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東邦大、ゴカイの仲間に隠れた近縁種を発見
干潟の「普通種」実は2種だった!
〜ゴカイの仲間に隠れた近縁種を発見〜
日本の干潟に広く生息し、「普通種」とされる多毛類(ゴカイの1種)ドロオニスピオの中に、形態が類似した異なる種が含まれていたことを東邦大学理学部生命圏環境科学科 海洋生態学研究室の阿部博和 博士研究員と東北大学大学院の農学研究科の大越和加 准教授、同大学院生の近藤智彦氏の研究チームが明らかにしました。
この結果、これまで様々な学術論文や環境アセスメントの報告書の中でドロオニスピオとして扱われてきたものは2種に分ける必要があり、従来の研究成果の再考や一部変更が求められることになります。近年、干潟の価値や生物多様性の重要性が再認識される中、世界的にも広く生息が知られ「普通種」と言われていた生物に別の種が紛れていたという本研究の成果は、東京湾をはじめとした国内の干潟や世界各国の干潟における研究と、生態系・生物多様性の理解促進に広く貢献することが期待されます。
この研究成果は、日本動物学会の英文学術誌 Zoological Scienceの2016年12月号に掲載され表紙を飾りました(図1)。
◆発表者名:
阿部博和(東邦大学理学部 生命圏環境科学科 博士研究員)
近藤智彦(東北大学大学院農学研究科 博士後期課程)
大越和加(東北大学大学院農学研究科 准教授)
◆発表のポイント:
●干潟の普通種と言われていた多毛類の1種ドロオニスピオの中に別種のアミメオニスピオが含まれていたことを発見
●ドロオニスピオ、アミメオニスピオを含めた日本産オニスピオ属多毛類3種の詳細な形態と遺伝子の塩基配列を報告
●干潟の生態系や生物多様性の理解へ貢献
◆要約:
ドロオニスピオは、環形動物門 スピオ科 オニスピオ属(注1)に属する多毛類(ゴカイ類)の1種であり、古くから日本各地の干潟や河口域に広く分布し、底生生物の中でしばしば優占的に出現することが知られていました。このことから日本の干潟の「普通種」とされ、様々な文献(学術論文や調査報告書など)にその名が頻出しています。
本研究では、ドロオニスピオと同じ属であるオニスピオ属の2種の形態と遺伝子情報を国内から初めて報告し、それぞれ「アミメオニスピオ」、「トラオニスピオ」という和名を提唱しました。また、アミメオニスピオはこれまで形態が非常に類似するドロオニスピオと混同されていたために、発見が遅れたことを明らかにしました。
干潟に多産する「普通種」ドロオニスピオは、魚類や鳥類の重要な食物源になり、物質循環への寄与も大きい種と言われていましたが、本研究から、場所や時期によってはそのほとんどがアミメオニスピオである可能性も出てきました。これまで東京湾の環境調査をはじめ様々な報告の中でドロオニスピオとして扱われていた種については、再考が必要であると考えられます。今後は2種を区別し、それぞれが生態系において果たす役割を明らかにしていく必要があるでしょう。
※解説などリリース詳細は添付の関連資料を参照