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東北農業研究センター、東北地域の栽培に適したハトムギ新品種「はときらら」を育成
東北地域向けハトムギ新品種「はときらら」
−寒冷地でも収量が安定し、機械収穫が容易なハトムギです−
〔ポイント〕
・熟期が早いため、寒冷地においても現行の品種より収量が安定しているハトムギの新品種です。
・草丈が短いため、機械収穫作業が容易にできます。
・ハトムギ茶への加工適性は、現行の品種と同程度に優れます。
【概要】
1.農研機構 東北農業研究センター【所長 小巻 克巳】は、東北地域の栽培に適したハトムギ新品種「はときらら」を育成しました。
2.東北地域の主力品種「はとじろう」や「はとゆたか」は冷夏の影響などで成熟期に達せず、減収することがありましたが、「はときらら」は熟期が早いため、これまでの品種よりも成熟期に達しやすく、収量が安定しています。
3.「はときらら」は従来の品種より草丈が短いため、機械収穫の際、刈り取りしやすい上、内部で茎葉が詰まりにくいため、機械収穫作業が容易です。
4.ハトムギ茶への加工適性は「はとじろう」と同程度に優れます。
<関連情報>
予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第25901号
【新品種育成の背景・経緯】
ハトムギは耐湿性があり湿田でも栽培可能なことから、水田転作作物として栽培され、主にハトムギ茶として利用されています。産地では地域特産作物として重要な位置を占め、商品開発を行い特産品として加工・販売も行っています。そのため、安定供給、収益向上の面から収量性の高い品種が要望されています。
ハトムギは生育可能な気温が比較的高いため、寒冷地においては、特に冷夏では生育の遅延により成熟期に達しない場合があり、より熟期の早い品種が必要です。また、機械収穫をより効率的に行うために更に短稈の品種が求められています。そこで、ハトムギ生産の安定化と省力化を図るため、熟期が早く、草丈が短く、機械収穫適性の高い品種を育成しました。
【新品種「はときらら」の特徴】
1.「はときらら」の母親は早生・短稈系統の「東北1号」で、父親は極早生・極短稈品種の「オホーツク1号」です。平成7年に東北農業試験場資源作物育種研究室(現:農研機構東北農業研究センター畑作園芸研究領域)において人工交配し、15年間選抜を重ねて育成しました。
2.成熟期は「はとじろう」、「はとゆたか」より10〜14日早い早生で(表1)、冷害年でも成熟に達します(表2)。
3.草丈は「はとじろう」と「はとゆたか」より約20〜30cm短桿です(表1、写真1)。耐倒伏性は「はとじろう」や「はとゆたか」と同じく“中”で、葉枯病抵抗性は「はとじろう」や「はとゆたか」と同じ“やや弱”です(表1)。
4.殻実収量は「はとじろう」と同程度かやや多収です(表1、図1)。脱粒性は「はとじろう」と同程度で“易”です(表1)。
5.百粒重は「はとじろう」や「はとゆたか」より軽く(表1)、殻実の色は“茶褐色”であり、殻実の形は「はとじろう」が“長楕円”であるのに対し「はときらら」は“楕円”です(写真2)。
6.ハトムギ茶への加工については、加工適性や製品歩留は「はとじろう」と同等であり、味や香りなどの品質も「はとじろう」と同じく“良”です(表3)。
【品種の名前の由来】
「はときらら」は、熟期が早い、草丈が短いなど、キラッと光る特性を持ったハトムギ品種であることを意味しています。
【用語の解説】
※添付の関連資料を参照