光ファイバケーブル敷設時の応力、ケーブル温度等により、2つの偏波によって伝搬速度がわずかに変化し、この伝搬時間の差が環境により速い速度で変動します。この伝搬時間のずれを偏波モード分散と呼びます。40Gbps以上の超高速光通信では、偏波モード分散により光波形ひずみが顕在化し、従来方式のON/OFF変調方式を用いた場合、伝送距離が著しく制限されます。DSPを用いたデジタルコヒーレント技術では受信側で2つの偏波を区別することができるため、偏波モード分散による波形ひずみを受信側で完全に取り除くことが可能です。


 ※以下の資料は、添付の関連資料を参照
  ・図1(a) 従来技術の光送受信方式
  ・図1(b) 新技術のデジタルコヒーレント光送受信方式
  ・図2 DSPを用いた高速自動設定機能のフィールド検証
  ・図3 DSPを用いた高速自動設定実験
  ・参考 技術用語:デジタルコヒーレント技術

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