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富士通研究所、テラヘルツ波透過による物質検査を25倍に高速化する技術を開発

2011-09-14

テラヘルツ波の透過による物質検査手法を25倍に高速化
モノの内部を見える化し、X線よりも安全で幅広い物質に対応



 株式会社富士通研究所(注1)は、光と電波の中間であるテラヘルツ(THz)波を用いた透過による非破壊の物質検査を行う手法について、従来よりも25倍高速に検査が可能な技術を開発しました。テラヘルツ波は、紙やプラスティックや布といった金属以外をよく透過し、対象の物質を正確に把握することが可能なため、隠された物質の非破壊検査などモノの内部を見える化する用途で期待されています。しかし、従来の検査手法では、1回の照射で物質の1方向のみしか測定できず、物質の全体像を測定するには対象の物質を少しずつ移動させて何度も照射する必要があるため、検査に時間がかかるという課題がありました。

 今回、新たな光学素子の開発により対象の物質移動を不要にすることで、縦横30ミリメートルの対象物の測定時間を従来の34分から1分21秒へと25倍に高速化しました。これにより、手紙の中の薬物検査や空港でのセキュリティ検査の時間短縮、さらにはデバイスの品質検査への応用が期待されます。


<開発の背景>
 テラヘルツ波は、光と電波の中間の波長(0.3mm)と性質を持っており、紙やプラスティックや布といった金属以外をよく通します。X線と可視光では見えるものが違うのと同じように、テラヘルツ波を使うとこれまでとは異なったものが見えてきます。テラヘルツ波は、その物質特有の指紋スペクトル(注2)が測定できるため、たとえば同じように見える錠剤においても、それが何の薬であるかが判明できます。また、X線と比べて人体に安全であるという特長があるため、セキュリティ検査や医療目的などにも効果的です。これまで見えなかったものが見える性質を活かして、封筒の中身の検査や税関での荷物の非開封検査、食品中への混入物の検査、損傷や劣化などを調べるデバイスの品質検査など、モノの内部を見える化する用途に幅広く応用できることが期待されています。

 ※以下の資料は添付の関連資料「図1〜5」を参照
  ・図1.電波の波長と周波数の関係
  ・図2.モノの内部を見える化できる各種類の波の比較
  ・図3.テラヘルツ波で得られた分光像


<課題>
 テラヘルツ波は目で見ることができず、また、カメラでも撮影することができません。そのため、図4のように電気光学結晶(注3)を用いて、テラヘルツ波の強度の変化が、カメラで見ることができるプローブ光の強度変化に転写される方式を利用します。この結晶を用いた検査方法として、テラヘルツ波を透過させたい物質にあてると同時に、プローブ光を斜めからあてることで、透過してきたテラヘルツ波とプローブ光に生じる時間差を利用し、対象の物質の透過した時間波形を瞬時に得る方式が使われています。

 しかし、この方法では1度の照射で物質の1方向についての情報しか得られず、物質の全体を1度に測定することはできません。物質全体を把握するためには、物質を少しずつずらしながらそのつど照射して測定する必要があるため、検査に時間がかかるという課題がありました。

 ※以下の資料は添付の関連資料「図1〜5」を参照
  ・図4.従来の測定方法


<開発した技術>
 今回、物質を移動しない測定を可能にするために、テラヘルツ波と斜め入射によるプローブ光を用いた検出法において、プローブ光の途中に、新たに開発した多数の段差を用いた階段状ミラーアレイを配置しました。これにより、物質に対して複数回の移動をしたのと同等の効果を得ることができ、1回の照射で検査が可能になります。

 ※以下の資料は添付の関連資料「図1〜5」を参照
  ・図5.今回開発した測定方式


<効果>
 今回作製した階段状ミラーアレイを用いたテラヘルツ波による測定時間を調査したところ、縦横30ミリメートルの対象物の測定時間が従来の34分から1分21秒へ25倍高速になりました。これにより、手紙の中の薬物検査や空港でのセキュリティ検査の時間短縮、さらにはデバイスの品質検査などへの応用が期待されます。


<今後>
 検査のさらなる高速化をおこない、2014年頃の実用化を目指します。また、ものづくりの検査への応用も進めていきます。


<商標について>
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。



以上



【注釈】
 注1 株式会社富士通研究所:
     代表取締役社長 富田 達夫、本社 神奈川県川崎市
 注2 指紋スペクトル
     テラヘルツ波を物質に照射すると、その物質により透過や吸収の特性がそれぞれ違う。そのため物質がどの周波数のテラヘルツ波を透過、吸収したかによって、その物質が特定できる。
 注3 電気光学結晶:
     電気光学結晶にテラヘルツ波を照射すると、テラヘルツ波の強度の強弱が複屈折率の強弱として記録される。この記録された電気光学結晶にプローブ光を照射すると、楕円の位相を持つ波になるので、光学系を用いることで、カメラに感度を持つ波長のプローブ光での強度の差に変換できる。


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