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情報通信総合研究所、東日本大震災による民間ICT関連資本の損害額は最大4.4兆円と発表

2011-06-01

東日本大震災による民間ICT関連資本の損害額は最大4.4兆円
−ICT関連復興投資のGDP押上げ効果は0.6%、雇用創出効果は35.7万人に−


 (株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:平田正之)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠崎彰彦教授監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT 経済報告」と題して四半期ごとに公表しております。先日、内閣府より東日本巨大地震による住宅や工場、道路などのインフラ(社会基盤)の被害額が16兆〜25兆円にのぼるとの試算が公表されました。これを受け今回、情報通信総合研究所では民間企業の情報資本設備及びICT産業の資本設備の損害額の推計、ICT復興投資によって生じる経済波及効果を算出しました。

 なお6月初旬に「東日本大震災のICT経済への影響」ならびにICT経済報告を弊社Webサイト上で公開予定です(http://www.icr.co.jp/ICT/)。


東日本大震災のICT経済への影響>
1.東日本大震災によるICT産業の設備損害額と民間企業の情報資本設備の損害額の合計は2.5兆〜4.4兆円(図表1)。

2.復興需要としてICT関連の損害額4.4兆円の復興投資がもたらす経済波及効果はGDP2.9兆円、2010年の名目GDPの0.6%にあたる押上げ効果を持ち、雇用を35.7万人創出(図表1)。

3.民間企業の情報資本設備(コンピュータや通信施設及びソフトウェア等)のうち、通信施設建設とソフトウェアの投資に関して復興投資1兆円当たりのGDPの押し上げ効果は一般資本設備より大きい(図表2)。

4.つまり、通信インフラやソフトウェアを充実させるように復興投資を行うことで、日本全体のGDPと雇用に対する波及効果はより大きくなると言える(図表2)。


 図表2 復興投資1兆円当たりの経済波及効果
   ※添付の関連資料を参照


東日本大震災のICT経済への今後の影響】
 東日本大震災がICT経済に与えた影響が徐々に明らかとなってきた。2011年1−3月期のICT生産は前年同期比マイナス2.0%と6四半期ぶりに減少した。東日本大震災により、シリコンウェハ等のICT部品生産で世界シェアの大きい事業者の複数の工場が被災し、部品関連工場の操業停止や生産ラインの縮小が川下の生産減少をもたらした格好だ。東日本大震災によるICT産業の設備(通信サービス機器や建築物等)の損害額は2.8兆円、ICT産業以外の民間企業の情報資本設備の損害額は1.6兆円と試算される(図表1)が、サプライチェーンを通じたICT産業以外への影響も含めればその被害額はさらに拡大しそうだ。また、ICTサービスも、東日本大震災の影響で企業のソフトウェア受注が滞り、2011年1−3月期以降の減少トレンドにさらに拍車がかかりそうだ。

 需要面ではICT消費が減少した。東日本大震災の影響で、家電エコポイント制度の終了を見越した駆け込み需要が液晶テレビを中心に伸びなかったことが大きく響いた。ICT機械受注は金融・保険業や通信業向けに電子計算機が好調だったことや、世界的なスマートフォン需要の増加を背景に半導体製造装置が堅調であったことが寄与し5四半期連続で増加した。しかし未曾有の震災による企業の業績悪化によって設備投資マインドが落ち込んでいることを鑑みれば、今後のICT投資活動の推移には注視が必要だ。

 一方で、今後、復興活動が本格化するにつれてICT設備投資面でプラスの波及効果が生まれることが期待できそうだ。情報通信総合研究所による試算(※1)によれば、ICT産業の設備と民間企業の情報資本設備が受けた損害に対する復興投資がもたらす経済波及効果は、GDPで2.9兆円と、2010年の名目GDP(480兆円)の0.6%の押し上げ効果がある(図表1)。震災により、クラウドコンピューティングやテレワーク、スマートグリッド等のICTを活用した技術やサービスへの期待が高まりつつある中で、それらを支える設備基盤の重要性も再認識されつつある。
 実際、今回の試算ではソフトウェア等利活用分野が大いに関係する復興投資については単位当たりの波及効果が大きくなった。つまりICT利活用分野への復興投資がポイントとなり日本全体のGDPと雇用に対する波及効果はより大きくなりうると言える。復旧・復興過程でICT利活用を積極的に推進した様々な取り組みが行われ、新しい利用者層や利用シーンが生まれることが期待される。

 通信インフラ整備などのICT産業の設備の蓄積をもたらすような官民あげての復興投資の活性化がICT経済のみならず日本経済の救世主となりそうだ。

※1:ここで用いた産業別情報資本ストックデータは、内閣府経済社会総合研究所『最新の固定資本マトリクスを用いたIT関連データの構築およびそれにもとづくIT投資の日本経済に及ぼす影響の分析』(2011年3月)で構築されたものである。


【2010年1−3月期の動向(項目別)】

(ICT関連生産)
・ICT関連生産は6四半期ぶりに減少した(1−3月期は前期比8.7ポイント低下し、前年同期比マイナス2.0%、図表4)。
・ICT関連生産の水準はリーマンショック以降のピーク時(2010年10−12月期)の9割の水準まで低下した(図表6)。

(ICT関連在庫)
・ICT関連在庫は、1−3月期は前期比21.6ポイント増加し、前年同期比57.3%となった。生産が減少し、在庫の増加幅が拡大し、引き続き在庫積み上がり局面に位置する(図表5)。品目別にみると、液晶テレビについて家電エコポイント制度の2011年3月末の終了前の駆け込み需要が期待されていたものの、東日本大震災の影響で需要が低迷したことにより、民生用電子機械の増加幅が拡大した。

(ICT関連サービス)
・ICT関連サービスは6四半期ぶりに減少した(前期比3.2ポイント減少し、前年同期比マイナス0.8%、図表4)。

(ICT関連消費)
・ICT関連消費は16四半期ぶりに減少に転じた(前年同期比マイナス7.4%、図表4)。
東日本大震災により、消費マインドが低迷し、液晶テレビが減少に転じ、パソコンの減少幅が拡大した(図表7)。

(ICT関連設備投資(機械受注))
・民需(除く電力、携帯電話)は5四半期連続で増加した(前期比4.1ポイント増加し、前年同期比7.9%、図表4)。
・官公需は2四半期連続で減少した(図表4)。

(ICT関連輸出入)
・ICT関連輸出は2四半期連続で減少し、減少幅が拡大した(輸出は前期比4.7ポイント低下し、前年同期比マイナス6.3%、図表4)。
・ICT関連輸入は5四半期連続で増加した(輸入は前期比9.5ポイント低下し、前年同期比2.7%、図表4)。


【今後の展望】
・ICT生産は、ICT産業のサプライチェーンの復旧と電力の供給制約の影響が今後も懸念事項である。半導体等ICT関連部品はこれまでは在庫を取り崩すことにより生産を続けることが出来ていたが、6月以降の在庫切れの可能性も指摘されており、その動向が注目される。
・生産面について中長期的には、震災の影響や電力供給制約により国内の電子部品・部材企業が生産拠点を海外へ移し、産業空洞化が進むことが懸念される。
・サービス面については復興投資がポイントになる。東日本大震災の経験が、企業や政府部門、医療分野等で、ICT活用をより積極的に進める動きにつながるかどうかである。企業活動においては、BCP(事業継続計画)対策としてのクラウドコンピューティングの活用、データセンターの複数拠点化、テレワークの導入・実施に関してニーズの高まりが見受けられ、今後の動向が期待される。
・政府部門においても、国民ID制度の導入や、地方政府のクラウド活用は、行政サービスの継続性の確保や行政サービスの質の向上の点から今後議論がさらに活発になることが期待される。また、医療部門では遠隔医療制度の導入や電子カルテのネットワーク化などもこれまで以上にICT利活用について推進する動きが出てくることが期待される。加えて、電力供給制約により、スマートシティやスマートグリッドなど、エネルギー分野のICT の役割が期待されており、関連市場の拡大が今後期待される。
・需要面では、震災後の消費マインドが減退し、自粛ムードがまん延する中、消費回復の有力な手段となったのがインターネットである点は興味深い。これまでの消費のネット化として、eコマース等の利用が活発化していることは観察されていたが、震災後にその傾向はさらに強化されているようである。震災は消費のネット化の動きを促進しており、ICT 消費の今後の動向は引き続き注目される。
・輸出については、世界市場におけるスマートフォン需要は好調であり、関連部材の需要は好調を維持するものと思われる。特に、中国をはじめアジア経済は成長率が高く、堅調な海外需要はICT 経済の牽引役として引き続き期待される。


※以下、詳細な図表は添付の関連資料を参照

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