Article Detail
富士キメラ総研、国内コミュニケーション関連市場の調査結果を発表
通信機器/システム、通信サービス
国内コミュニケーション関連市場を調査
15年度のスマートフォン市場は10年度比5.0倍 3,550万台。ケータイ(※)の96%がスマホに
※ケータイ=携帯電話端末(PHS端末含む)
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 田中 一志 03−3664−5839)は、メールやSNS、Twitter、FaceBookなどといったコミュニケーションツールの多様化、スマートフォンやタブレット端末投入の加速、クラウドコンピューティングの本格化、さらには東日本大震災の影響を受けるなど、目まぐるしく変化する国内のコミュニケーション(通信)関連市場を調査した。その結果を報告書「2011 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧 上・下巻」にまとめた。
この報告書は、上巻では通信機器/システム市場を、下巻では通信サービス市場を調査分析し、今後を展望した。
<国内注目市場>
1.スマートフォン、タブレット端末(モバイル通信関連製品)
2010年度 2011年度見込 2015年度予測 2010年度比
スマートフォン 705万台 1,900万台 3,550万台 503.5%
3,090億円 8,290億円 1兆3,800億円 446.6%
タブレット端末 105万台 290万台 500万台 476.2%
350億円 1,150億円 1,880億円 537.1%
■スマートフォン
2010年度の市場は前年度比3.8倍の705万台となった。アップルジャパンの「iPhone」がほぼ独占していた市場に、NTTドコモの「Xperia」をはじめ、各社より新製品が相次いで発売されことにより拡大が加速した。
スマートフォンはワンセグやおサイフケータイなどの機能の搭載、非タッチパネル式やスライド式、フルキーボードなどといったラインアップの増加、パケット定額制料金の値下げ、LTEやWiMAX対応による高速化が見込まれ、端末及びサービス面で魅力度が増している。通信キャリアはスマートフォンがデータARPU(加入者一人あたりの月間売上高)増加に寄与することから端末割引制度を開始し、発売時期、新規/機種変更といった条件によるが、フィーチャーフォンよりも安価に購入できるようにしている。そして今後も積極的に発売していく方針である。また、端末メーカーも汎用OSを採用することで開発コストを抑えられるスマートフォンに今後一層注力していくと見られる。
2011年度は通信キャリアから発売される新機種のうち半数以上がスマートフォンになる見込みである。今後も市場は拡大し、「らくらくホン」のような簡単ケータイや音声メインの用途といった特定のニーズ以外はスマートフォンに置き替わり、携帯電話端末(PHS端末含む)市場の95.9%(台数ベース)を占めると予測される。
■タブレット端末
タブレット端末はスマートフォンとPCの中間にあたる情報端末で「iPad2」「Optimus Pad」「MOTOROLA XOOM」などを対象としている。市場は2010年5月にアップルジャパンから「iPad」が発売されたことで本格的に立ち上がった。タブレット端末は3G通信機能を搭載した3Gタイプと無線LANを搭載したWi−Fiタイプがあり、現状はランニングコストのかからないWi−Fiタイプが主流になっている。
2010年度の市場は前年度比21倍の105万台となった。個人(個人ユーザー)市場は手軽にブラウジングやコミュニケーションツールを利用できる端末として拡大し、Wi−Fiタイプが中心になると見られる。法人(法人ユーザー)市場は通信キャリアが積極的な販促を行っており、営業販促ツール(プレゼン、営業支援、社内情報共有等)としての導入が進むと見られる。
2.公衆無線LANサービス(インターネット接続サービス)
2010年度 2011年度見込 2015年度予測 2010年度比
32億円 46億円 131億円 409.4%
公衆無線LANサービス(通称ホットスポットサービス)は、駅や空港、ホテル、カフェ、ファストフード店や街角などで、インターネットに接続できる環境を提供するワイヤレスブロードバンドサービスである。
従来このサービスを利用する端末の中心はノートPCであったが、ノートPCはシステムの立ち上がりに一定の時間がかかることや可搬性が高くないことなどから需要も限定的で、市場は伸び悩んでいた。しかし、無線LAN機能を搭載し、可搬性が高いスマートフォンやタブレット端末が普及しはじめたことでサービス利用者が増加しており、市場が拡大している。
今後も市場はスマートフォンやタブレット端末の普及に伴い拡大すると予想される。ただし、想定を上回る通信トラフィックの増大から、サービス品質を保つためにはインフラ拡充の必要性が高まってきている。また、通信キャリアでは、スマートフォンの普及により3G回線の通信トラフィックが増大していることなどから、データのオフロードを目的としたスマートフォンのWi−Fi接続を推進していく動きが見られる。各通信キャリアによりフリースポットの提供や拡充が進められていることから、有償であるこのサービスの競合になるという見方もできるが、ユーザーのWi−Fiの認知度が高まることで需要拡大にもつながる期待もあるため、一概に市場拡大の阻害要因になるとは言えない。料金体系としては完全定額制が主流であるが、スポット的な利用の場合には時間制や従量制のニーズも根強い。
3.M2Mサービス(移動体通信サービス)
2010年度 2011年度見込 2015年度予測 2010年度比
175億円 196億円 587億円 335.4%
M2Mサービスは携帯電話、PHS、WiMAXといった通信モジュールを搭載した機器同士のワイヤレス通信サービスで、ここでは主に法人市場で利用されるものを対象とし、市場は機器間のデータ通信に利用される通信サービスの利用料金のみを対象とした。
市場は自動販売機やエレベーター、コピー機、運行管理を目的とした車載器に通信モジュールが搭載されるようになり拡大してきた。電気やガス、水道などのメーター検針や決済端末などでの利用も増加していることに加え、近年は通信速度が向上していることや通信モジュールの小型・軽量化、省電力化といった技術革新によりアプリケーションが広がっており、市場が拡大している。
現状、様々な用途が検討・提案されており、数千万単位の導入が期待できるスマートメーターや、家電などへの搭載も見込まれることから、長期的には携帯電話端末(PHS端末含む)の契約数を凌ぐ規模に成長すると予想される。
<調査結果の概要>
1.国内コミュニケーション関連市場
※参考資料は添付の関連資料を参照
■通信機器/システム
2010年度の市場は前年度比4.8%増の3兆927億円となり、2015年度には2010年度比1.6%減の3兆419億円が予測される。特に、設備投資が一段落する移動体基地局の市場縮小が影響する。
2015年度に向け拡大するのは会議関連システム、モバイル通信関連製品、音声関連製品である。会議関連システムは各品目ともに新設、増設需要を獲得し拡大している。今後も品質面の向上、低価格化などにより高成長を維持すると見られる。モバイル関連製品は携帯電話端末(PHS端末含む)でフィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが急速に進んでいる。また、2010年度から各通信キャリアが注力するWi−Fiモバイルルータが急速に伸びている。タブレット端末の登場も相乗効果となっている。今後携帯電話端末(PHS端末含む)は安定的な買い替え需要に支えられ横ばいで推移し、タブレット端末は営業販促ツールとして法人への導入が見込まれることから拡大すると見られる。
■通信サービス
2010年度の市場は前年度比0.3%減の12兆1,369億円となり、2015年度には2010年度比7.7%増の13兆713億円が予測される。固定データ通信サービスと音声関連サービス以外は2015年度に向けて拡大する。
最も規模の大きい移動体通信サービスは、音声ARPUの減少が続いているが、スマートフォンの好調によりデータARPUが増加している。今後もスマートフォンを中心としたデータ通信利用拡大によるデータARPUの増加で拡大が続くと見られる。移動体通信サービスに次いで規模の大きいインターネット接続サービスは、ADSLサービスなどからFTTHサービスへの移行により拡大している。今後FTTHサービスはブロードバンドサービスの需要成熟化と、低速/安価なサービスへの根強い需要との競合により、成長は鈍化すると見られる。2015年度に向け最も伸び率が高いのがコミュニケーションサービスである。コミュニケーションサービスは会議サービスやソーシャル系サービスが拡大している。今後会議サービスの成長は鈍化するが、ソーシャル系サービスは堅調に成長すると見られる。
□東日本大震災の影響と通信機器ベンダ、通信キャリアの対策
通信機器ベンダは工場や生産設備の損壊、電力不足といった被害を受けた。また、通信デバイスベンダも被災したためマイコン、コンデンサ、バッテリー、コネクタといった通信機器デバイスが入手難となった。通信キャリアは保有する通信ビルや基地局、伝送路に直接的な被害を受けた。また、電源不足などにより被災地周辺でのサービス提供が難しくなったほか、通信トラフィックが爆発的に増大したことで一部の通信サービスに利用規制をかける必要が生じた。
被害を受けて、通信機器ベンダの中には生産工場やサプライチェーンの見直しを検討しているところもある。一方、ベンダによってはサプライチェーンの二重化を徹底しているところもある。
通信キャリアは通信インフラの復旧のほか、基地局の大ゾーン化や衛星回線の利用による通信手段の確保、また、災害用伝言板サービスの提供や携帯電話の無償貸し出しなどの対応も行われた。各キャリアの迅速な取り組みにより、物理的に復旧が困難な地域以外は震災後1ヶ月程でほぼ復旧に至っている。震災時の通信トラフィックの混雑時にはSNSなどのインターネットサービスやパケット通信の有用性が見直されたため、この技術を用いて災害時向けのサービス提供を検討する動きも見られる。
<調査対象>
通信機器/システム(38品目)
ネットワーク関連製品(20)、音声関連製品(7)、会議関連システム(3)、モバイル通信関連製品(5)、移動体基地局(3)
通信サービス(34サービス)
インターネット接続サービス(7)、移動体通信サービス(5)、固定データ通信サービス(6)、国際通信サービス(3)、音声関連サービス(5)、コミュニケーションサービス(7)、映像配信サービス(1)
<調査方法>
富士キメラ総研専門調査員による参入企業・関連団体などへの直接面接取材を基本とし、社内データベースも活用
<調査期間>
2011年6月〜9月
以上
資料タイトル:「2011 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧 上・下巻」
体 裁 :上巻 A4判 352頁、下巻 A4判 316頁
価 格 :各97,000円(税込み101,850円)
CD−ROM付価格 各107,000円(税込み112,350円)
調査・編集 :富士キメラ総研 研究開発本部 第二研究開発部門
TEL:03−3664−5818 FAX:03−3661−5275
発 行 所 :株式会社 富士キメラ総研
〒103−0001東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 F・Kビル
TEL03−3664−5839(代) FAX 03−3661−1414
e−mail: info@fcr.co.jp
この情報はホームページでもご覧いただけます。
URL: http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
http://www.fcr.co.jp/