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日立、ウェアラブル型の光トポグラフィ技術で2人で協調作業をする際の脳活動を計測

2011-07-22

ウェアラブル型の光トポグラフィ技術を用いて2人で協調作業をする際の脳活動を計測

ボタンを押すタイミングを合わせる実験を繰り返し脳活動と協調作業との関連性を解析


 株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、ウェアラブル型の光トポグラフィ(*1)技術を用いて、2人1組で協調的に作業を行う被験者の前頭葉の脳活動を計測し、脳活動と協調作業との関連性を解析しました。今回の計測では、2人の被験者に「10秒後を目安に同時にボタンを押す」という課題を10回繰り返し、2人で協調作業をする際の脳活動を同時に計測しました。6組の被験者を対象に脳活動パターンとボタンを押すタイミングの間隔について統計解析を行ったところ、前頭葉の脳活動パターンの類似度が高い方が、ボタンを押すタイミングが近いという結果が得られました。

 最先端の脳科学研究では、人と人との協調や対立などを伴う社会生活の中で、脳がどのような処理を行っているかを解明する「社会脳科学」研究の取り組みが始まっています。本成果は、この社会脳科学の研究において、日常に近い状況で脳活動を測定できる特長をもつ、ウェアラブル型の光トポグラフィ技術が有用な測定手段であることを示すものです。

 近年、脳機能の画像計測法が発展し、個々の外部刺激と脳活動との関連を分析できるようになってきました。しかし、社会脳科学の研究では、日常生活と同じ環境で、共通の作業にかかわる複数の人の脳活動を同時に計測して解析することが重要です。これまで、脳波計(*2)またはfMRI(*3)を複数台利用して、複数人の脳活動を測定した例が報告されてきましたが、日常的な環境で脳の活動部位をより手軽に測定できれば、社会脳科学の急速な発展が期待できます。

 今回、日立では、ウェアラブル型の光トポグラフィ技術を用いて、2名の被験者が協調的に作業する際の脳活動の同時計測を試みました。計測の内容は以下の通りです。


(1)2人1組で向かい合って座り、目を閉じたまま心の中で10秒数えて、できるだけ2人同時にボタンを押すという課題を実施しました。2人がボタンを押した後に, 2人がボタンを押すタイミングの時間差を音で提示することにより、2回目以降は互いにタイミングが調整できるようにしました。この試行を6組の被験者に合計10回行ってもらい、2人の脳活動をウェアラブル型の光トポグラフィ技術で測定し、さらに2人のボタンを押すタイミングの時間差を記録しました。

(2)ウェアラブル型の光トポグラフィ技術で測定される脳活動のデータは、前頭葉の大脳皮質における血流量です。今回、ボタンを押す前の一定期間の血流量変化を用いて脳活動量を数値化し、課題を遂行している2人の前頭葉の脳活動分布の共分散(*4)を計算し、各組で平均及びばらつきが等しくなるように正規化しました。共分散は、2組の対応するデータ間の類似度を示す値です。

(3)(2)の結果から、6組、各10試行、合計60試行のデータのうち各組の最初の試行(計6回)及び不使用の1試行を除く計53試行のデータに対して共分散値に基づき,類似度が平均より高い群(32試行)と低い群(21試行)に2分しました。平均値及び標準偏差(*5)を用いて、それぞれの群に対応する(1)の時間差データを比較したところ、2つの群でボタンを押すタイミングの時間差の平均値には統計的に差があることが確認され、前頭葉の脳活動分布の類似度が高い方が、ボタンを押すタイミングが近いという結果が得られました。

 今回の成果は、ウェアラブル型の光トポグラフィ技術を用いて、日常生活と同じ環境で2人の脳活動を同時計測し、脳の活動部位のパターンから、協調作業における2人の脳活動の相互関係を解析できたことにあります。今後もウェアラブル型の光トポグラフィ技術を用いて日常生活の中で相互作用する複数の人の脳活動を分析することにより、社会脳科学の研究の発展に寄与していきます。

 なお、本成果は、7月18日付けの、米国の生体医用光学に関する専門誌「Journal of Biomedical Optics」Online版に掲載されました。

(*1)重さ約1kgの小型・軽量で装置全体を装着可能な光トポグラフィ。微弱な近赤外光を頭皮上から照射して、脳活動に伴う脳内血液量の変化を測定して画像化し、活動部位を特定します。無線LANに接続したノートパソコンにリアルタイムでデータを送り、4人の脳活動を同時計測できます。2010年から研究用途で製品を販売しています。

(*2)頭表の微弱な電位変化から神経細胞の電気活動を計測する装置。

(*3)fMRI : functional magnetic resonance imaging。機能的磁気共鳴画像法。

(*4)2組の対応するデータ間における、それぞれの平均値からの偏差の積の平均値。

(*5) データのばらつきを示す統計量。


以上

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