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産総研、大日精化などと共同でプルシアンブルーを利用して多様な形態のセシウム吸着材を開発

2011-08-29

プルシアンブルーを利用して多様な形態のセシウム吸着材を開発

−汚染水や土壌などさまざまな環境に適用可能−


<ポイント>
 ●安価な顔料であるプルシアンブルーを利用し、優れたセシウム吸着能力を持つ吸着材を開発
 ●用途に応じて、布状、液状、ビーズ状など多様な形態のセシウム吸着材が使用可能に
 ●放射性物質漏洩事故などにおける環境中の放射性セシウムの除去に期待


<概要>
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)ナノシステム研究部門【研究部門長 八瀬 清志】グリーンテクノロジー研究グループ 川本 徹 研究グループ長、田中 寿 主任研究員、北島 明子 産総研特別研究員は、大日精化工業株式会社【取締役社長 高橋 弘二】(以下「大日精化」という)、関東化学株式会社【代表取締役社長 野澤 学】(以下「関東化学」という)と共同で、安価な顔料であるプルシアンブルーを利用し、さまざまな用途に使用できる各種セシウム吸着材を開発した。

 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、さまざまな場所で放射性セシウムが検出されている。この放射性セシウムの回収には、選択的にセシウムを吸着し、かつ多様な形態で使用できる吸着材が必要である。今回、産総研で独自に開発したプルシアンブルーのナノ粒子と市販品のプルシアンブルーを適切に使い分けることで、布状、液状、ビーズ状など、用途に合わせて使うことのできる各種セシウム吸着材を開発した。これらのセシウム吸着材によって、汚染水や土壌など環境中の放射性セシウムの除去に貢献できることが期待される。

 なお、この成果の一部は、平成23年8月24日に、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構の「福島県飯舘村現地水田ほ場における農地土壌等における放射性物質除去技術開発のための一連の試験」で使用される予定である。


【図 プルシアンブルーを利用した各種セシウム吸着材】


<開発の社会的背景>
 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所放射性物質漏洩事故により、環境中に多くの放射性物質が放出され、大きな社会問題となっている。放出された放射性物質は主としてヨウ素131、セシウム134、セシウム137である。ただし、ヨウ素131は半減期が8日と短いため、長期的に問題となるのは半減期が約2年のセシウム134と、半減期が約30年のセシウム137の二種類であると考えられる。これらを人為的に無害化することは困難であり、対策としては、放射性セシウムを生活環境中から除去し、管理された区域に封じ込めるなどの方法が必要となる。この際に、放射性セシウムを選択的に取り込める吸着材が重要となる。

 また、放射性セシウムは環境中の多様な場所に飛散しているため、その対象によって除染の方法が異なる。例えば、放射性セシウムを含んだ汚染水の浄化では、放射性セシウムを吸着する吸着材を充填したカラムに通水し、放射性セシウムを水から除去することなどが考えられる。放射性セシウム濃度が高い場合は、放射線に弱い有機高分子材料などを含有しない吸着材が望ましいが、放射性セシウム濃度が低い場合は、吸着後に体積を減らすことのできる吸着材が望ましい。一方、農作物が放射性セシウムを吸収することを防止するためには、セシウム吸着材を農地に散布し、放射性セシウムを吸着させる手法が考えられる。この場合は、土壌とセシウム吸着材の接触面積を増やすため、より微細な粒子を水に分散させて散布することが望ましい。このように、放射性セシウムの対策に必要とされる吸着材の形態は多様である。

 セシウム吸着材としてはゼオライトなどの天然鉱物と並び、プルシアンブルーという顔料が知られている。プルシアンブルーは、高いセシウム吸着能力と共に、安価であること、金属置換により吸着能力をさらに改善できることなどの特徴を持つ。


<研究の経緯>
 産総研は、2005年頃からプルシアンブルーを利用した機能性材料・素子開発を進めてきた。その中で、原子力発電所で排出される放射性廃液から放射性セシウムを回収するシステム開発も行ってきた。特にプルシアンブルーやプルシアンブルー類似体のナノ粒子化と、それを利用した素子開発を進めてきた。

 2011年3月以降、放射性セシウムの対策として、大日精化、関東化学と共にプルシアンブルーを利用した各種セシウム吸着材の開発に着手した。さらに、平成23年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」の中でセシウム除染の一手法として、農地などの除染に関する技術の開発に参加し、この事業の中で、ゼオライトなどのセシウム吸着材と比較して、プルシアンブルーが、加工性、即時調達性に優れている点を生かしてさまざまな吸着材の開発を担当している。本研究開発の一部は、この事業において実施されたものである。


※「研究の内容」などは、添付の関連資料を参照

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