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東京商工リサーチ、上場企業対象の「2011年9月中間決算業績予想の修正」調査結果を発表

2011-11-15

上場754社「2011年9月中間決算業績予想の修正」調査
〜売上、利益とも6割が上方修正「震災」「円高」の影響は想定内に落ち着く〜



 上場企業の2011年9月中間期の決算発表がピークを迎えているが、10月31日までに上場企業754社が同決算の従来見通しを修正した。754社の修正前売上高の合計は48兆1,718億円で、修正後の合計額は49兆2,626億円と1兆907億円増加(2.3%増)した。また、純利益は修正前合計が7,337億円だったが、修正後合計は1兆1,099億円と、3,759億円増加(51.3%増)した。
 東日本大震災の影響で業績修正した企業は145社(構成比19.2%)、うち78社は下方修正、67社が上方修正だった。また、円高を一因とした業績予想修正は80社(上方修正6社、下方修正74社、構成比10.6%)で、1割に過ぎなかった。
 *集計対象は、3月期決算の全上場企業で、10月1日から10月31日までに発表された業績予想の修正状況を調査した。原則として連結ベースで、複数回開示企業は直近の予想修正を採用した。


<業績予想修正は754社>
 10月1日から10月31日までに2011年9月中間決算の業績予想を修正した企業は754社だった。3月期決算の上場企業2,527社の約3割(構成比29.8%)を占める。754社の業種内訳は、製造業が296社(構成比39.3%)で最も多く、次いでサービス業他が128社(同17.0%)、卸売業87社(同11.5%)、情報通信業74社(同9.8%)、建設業51社(同6.8%)、金融・保険業43社(同5.7%)、小売業31社(同4.1%)、運輸業24社(同3.2%)、不動産業19社(同2.5%)、農・林・漁・鉱業1社(同0.1%)だった。


<売上高、純利益ともに6割が上方修正>
 754社の修正前売上高の合計は48兆1,718億円だったが、修正後の合計額は49兆2,626億円と、1兆907億円増加(2.3%増)した。増収の上位10社では、トップが第一生命保険、次いで日立製作所、T&Dホールディングスの順で、金融関連が3社を占めた。純利益は修正前の合計で7,337億円だったが、修正後は合計1兆1,099億円と3,759億円増加(51.3%増)した。
 754社のうち、売上高を上方修正したのは455社(構成比60.3%)に対し、下方修正は270社(同35.8%)で、上方修正が大幅に上回った。また、純利益の上方修正も481社(同63.8%)と約6割を占め、下方修正は241社(同32.0%)にとどまった。
 売上高、純利益のいずれも上方修正が6割を占めたが、売上高と純利益がそろって上方修正したのは329社(構成比43.6%)だった。一方、そろって下方修正したのは120社(同15.9%)で、業種別では、製造業65社(構成比54.1%)、サービス業19社、卸売業10社、建設業9社。
 なお、754社のうち、黒字予想から今回の赤字予想に転落したのは47社(同6.2%)で、逆に赤字予想から黒字予想に上方修正したのは40社(同5.3%)と、ほぼ拮抗した。

 〔754社の業種内訳/業績予想の修正状況〕

  *表・グラフ資料は添付の関連資料を参照


<上場145社が震災の影響を受け業績修正上方修正は4割超>
 9月中間決算の業績予想を修正した754社のうち、東日本大震災の影響を修正理由の一つにあげたのは145社(構成比19.2%)だった。うち78社(構成比53.8%)が、震災による売上減や災害関連損失の計上などで、売上もしくは利益予想を下方修正し、上方修正は67社(同46.2%)だった。
 下方修正78社の修正理由は、「受注減、販売機会の減少などによる売上・利益の減少」69社(構成比88.4%)が圧倒的に多かった。このほか「災害関連損失の計上」3社(同3.8%)、「節電対応によるコストアップ」2社(同2.5%)、その他4社(同5.1%)だった。
 上方修正した67社の修正理由で最多は、「震災の復興需要による売上・利益の増加」が34社(構成比50.7%)で半数を占めた。また、震災後の防災意識の高まりから、「災害関連用品や食品など扱い品の販売伸長」も28社(同41.7%)あり、この2項目で9割を超えた。このほか、「震災で売上・利益計上時期にズレが生じた」のが5社(同7.4%)、「夏の節電などによるコスト削減」3社(同4.4%)などがあった。(重複集計のため、構成比合計は100%を超える)
 上方修正の業種別では、製造業のほか卸売業、サービス他、建設業、運輸業などで目立った。

 2011年3月期本決算の業績予想の修正は708社だった(前回、5月11日調査)。このうち、震災による影響を受けたのは305社(構成比43.0%)で、今回の中間決算では145社に半減した。また、前回の305社のうち、下方修正が300社(同98.4%)だった。今回は145社のうち下方修正が78社だったのに対し、上方修正は67社と拮抗した。
 震災から半年を経過し、サプライチェーンの寸断から早期に回復したことを背景に、震災の影響による下方修正は300社から78社へ、3分の1に激減した。また、震災直後の3月期決算の発表時に、大半の企業が今期業績を保守的に予想したためとみられる。一方、上方修正の企業は大幅に増え、復興需要による受注増や震災後のライフスタイルやニーズの多様化が、業績アップに寄与したケースも見られた。


<円高による影響は軽微? 下方修正は74社と全体の1割以下>
 円高を修正理由にあげた企業は754社のうち、80社(構成比10.6%)にとどまった。このうち74社が売上もしくは利益面での下方修正で、6社が上方修正だった。
 下方修正74社は、為替差損の計上や海外販売の低下などが中心で、業種別では製造業49社(構成比66.2%)が約7割を占めた。次いで、卸売業9社(同12.1%)、建設業7社(同9.4%)、運輸業4社(同5.4%)の順。
 上方修正した企業は、海外からの原材料調達が有利に働いたエネルギー関連が3社(構成比50.0%)、製造業3社(同50.0%)の6社のみ。円高が輸出依存型の国内企業の足かせとなっている姿が浮き彫りとなった。
 円高による業績修正は80社で、このうち下方修正は74社と全体754社の約1割にとどまった。歴史的な円高が長引くが、輸出企業を中心に想定為替レートの見直しで業績予想は落ち着いてきたようだ。しかし、円高の進行・継続が海外売上の減少や利益圧迫など、多くの企業に負担となっている状況に変わりなく、大手メーカーでは大幅な利益減少を強いられた企業も目立った。また、円高による国内下請け企業へのしわ寄せも強まっており、産業空洞化や雇用問題を含め、まだ為替相場の動向には目が離せない。



 業績予想の修正は、期初の見通しに対して「想定外の要因」が業績に影響を与えた場合に生じる。現在の日本では、「震災」と「円高」が大きな要因だが、上場企業は業績への影響をある程度織り込んで見通しを立てていることがわかった。
 しかし、欧州経済の信用不安や10月以降に本格化したタイの洪水被害など、新たなリスクも顕在化しており、再び下期及び通期での企業業績への影響が注目されている。


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