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東大、圧電材料中ナノドメインの応答をリアルタイムで直接観察することに成功
画像診断装置の高性能化へ
−世界初、圧電材料中ナノドメインの応答をリアルタイムで直接観察−
1.発表者:佐藤 幸生(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 助教)
幾原 雄一(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 教授)
2.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構の佐藤幸生助教、幾原雄一教授の研究グループは財団法人ファインセラミックスセンターナノ構造研究所(平山司所長代理)と共同で、代表的な圧電材料の1つである圧電セラミックス(PMN−PT)の単結晶に電圧を加えた際にドメインと呼ばれる微小な領域が応答する様子を、「その場透過型電子顕微鏡法」によりリアルタイムで直接観察することにはじめて成功しました。今回得られた観察結果は圧電特性が発現するメカニズムの理解につながるだけでなく、今後の材料開発に拍車をかけ医療分野の発展に貢献することが期待されます。本研究の成果は平成23年10月25日(米国時間)に科学雑誌「フィジカルレビューレターズ」のオンライン版にて公開されます。
3.発表内容:
*添付の関連資料を参照
4.用語解説:
(注1)超音波プローブ:
超音波を使って画像診断を行う超音波検査装置の主要な構成部品である。圧電特性(注2)を利用して超音波を発生させて体内などに送り、体内の組織などで反射した超音波を受けて検出する。
(注2)圧電材料:
機械的な力を加えた際にプラス・マイナスの電気が発生する効果および逆に電圧を加えた際に材料が変形する効果を圧電特性と呼び、そのような特性を有する材料を圧電材料と呼ぶ。
(注3)PMN−PT:
PMN−PTはマグネシウムニオブ酸鉛(化学式:Pb(Mg1/3Nb2/3)O3,略してPMN)およびチタン酸鉛(化学式:PbTiO3,略してPT)を均一に混ぜた物質である。特に、チタン酸鉛の割合が3割程度になるようにしたもので圧電特性が非常に高くなる。
(注4)ドメイン:
PMN−PTなどの圧電材料では材料の中がドメインと呼ばれる小さな領域に分かれている。
例えば、下の図5(a)に示すように材料が色の違う領域に分かれ、それぞれが1つ1つのドメインを示す。ドメインは元々同じ形をしていた材料が違う方向に伸びたり縮んだりして形が変わることによって生じる。また、それと同時に材料の中で原子の位置がずれてプラス・マイナスの電気(電気分極)が発生する。図5(b)に示すような隣り合うドメインでは、伸び縮みや電気分極の方向が異なる。
PMN−PTの場合、1つのドメインの幅がわずか数十ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの百万分の1の長さ)程度の大きさであるので、ナノドメインと呼ぶ。
*図5は添付の関連資料を参照
5.発表雑誌:
雑誌名:
「Physical Review Letters」:10月25日(オンライン版)、10月28日号(印刷版)
論文タイトル:
“Real−time direct observations of polarization reversal in a piezoelectric
crystal:Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3 studied via in situ electrical biasing transmission
electron microscopy”
「その場透過型電子顕微鏡法による圧電結晶Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3 中の分極反転リアルタイム直接観察」
著者:Yukio Sato, Tsukasa Hirayama, Yuichi Ikuhara,