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日立、16値光多値伝送方式の長距離光ファイバ通信向け信号処理技術を開発

2011-09-26

市販半導体レーザを用いた16値光多値伝送方式の

長距離光ファイバ通信向け信号処理技術を開発


 株式会社日立製作所(執行役社長:中西宏明/以下、日立)は、このたび、都市間を結ぶ長距離光ファイバ通信において、従来に比べ4倍のデータを伝送する16値光多値伝送方式の実用化に不可欠な信号処理技術を開発しました。

 長距離光ファイバ通信のさらなる大容量化のために、光多値伝送方式(*1)が注目されています。光源に高品位なレーザを使う伝送実験では、データの送受信が確認されていますが、光源に市販の半導体レーザを用いた場合、レーザ光の位相雑音(*2)(波形の揺らぎ)により伝送品質が劣化してしまうという課題がありました。そこで、日立は、市販のレーザを用いた光多値伝送において、位相雑音の影響を低減する信号処理技術を開発しました。本技術を用いて、毎秒80ギガビットの16値信号を320kmの長距離伝送する実験を行い、伝送品質を損なうことなく受信できることを確認しました。今後は、本技術を応用し、毎秒400ギガビットの超高速光ファイバ通信の実用化に取り組んでいきます。

 近年、インターネットの普及によるデータ容量の増大に伴い、都市や都市間に張り巡らされた基幹系光ファイバ通信は大容量化が進んでいます。これまで光ファイバ通信の大容量化には、光波長多重通信方式(*3)が利用されてきましたが、さらなる大容量化に向け、光多値伝送方式や偏波多重方式(*4)等の新しい技術が注目されています。光多値伝送方式は、光の強度や位相(*5)を組み合わせ変化させることで、一度により多くのデータを伝送するものです。例えば、光の位相を90度間隔で4つの値に変化させれば4値の多値信号となり、2の2乗、すなわち一度に2ビットの情報を送ることができます。さらに、垂直と水平に振動する2つの光の波を重ね合わせ2倍のデータを伝送する偏波多重方式を用いれば、合計4ビットの情報を伝送することができます。現在、偏波多重方式と4値の多値信号を組み合わせた、毎秒100ギガビットの次世代光ファイバ通信の実用化が検討されています。しかし、さらなる大容量化をめざし16値、32値と多値化を進めていくと、位相角度の間隔が狭まるため、光源に高品位なレーザを使う伝送実験では多値信号を判別できても、実用化を想定した市販の低コストな半導体レーザでは位相雑音が大きくなってしまい、多値信号の判別が困難でした。

 そこで、日立は、市販のレーザを用いた光多値伝送方式において、位相雑音の影響を低減する信号処理技術を開発しました。技術の詳細は以下の通りです。


1.位相雑音を低減し品質を向上するデジタル遅延検波技術 

 受信した信号とその直前に受信した信号は、ほぼ同じ位相雑音をもつため、お互いの位相成分を引き算すれば位相雑音の影響を低減することが可能です。そこで、受信器に遅延検波回路を設け、受信した16値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、振幅はそのままに、受信した信号の位相成分から直前に受信した信号の位相成分を引き算するデジタル遅延検波技術を開発しました。これにより、位相雑音を低減し、信号品質を向上することができます。 

2.デジタル遅延検波による信号配置の乱れを防ぐ位相積算技術 
 デジタル遅延検波技術には位相の配置を乱すという副作用があるため、信号間の位相角度の間隔が小さい16値以上の多値信号に適用した場合、個々の信号の識別ができなくなります。そこで、送信器に位相積算回路を設け、信号がデジタルからアナログに変換されれる前に、遅延検波により引き算される位相成分をあらかじめ信号に積算してから送信する位相積算技術を開発しました。これにより、伝送後、受信器で遅延検波を行うと信号の配置が元に戻り、正しい配置で受信が可能になりました。 
 今回開発したデジタル遅延検波技術と位相積算技術を光ファイバ通信の信号処理に適用し、市販の半導体レーザを光源に用いて、毎秒80ギガビットの16値信号を320kmの長距離伝送する実験を行いました。従来は、位相雑音の影響で受信できませんでしたが、本技術により受信できることを確認しました。今後は、本技術を応用し、毎秒400ギガビットの超高速光ファイバ通信の実用化に取り組んでいきます。


(*1)光多値伝送方式:光の波の振幅や位相(角度)の異なる状態を組み合わせ、一度に多くの情報を伝送する技術。

(*2)位相雑音:光の波のタイミングが揺らぐこと。位相雑音があると、光多値信号の品質が劣化し、伝送誤りが起こる。光ファイバ通信では、低コストの半導体レーザや光の非線形効果の影響により位相雑音が生じ、伝送品質を劣化させるという課題がある。

(*3)光波長多重通信方式:波長(色)が僅かに異なる数〜数十波の光信号を束ねて、一本の光ファイバの中を伝送することで伝送容量を飛躍的に拡大する技術。

(*4)偏波多重方式:光の波には、水平に振動する波(水平偏波)と垂直に振動する波(垂直偏波)があり、両方の波で別々の情報を伝送することで、伝送容量を2倍に拡大する技術。

(*5)光の位相:光の波の遅れのことで、角度で表す。遅れの無い波の位相を0度、半周期遅れた波の位相を180度などと表す。


以上


 ※ 参考資料は、関連資料参照

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光ファイバ 信号処理 非線形

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