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東大、「第二安定領域」という計算科学における現象を発見

2011-11-25

第二安定領域:計算科学における現象の新発見



<発表者>
 ロバート・ゲラー(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 教授)


<発表概要>
 東京大学ロバート・ゲラー教授の研究グループは、「第二安定領域」という今まで知られていなかった計算科学における現象を発見しました。この発見は、地震波伝播計算の新しい手法開発の研究途上で得られたもので、その新手法は今後の地球内部構造や資源開発の研究に大きな進歩をもたらすことが期待されます。ゲラー教授の研究グループは、東京大学と油田探査大手シュルンベルジェ社からの研究者で構成されています。この新発見は、英国の地球物理専門誌「ジオフィジカル・ジャーナル・インターナショナル」のウェブサイトに掲載される予定です。

 新たに発見された計算科学的現象は、ゲラー教授のグループにより開発された、高精度化した有限差分法と呼ばれる手法を用いた、地震波伝播の数値シミュレーションに現れました。有限差分法は一定の時間間隔(タイム・ステップ、Δtと書く)で時間進行することにより地震波の伝播を計算する手法です。現在の時刻(t)と1ステップ前(過去:t−Δt)の地震波を用いて、1ステップ先(未来:t+Δt)の地震波を計算します。一般的には、有限差分法のアルゴリズムでは、計算に用いる時間間隔Δtが大きくなると、(手法の詳細によって若干異なりますが)ある一定の時間間隔(上限 Δt1と呼ぶ)を超えた場合計算が急に安定から不安定に変化します。この0≦Δt≦Δt1の範囲は安定領域と呼ばれています。

 しかしながら、ゲラー教授らが開発した手法では、安定領域を越えて時間間隔を更に増やし、ある特定の値(Δt2と呼ぶ)を超えると、計算は急に不安定からまた安定に変わります。さらに時間間隔を大きくし、ある特定の限界(Δt3と呼ぶ)を超えると、もう一度計算が不安定になります。このΔt2≦Δt≦Δt3の領域を「第二の安定領域」と呼びます。第二の安定領域の存在は今まで知られていませんでした。なお、定数Δt1、Δt2、Δt3は媒体の弾性定数、密度及び空間格子間隔によります。

 「ジオフィジカル・ジャーナル・インターナショナル」に掲載されるゲラー教授らの研究成果は、単純な均質媒体におけるものですが、第二安定領域の存在は、計算科学における新しく、魅力的で、全く予期されなかった発見です。また、この研究成果は、弾性定数や密度が均質でない媒体における新しい計算手法の安定性の検証に役立つと期待されています。


<発表雑誌>
 Geophysical Journal International(英国)

 タイトル:
  Existence of a second island of stability of predictor‐corrector schemes for calculating synthetic seismograms

 著者:
  Robert J.Geller,Hiromitsu Mizutani,and Nobuyasu Hirabayashi


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