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東京商工リサーチ、地ビールメーカーの動向調査結果を発表

2011-09-23

地ビール”メーカー動向調査

〜震災後に出荷量を伸ばす〜


 3月11日の東日本大震災に加え、今夏の天候は昨年の記録的な猛暑から一転、不順が続いた。夏場の需要拡大を見込んだ大手ビールメーカー5社は、8月の出荷量が過去最低を記録し、震災と天候不順に振り回された格好となった。しかし、国内の主な地ビールメーカー56社の出荷量は、震災後の4月から7月まで前年同月比で2ケタ増と好調を持続し、8月も8.6%増と順調に出荷量を伸ばし、好対照の動きをみせた。

 震災で外出や支出を控える自粛ムードが広がったが、地ビールは震災復興への応援特需や観光地への客足の反動増で需要を押し上げ、着実に顧客層を拡大していることがわかった。

 ※ 東京商工リサーチでは全国の主な地ビールメーカー198社を対象にアンケート調査を実施、有効回答を得た69社を対象に出荷量の推移、東日本大震災の影響などをまとめた。調査は2010年9月27日に続き2回目。


2011年1月〜8月出荷量前年同期比9.2%増
 2011年1月〜8月の出荷量を前年同期と比較が可能な56社でみると4,992キロリットルで、2010年同期の4,571キロリットルから9.2%増加した。社数別でみても、「増加」34社、「横ばい」1社、「減少」21社で、「増加」が「減少」を13社上回った。
 また、56社以外で出荷量が未公表の13社では、「増加」3社、「横ばい」2社、「減少」8社と、「減少」が「増加」を5社上回った。
 出荷量が判明した56社と未公表13社の合計69社では、出荷量が「増加」は37社(構成比53.6%)で半数を占めた。一方、「減少」は29社(同42.0%)、「横ばい」は3社(同4.3%)。出荷量別では、1月〜8月までの累計出荷量100キロリットル以上の6社では、「増加」が6社。100キロリットル未満の50社では、「増加」28社、「減少」21社、「同数」1社だった。

 出荷量が判明した56社の2011年1〜8月の出荷量を月別にみると、1月、2月は前年とほぼ同水準で推移していたが、3月は震災の影響がから前年同月比5.0%落ち込んだ。

 しかし、4月以降は大手メーカー工場の被災に伴う供給不足もあって、出荷量は4月(前年同月比20.1%増)、5月(同16.7%増)、6月(同12.2%増)、7月(同12.5%増)と大幅な伸びをみせた。大手メーカーの生産体制が整い、出荷量が回復するにつれて伸び率は鈍化し、8月(同8.6%増)は1ケタの伸び率になったが、猛暑で好調だった前年を上回る状況で推移している。


出荷増の要因「観光客増」がトップ
 出荷量が増加した37社では、増加した要因のトップは「観光客増」(6社)だった。次いで、「営業・販売努力」(5社)、「ビアコンテスト入賞等による宣伝効果」・「震災による需要」(各4社)の順。原発事故の影響で全国的に電力不足が広がり、震災後の消費自粛も各方面に影響したが、その反動で観光地に足を運んだ観光客を取り込んだことが寄与した。
 また、品質向上への努力がコンテスト入賞で一層の宣伝効果メリットも生んだようだ。
 なお、東北のメーカー4社が「震災」を出荷量の増加要因にあげている。震災により大手メーカーの生産設備が被災し供給不足が深刻になる中、店頭で地ビールを手に取る消費者が増えたようだ。また、復興支援として、被災地である東北の地ビールメーカーが注目されたこともメリットになった。地域の特色を打ち出しやすい“地ビール”が、改めて見直される契機になったともいえるが、震災で沈んだ日本を地ビールが元気づけたことは間違いない。

出荷減の要因「震災」が圧倒的
 出荷量が減少した29社では、減少要因のトップは「震災の影響」(18社)が6割を占めた。
 次いで、「観光客減」(9社)、「その他」(2社)の順。具体的な震災影響としては「取引先の休業等による販売機会の喪失」(10社)、「醸造所の損壊等、設備の被害」(4社)、「原発風評」(4社)、原材料入手難等「その他」9社だった(複数回答)。なお、東北の地ビールメーカー12社では、出荷量は「増加」(6社)、「減少」(6社)。「減少」のうち、5社が震災を理由にあげた。出荷増の要因にもあげられた「震災」だが、多くの地ビールメーカーにはマイナスにも作用している。


 大手ビールメーカーが苦戦する中、“地ビール”は、地道な品質向上と認知度アップへの取り組みで顧客拡大に繋げている。首都圏では、“地ビール”の集客力に注目した飲食店が新たな顧客開拓のために取扱いを始めている。ささやかな贅沢として家飲み用に“地ビール”を選ぶ消費者も増えている。また、東北を中心としたメーカーでは震災が出荷増の契機になった点も見逃せない。ただ、出荷量では、全国展開している上位2社が全体の48%と、ほぼ半数を占めている。上位2社は増加要因に、震災による「大手メーカーの供給難を契機に需要を伸ばした」と回答している。このほか、東北では「震災復興需要が出荷増に結びついた」と回答したメーカーが目立った。「震災」という特殊要因が出荷増に大きく影響したようだ。

 9月以降の出荷量見込みは、回答した57社のうち「増加」(22社)、「横ばい」(21社)、「減少」(10社)、「わからない」(4社)で、「増加」が「減少」の2倍に達している。多くの地ビールが観光地特定の名産品で希少性を特色にしており、出荷量が伸び、知名度が広がることは、むしろ希少性の喪失につながりかねず、今後の成長に足かせとなる可能性もある。消費者は地ビールを「そこにしかない特別なもの」と位置づけている。イメージを堅持しながら、成長を持続するには、これまで以上に他ビールとの差別化を図るための品質向上、新製品開発への取り組み、イメージ戦略が求められる。

原発風評輸出を伸ばしたメーカーも2社
 米国、韓国、豪州などへの輸出を行っている地ビールメーカーは7社。このうち、原発風評により輸出量が「減った」(2社)、「やや減った」(2社)と4社が減少した。(「やや減った」うちの1社は円高も理由と回答)その中で、「増えた」と回答したメーカーが2社あった。理由は、「早くから放射能の自社検査に取り組み、安全性が認められた」としている。「変わらない」は1社だった。

 地区別の出荷量では、東北が前年同期比220キロリットル増で最多。次いで、関東(同163キロリットル増)、中部(同39キロリットル増)の順。東北は銀河高原ビール1社で、東北の増加分の95%を占める209キロリットル増加した。


※ 参考資料は、関連資料参照

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