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東北大学と日立など、脳活動に伴う血液量変化を計測する超小型頭部近赤外光計測装置を試作

2011-09-20

専用LSIの開発で小型・軽量化を実現した
超小型頭部近赤外光計測装置の試作機を開発
−複数人の脳活動を同時に計測、計測結果のリアルタイム表示を実現−


 国立大学法人東北大学(東北大学総長:井上明久/以下、東北大学)加齢医学研究所の川島 隆太教授と株式会社日立製作所(執行役社長:中西宏明/以下、日立)らは、JST研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)機器開発タイプの一環として、脳活動にともなう前頭葉部分の血液量の変化を簡単に計測する超小型頭部近赤外光計測装置の試作機の開発に成功しました。東北大学が脳機能イメージングの知見をもとに研究で必要な要素を提示して、それに即して日立製作所が試作機の基本原理とシステム構成の開発を行ないました。

 本試作機は、頭部に装着するワイヤレスのヘッドセットと計測結果を表示するコンピュータ用アプリケーションソフトウエアの2点で構成されます。ヘッドセットは、脳活動にともなう前頭葉部分の血液量変化の測定に特化して、新規に開発したものです。測定した信号を処理する主要回路をひとつのLSIに集約し、信号処理基板の面積を日立の従来製品と比べて約1/10*1にしてヘッドセットに内蔵しました。これにより、測定した信号をコンピュータなどを経由せずに、直接ヘッドセット内で高速処理することが可能となりました。ヘッドセットはワイヤレスで、その重量は信号処理基板を含めても約90gと軽量化*2に成功した上、デザインを改良することによって高い装着性を実現しました。この成果により、学校、家庭、オフィスなど、日常に近い状況で前頭葉部分の血液量の変化が簡単に計測可能となったことから、脳科学をはじめ認知学、心理学、教育学など幅広い分野での活用が期待されます。また、同時に計測した20人の脳の血液変化量データを、一つのコンピュータ上で表示し、データベース化するアプリケーションソフトウエアも併せて開発しました。これにより、測定しながらリアルタイムで計測結果を表示することを実現しました。本成果は、複数の人が共存する中で、脳がどのような相互作用を行っているかを解明する「社会脳科学」など、最先端の研究分野への応用も期待できます。今後、川島教授らは本試作機を研究に用いて、その有用性を検証していきます。

 ※参考資料は添付の関連資料を参照


<開発の背景と目的>
 近年、脳科学だけでなく、認知学や心理学、教育などさまざまな分野で脳内の血液量の変化を計測し、その結果を活用する動きが広まっています。また、それに伴い、被験者の計測環境に制約を与えることなく、より日常に近い状況の中で、脳内の血液量の変化を計測できる装置が求められています。このような背景から、東北大学と日立は、小型かつ簡単に脳内の血液量の変化を計測できる装置を開発し、脳科学などの研究への発展に貢献することを目的に、2009年度より本開発プロジェクトに取り組みました。


<本試作機の主な特長>

(1)主要回路の信号処理部をひとつのLSIに集約することで、小型・軽量化を実現
 従来は主要な回路の信号処理を行うために、大規模な回路、コンピュータによる分析アルゴリズムを用いていましたが、本試作機では信号処理部をひとつのLSI*3に集約し、ヘッドセットの重量 約90gにしました。また、乾電池(CR123A)連続駆動6時間(常温)を実現しました。

(2)20人の脳を同時に計測、かつ、計測結果をリアルタイムに表示
 今回はデータ伝送を最適化したZigbeeプロトコルにより無線化し、これまでコンピュータで処理していた多くの信号処理をヘッドセットに内蔵されているLSIで処理し、コンピュータでの処理プロセスを軽減させることで、20人までの同時計測を可能にしました。また、従来ポスト処理で行ってきた、ベースライン補正や周波数解析によるアーティファクト除去や心拍演算などを、LSIに組み込んだ独自のアルゴリズムで実時間処理することによりリアルタイム計測を実現しています。(図1)

(3)ワイヤレスで装着しやすいヘッドセット
 ヘッドセットはワイヤレスで装着することができるため、被験者の行動を制約することなく、より日常に近い状況で計測することができます。また、ヘッドセットを従来の額を包み込む形状から頭部の前後を軽く挟み込む形状とすることで、被験者がヘッドセットを装着するのにかかる所要時間を約10秒程度に抑え、拘束性の低いデザイン設計を行いました。(図2)

 ※図1、2は添付の関連資料を参照
 

*1:2009年11月24日に日立が発表した頭部近赤外分光計測装置の信号処理外形基板寸法 200×150(mm)と本試作機の信号処理基板寸法50×50(mm)との比較。
*2:2009年11月24日に日立が発表した頭部近赤外分光計測装置の信号処理部、ヘッドセットを合わせた重量約1,300gと、本試作機のヘッドセット(信号処理部を含む。乾電池の重量を除く。)重量約90gとの比較。
*3:本試作機で使用しているLSIは、これまで日立が培ってきた生体光計測の原理・技術に基づいて、東北大学の依頼により株式会社日立アドバンストデジタルが試作したものです。


以上

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