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カゴメ、トマトの加熱調理によりリコピンの体内への吸収・蓄積が増加することを確認
トマトの加熱調理により、リコピンの体内への
吸収・蓄積が増加することを確認
カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、動物試験において、トマトを加熱調理することにより、リコピンの体内への吸収・蓄積が増加することを明らかにしました。トマトの加熱調理やトマト加工品の利用により、リコピンの効率的な摂取が期待されます。
なお、本研究内容は日本食品科学工学会第58回(2011年)大会(9月9日〜9月11日、東北大学)において発表致しました。
■カゴメ研究者のコメント
トマトに含まれる赤い色素であるリコピンは、活性酸素を消去する抗酸化作用などを有することが明らかになっています。リコピンは体内に吸収されにくく、油や牛乳と一緒に摂取することで吸収が向上することが知られています。今回の研究では、トマトを加熱することでリコピンが体内へ吸収・蓄積されやすくなることがわかりました。これは、加熱によりトマトの細胞が壊されてリコピンが細胞の外に取り出され、リコピンの構造が体内に吸収されやすい形(トランス体からシス体)に変化することによるためと考えられます。トマトに含まれるリコピンを効率的に吸収・蓄積するために、トマトの加熱調理やトマト加工品の利用をお勧めします。
■研究の背景
リコピンは体内へ吸収されにくいことが知られていますが、体内に効率的に吸収・蓄積されることで、より一層の疾病の予防や老化の遅延が期待できます。リコピンが吸収されにくい理由のひとつがリコピンの構造にあると考え、実験を行いました。トマトに含まれるリコピンは、調理などで与えられる熱には強く、すぐには分解されませんが構造が変化(トランス体からシス体へ変化)することが知られています。本研究では、加熱状態でリコピンの構造変化(トランス体からシス体への変化)の比率が異なる飼料をスナネズミに7日間投与して、吸収・蓄積量を比較しました。
■研究概要
≪目的≫
リコピンの構造変化(トランス体とシス体への変化)の違いが、リコピンの吸収・蓄積に与える影響を調べることを目的としました。
≪内容≫
餌のリコピンの構造比率(トランス体とシス体の比率)が異なる飼料を調製しました。飼料は、加熱調理していない低シス群(シス体リコピン濃度0.08mg/100g)と加熱調理した高シス群(同0.52mg/100g)に分類しました。どちらの飼料も総リコピン含量は1mg/100gでした。
これらの飼料を、スナネズミ(雄、8週齢、各群7匹)に投与し、投与開始後3、7日目に解剖し、肝臓中のリコピン濃度を測定しました。
肝臓中のリコピン濃度を比較したところ、高シス群は低シス群に比べ、3日目、7日目のいずれも有意に高い値を示しました。これより、トマトの加熱調理により、リコピンは効率的に吸収・蓄積することが示唆されました。
<図 スナネズミ肝臓中リコピン濃度>
※添付の関連資料を参照
≪まとめ≫
本研究では、加熱調理した高シス群は加熱調理していない低シス群に比べ、肝臓中のリコピン濃度が有意に高くなっていました。ヒトにおいてもリコピンを加熱調理し、シス化することで、より効率的に体内に取り込むことができると考えられます。
本研究の結果より、トマトの加熱調理や、加熱調理したトマト加工品(トマトケチャップやミートソースなど)の利用で、リコピンを効率的に体に取り込めることが期待できます。
※「用語の説明」などは、添付の関連資料を参照
以上