東京商工リサーチ、「主な東証上場メーカー　想定為替レート」調査結果を発表

〔特別企画〕
東証１部・２部上場メーカー１２１社
「想定為替レート」調査（２０１２年３月期決算）
“半数が１ドル＝８０円想定レートを上回る円高水準”



　円高が止まらない。７月２６日の東京外国為替市場は、一時１ドル＝７７円８０銭台まで急伸し、震災直後の３月１７日に記録した１ドル＝７６円２５銭の史上最高値の水準に迫った。その後も円高は高止まり基調をみせているが、東証１部、２部に上場するメーカー１２１社のうち、約半数の６０社（構成比４９．５％）が想定為替レートを１ドル＝８０円に設定していたことがわかった。
　だが、すでに外国為替相場は想定レートを上回る円高レンジに入っている。このままの水準で推移すると、景気を牽引してきた輸出企業の国際競争力は落ち込み、生産拠点の海外移転に一層拍車がかかる可能性も出てきた。

　※本調査は、東京証券取引所１部、２部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー（３月本決算企業）のうち、２０１２年３月期決算の業績見通しで想定為替レートが判明した１２１社を抽出した。資料は２０１１年３月期決算の決算短信、業績予想等に基づく。



＜２０１２年３月期決算の想定為替レート１ドル＝８０円の企業が約５割＞
　東京証券取引所１部、２部に上場する主なメーカー１２１社（３月本決算企業）のうち、２０１２年３月期決算の業績見通しで期初の対ドル相場を１ドル＝８０円と想定した企業は６０社（構成比４９．５％）で最も多かった。
　次いで、８３円が２１社、８５円が１７社、８２円が１４社、８１円が５社と続き、想定レートの最安値は９０円だった。


＜１年前との想定為替レート比較１ドル＝９０円から８０円への変更企業が４割＞
　前年同期（２０１１年３月期）では、期初の対ドル相場を１ドル＝９０円とした企業が１０１社（構成比８３．４％）で、全体の８割を占めていた。
　２０１１年３月期と２０１２年３月期の期初想定為替レートを比較すると、想定レートを９０円→８０円に変更した企業が５０社（構成比４１．３％）で最も多かった。次いで、９０円→８３円に変更が１６社、９０円→８４円に変更が１５社、９０円→８２円に変更が１３社と続く。
対ドル相場では、震災直後の３月１７日に海外市場で一時１ドル＝７６円２５銭の史上最高値を更新したが、その後も８０円を挟んだ円高水準で推移したことを反映して、ほとんどが想定為替レートを１年前より高めに設定している。


＜１ユーロ＝１１５円の想定為替レート企業が最多＞
　１２１社のうち、ユーロの想定為替レートが判明した８０社をみると、２０１２年３月期決算の業績見通しで期初の対ユーロ想定レートで最も多かったのは、１ユーロ＝１１５円の２９社（構成比３６．２％）だった。次いで、１１０円が２６社（同３２．５％）と続き、最安値は１２０円の１０社（同１２．５％）。



　東証上場の主なメーカーは、事業計画での為替レートを前年同期より高めに想定している。
　しかし、期初から１ドル＝８０円を超える想定以上の円高推移で、想定為替レートの見直しはもとより、輸出企業には業績の下振れリスクになっている。
　企業はコスト削減を徹底的に進めているが、円高が長期化すると海外現地生産の強化や、部品の海外調達を加速せざるを得ない。国内経済は震災直後のダメージから立ち直りかけ、回復機運をみせているが、メーカーの業績拡大を後押ししてきた海外業績にボトルネックともなりかねない。輸出依存度の高い日本にとって、想定レートを超える円高が進むと企業収益の悪化から、否応なしに「産業の空洞化」という深刻な事態が本格化することも懸念される。円高は輸入関連にはメリットもあるが、海外からの安価商品流入は、デフレと低価格に翻弄される中小企業に一層の価格引き下げを強いる。また、デリバティブ（金融派生商品）取引で損失が拡大すると、一服状態にあった「円高関連」倒産が再び増加に向かう可能性も高まってくるとみられる。



＊以下のグラフ資料は添付の関連資料を参照
　・主な東証１部、２部上場メーカー１２１社　２０１１年３月期決算
　　期初想定ドル為替レート分布

　・主な東証１部、２部上場メーカー１２１社　２０１２年３月期決算
　　期初想定ドル為替レート分布

　・主な東証１部、２部上場メーカー１２１社　２０１２年３月期決算
　　期初ドル想定為替レート　前年同期比較

　・主な東証１部、２部上場メーカー　８０社　２０１２年３月期決算
　　期初想定ユーロ為替レート分布