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富士経済、太陽電池関連の世界市場の調査結果を発表

2011-09-01

結晶シリコンから量子ドットタイプまで10種類の
太陽電池の世界市場を調査


―30年注目市場予測―
 ●太陽電池の世界市場 13兆3,140億円(10年比3.9倍)
 ●結晶シリコン太陽電池 9兆円(10年比3.1倍)高いコストパフォーマンスで主流を維持
 ●CI(G)S太陽電池 1兆6,000億円(10年比23.9倍) 変換効率、製造コストを改善
 ●集光型太陽光発電システム 5,000億円(10年比37倍)大規模発電向けで導入拡大



 総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界)は、今年4月から6月にかけて、再生可能エネルギーとしてますます期待が高まる太陽電池関連の世界市場について調査を実施した。
 この調査は、太陽電池に関連する市場を2回に分けて実施するもので、まず第一弾として世界の太陽電池セル・モジュールおよび部材/原料の現在及び将来の技術・市場の動向を分析し、この結果を報告書「2011年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望 上巻」まとめた。
 第二弾では、太陽光発電システム、製造装置、システム機器などの技術・市場に加えて、国別動向などを対象とする予定で、その結果については今後発表する。


<調査結果の概要>
 1.注目される太陽電池市場予測
  今回、10種類の太陽電池の市場を分析しており、以下はその主要太陽電池の動向および予測である。

  ●結晶シリコン太陽電池 10年2兆9,000億円(前年比220.5%)30年9兆円(10年比310.3%)
   変換効率が高くコストパフォーマンスに優れており、豊富な実績と信頼性が評価されて太陽電池の主流となっている。ポリシリコンをはじめとする原料・部材の低コスト化や量産拡大もあって、太陽電池価格が低下してより導入しやすいものとなっている。また、結晶シリコン太陽電池でのコスト削減は、コスト構成比の大きいシリコン材料がポイントとされるが、最近では外部調整から内製を含むビジネスの垂直統合化へのシフトによるコスト構造の見直しの動きが広がっている。今後更なる価格の低下は需要を促進すると予測される。

  ●薄膜シリコン太陽電池 10年2,000億円(前年比147.6%)30年8,000億円(10年比400.0%)
   結晶シリコン太陽電池と比較して製造工程数が少なく、低製造コストで、CI(G)S太陽電池やCdTe太陽電池のようにレアメタルを含まないことから資源制約がほとんどなく、CdTe太陽電池のように有害物質(カドミウム)も含まない。変換効率は、これら太陽電池に劣るが、改善余地は大きい。ただ近年の動向として結晶シリコン太陽電池の大幅な価格低下や販売路線の近いCdTe太陽電池、台頭するCI(G)S太陽電池との競争激化で事業展開においては消極的な姿勢を示すメーカーや撤退する企業も一部でみられる。それでも、レアメタルや有害物質を含まない特徴は特筆され、コスト低減余地も大きく、今後価格競争力を高めることが出来れば、再度台頭することも予想される。変換効率が住宅や工場などのルーフトップでも利用できるレベルに高まれば、結晶シリコン太陽電池にも対抗できると考えられる。

  ●CI(G)S太陽電池 10年670億円(前年比196.5%)30年1兆6,000億円(10年比23.9倍)
   09年以降、主流の成膜方式と目されていたセレン化/硫化法で、量産に成功するメーカーが増加し、生産量も増加している。優れた量産技術の確立で、薄膜系太陽電池の中で最も勢いがある。変換効率で結晶シリコン太陽電池、製造コストでCdTe太陽電池に迫ることが出来れば、存在感は一層高まる。

  ●CdTe太陽電池 10年2,350億円(前年比120.5%)30年8,000億円(10年比340.4%)
   驚異的な低製造コストで価格設定の主導権を握り、価格競争で有利に展開してきた。一方で、他の太陽電池と価格が同等となれば、カドミウムを含むデメリットが強調され、不利な立場に陥る可能性があるため、一層のコスト削減が最重要開発事項となる。現在でこそ他の薄膜系太陽電池の量産規模が小さいことから、太陽電池の中では、結晶シリコン太陽電池に次ぐ構成比を占めているが、中長期的には、参入企業数が少ないことから、構成比は下がると予測する。

  ●色素増感太陽電池 10年 僅少  30年300億円
   現状では生産量は僅少であるが、将来的には製造コストが最も安価な太陽電池となる可能性がある。用途は潜在的に多様であり、日照が弱くても発電できることから、室内での利用が可能で、透明太陽電池やカラー太陽電池の開発も期待される。現状では、変換効率と耐久性が低く、商用化に向けた課題となっている。有望用途として、建材一体型太陽電池(BIPV)、モバイル機器、エネルギーハーベストへの適用が考えられる。

  ●集光型太陽光発電システム 10年135億円 30年5,000億円(10年比37.0倍)
   太陽光を集光レンズでセルに集中照射させて、高効率発電を可能とするが、常に太陽光を追う必要がある。09年から市場形成に向かい、10年に開花した。日照条件を選び、案件規模が大きく、太陽熱発電と競合すると予測する。

  その他の太陽電池では、
   ・球状シリコン太陽電池 球状化したシリコンをセルとし、シリコン使用量が抑えられる上、球状シリコンセルの表面全体を使って幅広い方向の光で発電する。また軽量でデザイン性に優れる。
   ・カーボン太陽電池 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる耐磨耗性や低摩擦特性に優れた非晶質の硬質薄膜を用いた太陽電池である。資源制約が殆どない炭化水素で構成され比較的安価に製造することが可能である。現状では、産学共同研究が進められている状況である。
   ・量子ドット太陽電池 理論効率は75%と太陽電池の中で最高となる。現時点で大学などの研究機関の原理検証の段階で実用化までにはかなりの時間を要すると予想される。


 2.太陽電池の世界市場(モジュール販売ベース)
  2010年    3兆4,162億円
  09年比     203.3%
  2011年見込 4兆5,171億円
  2030年予測 13兆3,140億円
  30/10年比 389.7%

  *表形式の「2010年、09年比、2011年見込、2030年予測、30/10年比」は添付の関連資料を参照

  ここ数年、世界市場では事前の予測を超える需要が創出されている。10年には3兆4,162億円、出力ベースでは前年比243.4%の約21GW(メーカー販売ベース)、過去最大の大幅成長となった。ドイツとイタリアを中心とした国々で需要が増加した。これらの国では、FIT制度を中心とする優遇税制が設けられており、確かに優遇政策に支えられた需要創出もあるが、各国が想定する以上に導入量が増加している。
  11年は供給能力が拡充されている一方で、最大市場である欧州主要国のインセンティブ引き下げが当初見込まれていたことから、4月以降に供給過剰から生産調整に入った。価格競争が激化しており、低価格化が加速する可能性がある。一方で欧州以外の需要が増加しており、出力ベースで前年比146.9%、金額ベースで同132.2%を見込む。11年3月の福島原発事故を契機にドイツやイタリアなどで原発廃止・凍結に向けた動きが表面化し、世界的に再生可能エネルギーに対する期待が高まっている。現状では世界の電力需要の1%も賄えていないが、脱化石資源・原子力が追い風となり、将来的には主要なエネルギー源のひとつとなる可能性を秘めている。
  太陽光発電は発電コストの高さが指摘されるが、15年頃には発電コストが商用電力価格並みとなるグリッドパリティを達成する地域が広がると予測する。電力料金や日照条件などにより異なるが、グリッドパリティが達成されれば、導入は一層加速すると予測する。
  さらに新興国の経済成長や生活水準の向上は、電力消費量の拡大をもたらし、20年から30年には、莫大なエネルギー需要の増加が予測される。持続可能なエネルギー需要の増加に応えるには、自然エネルギーの活用が望まれる。新興国の大きな経済発展による購買力の向上を考慮すると、太陽光発電需要のさらなる拡大を予想する。
  日本は太陽電池産業において長く世界を先導してきたが、07年にセルベースでドイツのQ−Cellsが日系を抜いてトップに躍進し、09年にはCdTe太陽電池を展開する米国のFirst Solarがそれを塗り替え、さらに10年はSuntechをはじめとする中国系メーカーがトップクラスに軒並み顔を並べた。市場を巡る動きは非常に目まぐるしく予断を許さない。近年は中国企業が台頭しており、10年の中国太陽電池メーカーのシェアは4割強となっている。
日本企業は、太陽電池の供給ボリューム/シェア面で勢いづくアジアの企業に後れを取っているが、収益性に配慮した堅実なビジネスモデルを示すとともに、技術開発では世界的に先行している。さらには有力な部材メーカー、製造・加工装置メーカーが多く材料開発や製造技術開発の分野で優位にあり、太陽電池製品の差別化の鍵を握っている。
  太陽電池ビジネスは各国の政策支援に大きく左右される面を持ち、主要国の政策動向が常に注視される。高いインセンティブを設定したFIT制度の導入で成功したドイツなど欧州諸国の取り組みは、米国や中国の一部の州・省にも導入され始めた。日本でも09年に補助金制度が復活し、同年11月に開始された余剰電力買い取り制度と結びつき、市場は再び活気を取り戻している。さらに来年の施行が見込まれる再生可能エネルギーの全量買取制度もあって、さらなる発展が見込まれる。

  ●部材 10年2兆5,525億円(前年比198.3%) 30年8兆903億円(10年比317.0%)
   部材市場は、シリコンインゴット・ウエハ(以下シリコンウエハ)の構成比が約7割と最も高い。10年のシリコンウエハは供給能力の増強と原料ポリシリコンの低価格化から、販売価格が低下した。さらに表面保護材(ガラス)、バックシート、封止材など主要部材の価格も下がり、太陽電池の製造コスト削減に寄与する形となった。太陽電池の低価格化は需要を促進させ、部材市場の拡大にも結び付いている。



以上



<調査対象>
 ・太陽電池
  結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、CI(G)S/CZTS太陽電池、CdTe太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、球状シリコン太陽電池、カーボン太陽電池、集光型太陽光発電システム、量子ドット太陽電池
 ・部材
  単結晶/多結晶シリコンインゴット・ウエハ、表面保護材、反射防止/防汚/波長変換材料、透明導電膜付き基板、基板材、バックシート、封止材、拡散剤、反射防止膜、電極ペースト、インターコネクタ、ターゲット材、透明電極材料、太陽電池向けガス、CIGS粒子、テルル、シーラント、アルミフレーム、有機系太陽電池用透明導電膜付き基板、有機系太陽電池用裏面基板、DSC(色素増感太陽電池)用電極ペースト、DSC用増感色素、DSC用電解質、DSC用シール材、DSC用対極触媒材料、OPV(有機薄膜太陽電池)用有機半導体材料
 ・原料
  ポリシリコン、バックシート用原材料、封止材用原材料、電極ペースト用粉体


<調査方法>
 富士経済専門調査員による対象先企業等への直接面接取材を基本に、電話ヒアリング、各種公表資料等により補完。

<調査期間>
 2011年4月〜6月


資料タイトル:「2011年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望 上巻:太陽電池・部材/原料市場編」
体裁:A4判 362頁
価格:書籍版 97,000円(税込み101,850円)
書籍・電子版セット 117,000円(税込み122,850円)
調査・編集:富士経済 大阪マーケティング本部 第三事業部
発行所:株式会社 富士経済
     〒103−0001東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 F・Kビル
     TEL:03−3664−5811(代)
     FAX:03−3661−0165
     e−mail:info@fuji-keizai.co.jp
     この情報はホームページでもご覧いただけます。
     URL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
     URL:https://www.fuji-keizai.co.jp/



*「調査報告書 目次」は添付の関連資料を参照


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