イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

東大、カブトムシなどの昆虫の武器の大きさが環境に応じて変化するしくみを解明

2016-12-15

カブトムシなどの昆虫の武器の大きさが環境に応じて変化するしくみ
〜細胞の記憶システムであるエピゲノムが関与〜


1.発表者:
 小澤 高嶺(東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 特任研究員)
 岡田 泰和(東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 助教
 太田 邦史(東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 教授)

2.発表のポイント:
 ◆カブトムシやクワガタなどの昆虫の「武器」は、生育時の栄養によって大きさが顕著に変わることが知られています。今回、その個体差が生まれるしくみを明らかにしました。
 ◆武器の大きさは、DNA配列だけによらず環境に応じて書き換え可能な細胞メモリー機構である「エピゲノム」によって、とくに環境に影響を受けやすいことがわかりました。
 ◆本研究により、生物がエピゲノムを介して環境に適応し、多様な姿をとる仕組みが明らかにされ、大型の角・アゴを持つカブトムシ・クワガタの育成や、同様な機構で人が発症する生活習慣病の克服などに結びつく可能性があります。

3.発表概要:
 昆虫などの動物では、同じDNAをもっていても、環境に応じてその姿を様々な形に変化させることができます。たとえば、個体の密度によって姿を変えるサバクトビバッタや、幼虫期の栄養でその生涯(女王か働き蜂)が大きく変わるミツバチなどが知られています。武器甲虫であるカブトムシの角やクワガタの大アゴも、幼虫期の栄養条件によって著しく大きさが変化します。面白いことに、この性質は人間の疾患などにも関与することが最近わかってきました。
 このような個体の差を生み出すしくみの一つとして、同一ゲノム情報を持つ細胞にさまざまな個性を与える「エピゲノム」(注1)という機構が注目されています。しかし、エピゲノムと表現型可塑性の関係については不明な点が多く残されていました。
 そこで、本研究では武器をもつ甲虫「オオツノコクヌストモドキ」をモデルとして用い、幼虫時の栄養によって大きく影響を受ける大アゴのサイズが、エピゲノムに関わる因子によってどのように制御されているかを調べました。まず、この昆虫で機能しているエピゲノム関連遺伝子を超高速DNA配列解析装置によって網羅的に探し出し、RNA干渉(注2)という方法で片端からそれらの働きを一つ一つ弱める実験を行うことで、どの因子が重要な働きをしているかを明らかにしました。その結果、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC、注3)の働きにより、とくに武器サイズが幼虫期の栄養状態に応じて変化しやすくなっていることがわかりました。
 興味深いことに、HDACの働きに影響を与えた時に、大アゴとハネの大きさが逆方向に変化することも明らかになりました。以上の結果から、環境に応じてサイズが変化しやすい武器は、エピゲノムによって発生初期に予め特別な調節がおこなわれていることが、はじめてわかりました。

 ※発表内容などリリース詳細は添付の関連資料を参照



Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版