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日立、次世代高速光インタコネクト向け低消費電力・小型光送信器を開発

2011-09-27

次世代高速光インタコネクト向け低消費電力・小型光送信器を開発

通信距離100mで従来比2.5倍の毎秒25ギガビットによるデータ伝送に成功


 株式会社日立製作所(執行役社長:中西宏明/以下、日立)は、このたび、データセンタに設置したサーバやストレージなどのIT装置間や装置内の配線を光通信化する、次世代高速光インタコネクト向け低消費電力・小型光送信器を開発しました。本送信器とすでに開発済みの受信器を用いた伝送実験を実施した結果、通信距離100mで従来比2.5倍の毎秒25ギガビットによるデータ伝送に成功しました。また、毎秒1ギガビット当たり9mWの低消費電力で動作可能なことも確認しました。本送信器は、日立のレンズ一体型半導体レーザを光源に用い、レーザ駆動回路にシリコン半導体(CMOS)(*1)を採用し、レーザの構造と回路の構成を最適化することにより、低消費電力化・小型化を実現しました。
 今回の実験では、チャネルを1つのみで実験を実施しましたが、今後、実用化に向け4チャネル化したモジュールを開発することにより、毎秒100ギガビットの装置間・装置内の光伝送の実現をめざします。

 家庭用光ファイバ通信サービス(FTTH)(*2)などのブロードバンド技術の普及に伴い、光ファイバ通信網の情報伝送量が、今後ますます増大することが見込まれています。こうした中で、データセンタに設置されているIT装置間や各装置内の機器の配線についても、伝送速度の高速化が同様に求められています。従来の電気配線では、データ伝送速度が毎秒10ギガビットに達すると、信号の劣化損失が大きくなり1m以上の距離の通信が困難になることから、信号の劣化損失が小さい光ケーブルの導入が始まりつつあります。しかしながら、IT装置内で光ケーブルによる通信を行うためには、その送受信器を電気配線のコネクタと同じレベルまで小型化すると同時に、コスト低減のための低消費電力化が必要になります。これらを実現するためには、小型の半導体レーザと半導体CMOS回路を用いて、小型・低消費電力の光送受信器を開発する必要があります。
 従来、毎秒10ギガビットの光送受信器は開発されていましたが、日立は今回、新たに技術的改良を重ね、小型の半導体レーザとCMOS回路を用いた毎秒25ギガビットの送信器の開発に成功しました。
 試作した小型光送信器の特徴は以下の通りです。


(1)高速・低消費電力半導体レーザ
 光送受信器には一般的に、光信号を生成する半導体レーザと、光信号を光ファイバに接続する際に光信号を収束させ光信号の損失を抑制するための外部レンズが使用されています。日立では、すでに毎秒10ギガビットの速度で動作するレンズ一体型半導体レーザを開発し、半導体レーザの生成装置の小型化を実現しています。
 今回は、さらなる高速・低消費電力化のため、レーザ光の生成に必要な共振器の長さを25%短縮する一方、共振器内部における光の反射率を向上させることにより、低電流でより高速の光信号が生じるよう最適化しました。これにより、送信器の動作速度を毎秒25ギガビットと高速化すると同時に、動作電力を約2分の1に低減させることができました。


(2)低消費電力CMOSレーザ駆動回路
 毎秒25ギガビットという高速度においても、レーザ光を安定的に信号に変換(変調)することが可能な低消費電力CMOSレーザ駆動回路を開発しました。
 レーザ光を信号に変換する速度(変調速度)が毎秒25ギガビットまで達すると、製造ばらつきのために配線毎の周波数特性の差異が大きくなってしまうため、レーザ波形の品質が劣化してしまいます。そこで、配線ごとの周波数特性を調整する機能を駆動回路に加えることにより、毎秒25ギガビットにおいても良好な品質の波形を生成することが可能になりました。また、CMOS回路を採用したことにより、消費電力の30%低減、および回路面積の35%低減を実現しました。

 今回試作した送信器と、すでに開発済みの受信器を組み合わせて伝送実験を行ったところ、毎秒25ギガビットで距離100mのデータ伝送に成功しました。また、毎秒1ギガビット当たりで、送信器で6.3mW、受信器で2.7mW、送受信合わせて9mWの低消費電力動作が可能なことを確認しました。なお、今回の伝送実験には、IT装置との接続が容易なことを特徴とするマルチモード光ファイバ(*3)を、日立電線株式会社から提供を受け利用しました。
 本技術は、小型化を実現したことから、IT装置間の光伝送と装置内機器の配線の双方に適用することが可能です。また、今回は、1チャネルで実験を実施しましたが、今後、これを実用向けに4チャネル化したモジュールを開発することにより、毎秒100ギガビットの高速度による装置間および装置内の光伝送の実現をめざします。

 本研究は、2011年9月18日から22日まで、スイス連邦ジュネーブで開催される光通信の国際会議「ECOC(European Conference and Exhibition on Optical Communication)」において、9月21日(現地時間)に発表します。
 なお、本研究における成果の一部は、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)が独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託したプロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」によるものです。

*1 CMOS: Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)の略で、消費電力が小さいという特徴を持ち、論理回路の基本要素となる半導体ゲート構造。微細化技術の進展によって高速化が進み、デジタル‐アナログ変換回路ほかに適用が進んでいる。
*2 FTTH: Fiber To The Homeの略で、光ファイバを用いた家庭向けの通信サービスの総称。
*3 波長1.3μmの光信号に対して、伝送品質を劣化する要因の1つとなるモード分散現象を従来の約3分の1に抑制したもの。


 ※参考画像は添付の関連資料を参照

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