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富士経済、遺伝子検査やPOC検査などの国内市場に関する調査結果を発表
臨床検査試薬/機器に関する調査
遺伝子検査やPOC検査などの国内市場を調査
―2010年見込み―
◆遺伝子検査市場は、HCVが減少するが、結核菌、クラミジアが増加し、微増。
今後は新規に保険適用されたHPV核酸同定検査の拡大に期待。
◆POC検査市場は、前年急拡大のインフルエンザキットの減少が影響し、前年比13%減。
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界 03−3664−5811)は、血液や尿などの検体から病状等を調べる臨床検査を検査領域毎に分割し、昨年から2年間で国内市場を網羅する調査を行っている。今回はその第三回目で、遺伝子学的検査(遺伝子検査)とPOC※1検査、病理学的検査(病理検査)などの市場を調査した。その結果を報告書「2010 臨床検査市場 No.3」にまとめた。
この報告書では、各検査領域の検査数及び市場(試薬の売り上げ)、同時に検査に使用される分析装置(検査機器)の市場(出荷台数、金額)を分析し、将来を予測した。
※Point of Care:主に病院の外来やICU、手術室、またクリニックなどで患者のそばで迅速に行う臨床検査。
1.遺伝子検査市場
<調査結果の概要>
2009年:75.5億円
2010年見込:75.7億円
前年比:100.3%
2009年の遺伝子検査市場は、前年比0.7%増の75億5千万円となった。遺伝子検査市場の中で市場規模が大きい検査項目はHCV検査※2、結核菌検査、クラミジア検査である。HCV検査は治療を実施する患者が一巡し減少に転じている。結核菌検査、クラミジア検査は増加した。2010年の市場も2009年とほぼ同様な傾向になると見込まれるが、HPV核酸同定検査※3については新規に保険適用されたことから今後の拡大が期待される。
測定方法は、PCR法から高感度で迅速な測定が可能なリアルタイムPCR法への切替えが進んでいる。また、近年はPCR法以外の測定方法が固定ユーザーをつかみ、広範な普及には到らないもののある程度の規模になり、それぞれの位置付けを確立している。その一つLAMP法は、開発企業の栄研化学のみならず、他社のキットの増幅工程にも導入されている。
感染症以外の遺伝子検査項目も出てきている。まだ実績は小さいが、白血病の診断とモニタリング、癌治療薬の薬剤感受性をみるためのキット等が発売されている。
※2:C型肝炎の診断にも用いられるが、主に「インターフェロン」等の治療効果判定に用いられる。
※3:ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)の子宮けい癌の原因になるハイリスク型判定に用いられる。
<注目検査項目市場>
◇HPV核酸同定検査
2009年 1.2億円 2010年見込 2.2億円(前年比183.3%)
HPV核酸同定検査は2010年4月に新規に保険適用された。細胞診を行い正常でない結果が出た場合に限り算定できる。すなわち、子宮頸癌を疑う患者、子宮癌検診の受診者が細胞診を行い、軽度扁平上皮内病変が疑われた場合に、保険算定の対象となる。HPV核酸同定検査が単独で普及するのではなく、検診と相関して市場を形成するため、各社とも検診実施機関への販促活動に力を入れている。
◇クラミジア+淋菌(二項目同時測定)
2009年 3.2億円 2010年見込 3.9億円(前年比121.9%)
クラミジアと淋菌の同時測定は、日本ベクトン・ディッキンソン、ロシュ・ダイアグノスティックス、富士レビオの試薬が保険適用され、以降、クラミジア、淋菌の単項目測定から二項目同時測定に市場が移っている。基本的には淋菌かクラミジアの鑑別が困難な場合に二項目同時測定が行われるが、淋菌が疑われるケースは少なく、既にその多くが二項目同時測定に移行しているため、現時点で市場は飽和に近いと推定される。
2.POC検査市場
<調査結果の概要>
2009年:1,199億円
2010年見込:1,046億円
前年比:87.2%
2009年のPOC検査市場は、新型インフルエンザ発生の影響で一時的に急拡大した。新型インフルエンザは5月から急激に感染が拡大、例年の季節性インフルエンザの患者がおおむね国民10人に1人なのに対し、5人に1人となり、例年の2倍の感染者を出した。それに伴いインフルエンザ抗原迅速検査キットの需要も急増した。参入各社は流通在庫、新規製造等で対応したが、在庫は8月末頃に無くなった。5月から8月末までに各社のキット売上は例年の2倍程度になった。
感染症以外のPOC検査では、特定健診に関連しての糖尿病専用システム用試薬(特にHbA1c測定試薬)の実績が伸びており、また、生化学項目を簡便に測定できるシステムが新規に登場している。便潜血キット、尿試験紙は、既に広範に普及し、市場は横ばいで推移している。
<注目検査項目市場>
◇インフルエンザ抗原迅速検査キット
2009年 337億円 2010年見込 155億円(前年比46.0%)
※インフルエンザ流行のシーズンに合わせ、各年の数字はその年の4月から翌年3月までとし算出している。
インフルエンザ抗原迅速診断は既に普及飽和しており、市場は流行の大きさに左右される。2009年は、5月から新型インフルエンザが流行し、12月頃に終息した。続いて2009年末から季節性インフルエンザのシーズンに突入したが、患者は非常に少なかった。その為、病院やクリニック、卸には、新型インフルエンザへの対応で集めた大量のキットの在庫があると言われており、2010年は年末からのシーズン当初にはキット販売の出足が鈍る可能性がある。
2010年シーズンの季節性インフルエンザが例年通りの流行の場合、インフルエンザ抗原迅速検査キットの生産は2009年比50%程度で足りることになるが、今後新型インフルエンザや季節性インフルエンザが大流行する可能性への対応として生産を大きく縮小することは得策とはいえず、生産計画立案がこれまで以上に難しくなっている。
◇糖尿病専用システム用試薬
2009年 27億円 2010年見込 30億円(前年比111.1%)
糖尿病専用システム用試薬の主な検査項目はHbA1c、血糖である。システムによっては尿中アルブミン等の検査項目が測定できるものもある。
市場は特定検診の開始により糖尿病患者の顕在化が進んでおり、拡大している。特に伸びている検査項目はHbA1cで、2009年の市場の内、96%がHbA1cの実績である。
◇心筋マーカー迅速検査キット
2009年 23億円 2010年見込 26億円(前年比113.0%)
ここでは心筋梗塞を早期に検知するための検査項目の内、迅速に測定できるトロポニンT、トロポニンI、ミオグロビン、CK−MB、BNP、NT−proBNP、H−FABPのキットを対象としている。市場はロシュがいち早くトロポニンTを測定するイムノクロマト法の迅速キットを発売したことで形成された。現在は心筋マーカーとして評価が高いBNP、NT−proBNPの迅速キットの伸びによって市場は拡大している。今後この2つの検査項目が市場を牽引して、2014年までは年率10%前後の伸びが予測される。
以 上
<調査対象>
※添付の関連資料を参照
<調査方法>
富士経済専門調査員による調査対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査及び関連文献を併用
<調査期間>
2010年4月〜8月
資料タイトル:「2010 臨床検査市場 No.3」
体 裁 :A4判 335頁
価 格 :200,000円(税込み210,000円)
CD−ROM付価格 215,000円(税込み225,750円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第ニ事業部
TEL:03−3664−5831 FAX:03−3661−9778
発 行 所 :株式会社 富士経済
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