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森永乳業、静岡大学との共同研究でビフィズス菌B−3の動脈硬化抑制作用を確認
〜森永乳業株式会社 食品基盤研究所より〜
動脈硬化モデル動物によるビフィズス菌B−3の動脈硬化抑制作用
〜日本乳酸菌学会2011年度大会(2011年7月11〜12日)発表内容のご報告〜
森永乳業は、静岡大学農学部茶山和敏准教授との共同研究にて、抗メタボリックシンドローム作用が動物試験で確認されているビフィズス菌B−3が動脈硬化の発症を抑制することを、動脈硬化発症モデルマウスを用いた試験で確認いたしました。この結果を日本乳酸菌学会2011年度大会(2011年7月11〜12日、関西大学にて開催)にて発表いたします。
研究の背景と目的
メタボリックシンドロームは肥満と高脂血症、高血糖、高血圧の症状を合併した状態で、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起す危険因子として考えられています。これまでに高脂肪食を摂取させ、肥満を誘導したマウス(食餌誘導性肥満モデルマウス)にビフィズス菌Bifidobacterium breve B−3(ビフィドバクテリウム・ブレーベB−3、以下ビフィズス菌B−3)を投与すると、腸内菌叢を改善し、脂肪組織や肝臓の脂質代謝に関わる遺伝子の発現を調節し、体重や内臓脂肪量を抑制するというメタボリックシンドロームの抑制作用が示唆されていることを昨年発表いたしました(※1)。そこで本研究では、ビフィズス菌B−3の動脈硬化に対する作用を動脈硬化発症モデルマウスで検証しました。
研究の内容
【方法】
4週齢の動脈硬化発症モデルマウス(※2)にビフィズス菌B−3(10億/日)を含んだ飼料(ビフィズス菌群)または含まない飼料(対照群)を12週間摂取させました。12週間の投与終了後、大動脈の動脈硬化部位の数および面積、さらに血中の中性脂肪やコレステロールなどの測定を行いました。
【結果】
大動脈内の脂肪が蓄積した動脈硬化部位をナイルレッド染色によって観察したところ、動脈硬化部位の数に差はありませんでしたが、動脈硬化部位の面積が、対照群と比べてビフィズス菌群で有意に減少しました(図1、図2)。また、善玉コレステロールである血中HDLコレステロール(※3)の有意な増加が見られました。
※ 関連資料参照
【図1.大動脈内の動脈硬化部位の比較】
【図2.動脈硬化部位の面積と個数】
以上の結果から、ビフィズス菌B−3は血中のHDLコレステロールを増加させるなどして、動脈硬化症の進展を抑制することが示されました。
今後、人が摂取した場合の効果などの検証を進め、商品開発への応用を行っていく予定です。
以上
(※1)参考文献 Kondo S. et al., Antiobesity effects of Bifidobacterium breve strain B−3 supplementation in a mouse model with high−fat diet−induced obesity. Biosci Biotechnol Biochem. 74(8): 1656−61, 2010
(※2)動脈硬化発症モデルマウス
高コレステロール血症により動脈硬化を自然発症するモデル動物として用いられます。遺伝的にApoE遺伝子を欠損しており、LDLコレステロール(※3参照)の細胞内への取り込みに関わるApoEタンパク質を発現しないため、血中のLDLコレステロールが通常マウスより高く、動脈硬化症を自然発症します。
(※3)HDL(高比重リポタンパク質)コレステロール
コレステロールは、細胞膜や様々なホルモンの合成に必須の脂質で、血中ではLDL(低比重リポタンパク質)コレステロールやHDLコレステロールなどの形で存在します。血中のLDLコレステロールはコレステロールを全身組織に分配する役割を果たしますが、LDLコレステロールが過剰だと血管壁に付着して固まりを作るので、動脈硬化の原因となり悪玉コレステロールと呼ばれています。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを血管壁から抜き取って肝臓に戻す働きをしており、善玉コレステロールと呼ばれています。
※ 参考資料は、関連資料参照